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天空都市  作者: 上総海椰
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3-2 地下へ

巨大都市にはそれを行う下水処理施設がついている。

特に第二次魔王戦争以前からある都市には必ずと言っていいほど存在する。

第一次魔王戦争以前の人類は高い文明を持っていたようで、

いたるところにその痕跡が残されている。

ミイドリイクがその最たる例だろう。

このトラードもその例にもれず、その施設がついていた。


「つけられてはいないようですね」

路地の裏にココルはヴァロたちを引き込む。

そこには帽子をつけたココルがいた。

「念のためにヴァロさんたちを遠くから監視させてもらいましたが

ヴァロさんたちを監視しているような人間は見当たりませんでした」

ココルのやり方は徹底していた。

待ち合わせ場所には知らない人間に手紙を持たせ、

ヴァロたちの前には姿を現すことなく、ヴァロたちをここまで連れてきた。

「用心ってやつか」

「まあ、これも職業病ってやつですかね」

そう言えばグレコも同じようなことをしていた。

「ついてきてください」

ココルは小さな路地をすり抜けるように進む。

ヴァロの体格でぎりぎり通り抜けられるといったところだろうか。

そうこうしているうちに目的地についたようだ。

ココルは大きな穴を指さす。


ヴァロたちはそれを見つめる。

「ここの水路をたどっていけば地下につながります」

目の前には地下へとつながる大きな穴がある。

幸い通りからは外れていて、人の目は全くない。

フィアは周囲を見渡すと、入口の手前の台の上で二枚の地図を広げる。

一つはこのトラードの地図である。

もう一つは妙に入り組んだ通路みたいなものが描かれていた。

「これは?」

「ユドゥンさんからもらったトラードの地下の地図」

「すごいですね。地下の地図があるなんて」

横から感心したようにココルは声を上げる。

フィアは地図をユドゥンから受け取っていたらしい。

その中に一つ、赤い点が記してあった。

「目的地はここ。ココルさんここまで案内を頼めますか?」

フィアはそれを指し、ココルを見る。

トラードの地図を横に広げ、三人は見比べる。

「今いる場所がここだから…」

ココルは一人ぶつぶつ言いながら、地図をなめまわすように見やる。

「…この場所には確か不自然にできた突き当りがあって、

妙な紋章のようなものが彫ってあったと思います」

ココルの言葉にフィアは

「…ココルさん、そこまで案内していただけますか?」

「わかりました」

フィアの提案をココルは承諾した。


「ここからは薄暗くなるので、足元に注意してください」

「私に任せて」

フィアの手に魔法の光が灯り、道を照らす。

「魔法の光ですか。便利ですね」

感心したようにココル。

ココルは手にしたランタンをバックの中にしまった。

「両替商はいつもやっているのか?」

「ええ、いつもですよ。朝から晩まであの門の前に座ってます」

ココルは陽気に語る。

足元に気をつけながらヴァロは階段を下りる。

「城壁を通り抜ける人間を一日中見ているには、あの職が最も都合がよいんですよ。

まあ、ずっとあの場所にいるおかげで、今では固定客もついて食っていける分ぐらいは、


稼げるようになりましたが…」

どうやらココルには商才もあるらしい。

「不都合はないのか?」

「初めのうちはただの子供だと思われて、ゴロツキ共にちょっかいを出されることもあり


ましたが、撃退していたらそのうちに出されることもなくなりました」

ココルは少年らしい笑みを浮かべた。

その行為に関しては全く少年らしくはなかったが。

「そ、そうか」

ヴァロは顔を引きつらせる。

元暗殺者のココルの手にかかれば、街のゴロツキも簡単にいなすことができよう。

「もっとも、グレコさんが信用のおける取引相手を紹介してくれていなかったら

今の職はできなかったでしょうが」

ココルはそうつぶやいた。

「ココル以外に組織の子供は…」

ヴァロはふと気になってココルに問いかける。

「全員自害しましたよ」

ココルの言葉にヴァロは少なからずショックを覚える。

「そういう風に組織から教え込まれていましたから。私が生きていられるのはグレコさん


が自刃するのを止めてくれたためです」

「組織が無くなってから、親に会いたいとは思わなかったのか?」

「僕を捨てた親の元にどんな顔をして戻ればいいと?」

ココルの言葉にヴァロはかけられる言葉はなかった。

「親を擁護するつもりはありませんが、

…東部ではこの二百年の間政情不安が続きましたからね。

僕の住んでいた村はひどい飢饉の影響で子を手放す親も少なくなかった。

僕は東部の日々の糧を得るためにその組織に売られたんです」

「…」

「僕の境遇などまだかわいい方ですよ。

ひどいものなど幼児趣味の金持ちの愛玩具として売られていましたからね。

その点では私は運が良かったと言えるのかもしれません」

淡々とした口調でココル。

「だからこの状況を引き起こしたカランティという魔女が僕は許せません」

ココルと言う少年も間接的にだが、魔女の引き起こした事件の被害者と言えるかもしれな


い。そんなことを話していると目の前を歩くココルの足が止まる。

「つきましたよ」

ココルは不自然な突き当りを指さす。

そこにある壁にはココルの言うように小さな紋章が描かれていた。


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