『猫の手は借りられない』
くりくりっとした瞳を見開いた猫が
こちらを見ていた。
それが、君だったね。
ばあちゃんちでも長い間
猫とは暮らしてきたけれど、
猫は
いつのまのか傍にいるもので
知らぬまに増えてたり
旅にでたまま帰って来なかったり
心配もするけれど
野性だからしょうがないと
どこか最初から諦めがあって
共に暮らすものでなく
同じ時間をたまたま共有しているもの
だった。
それが、この子と出会って
そのポリシーがガラガラと
崩れたのは
なぜだろう?
ガラスケースの向こうで
君はまるくなって眠っていたね
ときどき、もにょもにょと動く綿毛が
たまらなく可愛くて
ガラスを軽く「コツコツ」と叩いたら
「ん?」
と、顔をあげた君と
目と目があったとき
(シマッタ、捕まってしまった)
て、感じがほんとかな、(笑)
しばらくは猫をかぶっていた君だけど
最近は本領発揮で
わたしが仕事をしていると
半紙の上にわざわざ、くにゅくにゅと座ったり
そうかと思うと、
今度はわたしの後に周って
「よしよし、よく書けてるよ」と
したり顔でシッポを振ってみせたり………
こっちの忙しさにかまわず
お腹がすくとご飯の催促に来る。
最初は甘えた声で「ウニャー♡」
気づかないふりしてると「ブニュー♪」
に、変わり
最後にはチラッと、
こちらの顔色を見つつ
お気に入りの椅子をガリガリやって
脅迫してくる。
そうなるとこの王様に逆らえるはずもなく
ごはんをあげなくてはならないので、
仕事を中断する。
墨は乾くし
気持ちの乗ってるときの中断は
かなりキツイ、
それをお構いなしに
邪魔するものが出てくるとは、
【お釈迦様でも気がつかめぇ~】
状態のわたし。
忙しいときは、、、
絶体!、
猫の手は借りられない。
と、いうはなし。
飼われたのは私のほうかもしれない。
(笑)