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天空都市  作者: 上総海椰
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2-2 敵地

グレコの情報によれば、現在トラードにいるカランティの弟子は五人。

五番弟子ホーノア・ウイーント

六番弟子ピピン・ザックハード

七番弟子エムローア・フブード

十一番弟子ツエード・ジルコス

十三番弟子デウドア・セボンス

の五名が現在トラードにいる彼女の弟子だという。

序列は功績とその魔法力を考慮され選ばれているようだ。

報告書を読むと『真夜中の魔女』は戦闘能力の高いものを選んでいたらしい。

この五人の能力は『真夜中の道化』を構成していたメンバーよりも

戦闘力の面に関しては、劣ったものだと報告書にはあった。

ちなみに残った弟子の中でも特に警戒すべきと書かれていた一番弟子と十番弟子は現在トラードにはいないらしい。グレコの情報だ。確度は高い。

カランティ以外は比較的どうにかなりそうではあったが油断は禁物である。

問題はカランティとカランティの使う掃滅結界だ。

カランティ自身も聖堂回境師になるほどの魔法使いであり、

掃滅結界は任意のモノを消滅させるという恐るべき特性を持っている。

「おそらくだけれど、掃滅結界はその攻撃性ゆえに、索敵スキルは他の結界よりも低いモノなんじゃないかしら。何かに特化したものは他の機能がおろそかになる傾向がある」

フィアは周囲を見渡す。

「それでも相手に挨拶しなくちゃならないのか?」

こちらが入ったことを気づかないのであれば、作戦はさらに容易なものになる。

「索敵能力が低いとは言っても魔力を持つ者の出入りぐらいはわかるでしょう。

それは足を踏み入れた瞬間から入りましたという紹介状を出しているようなものよ。

もし彼女に挨拶もしないで魔法使いが何かしているとしたら、

敵ですって公言しているもの。背後から撃たれても文句は言えない」

「敵地の真ん中に踏み込むようなものなんだがな?」

「だからよ。こちらが正しく対応してるうちは、相手も迂闊にこちらを攻撃をできない。先ずはこちらの出方を伺おうとするでしょう」

「そういうものかな」

ヴァロは相手の懐にわざわざ踏み込むっていうのにはかなりの抵抗を覚えた。

「これにはユドゥンさんも同意見。そもそもそれほど簡単にしっぱを出してくれるのならば、彼女はもっと早くに捕まっているわよ」

カランティと言う魔女は、二百年の間内乱などに関与するものの

教会にしっぽをつかませずにやり過ごしてきた背景がある。

それほど簡単にボロを出してくれるとは思えない、

「ヴァロの持つ魔剣は結界に対しての最大の切り札になる」

「どういう意味だ?」

ヴァロはいぶかしげにフィアを見る。

「それは後でわかると思う」

「相手が敵だとわかってるのに何もできないのは少し面倒だな」

「ヴァロ、いろいろとあるでしょうけど今は抑えて」

フィアにそんなことを言われてヴァロはひどく難しい顔をする。

「…おいおい、それはフィアだけは言われたくなかったぞ」

最近はどうも立場が逆転しつつある気がする。

「そもそも掃滅結界は何でここまで攻撃性が高いんだ?」

「ここは昔から地形的に重要な交通の要所でもあり、

この地からさらに北東の高山地帯には幻獣王の住処があって、第二次魔王戦争時には

ここは主戦場になったと聞いている。

そのために掃滅結界なんて物騒なものが張られたって背景がある」

幻獣王ツアーレン。

翼の眷属とともに大陸東北部の山岳地帯に生息し、

思慮深い反面好戦的な面を持ち、魔王戦争を経て、その勇猛さは多くの人間に知られることになった。ヴァロたちの前には城のようなものがある。

「…ここはどう見ても城だよな。フィア、ひょっとしてここか?」

ヴァロの問いかけにフィアは頷く。

ヴァロはその城壁を見上げる。

「この中が結界の基点。おそらくここがカランティの住処。

元々この地は王族が治めていたって話よ」

「ミイドリイクといい、ルーランといい、ヴィヴィのところとは全く違うのな」

「結界はその土地に合わせた基点が提供されるからね」

フゲンガルデンは魔王封印も兼ねているために、

できるだけその場所も隠す必要があったのだろうが。

「それにしても大きいな」

「北が近いってのもあるんだと思う。

ミョテイリやリブネントの基点も城の中だってヴィヴィから聞いたことがある」

北上するにつれて魔女たちの影響力も強くなっていくという。

教会の力が薄れ、魔女たちの結社が多くなってくるためだ。

ヴァロたちが城門の前までくるとその門はひとりでに開いた。

「入ってきなさいってことか」

ヴァロたちは城門の中に足を踏み入れる。

中庭を抜け城の中をヴァロたちは城の中を見る。

城の中は昼間だというのに薄暗く、人の気配はない。

しんと静まり返っている。

「誰かいませんか?」

ヴァロは声を張り上げる。

しばらくすると腰が折れ、杖を突いた老女がやってきた。

白髪で大きな鷲鼻、黒いローブのようなものを纏っている。

話に聞く魔女そのものの姿だ。

ヴァロが今まで見てきた魔女でこれほど年配の魔女は初めて見る。

「ヒヒヒ…おや、若い魔女とはこれは珍しい」

「初めまして、私はフゲンガルデンの聖堂回境師フィアと言います。

こちらのカランティ様に用があってきたのですが」

フィアがそう言って頭を下げると

「ほう、あんたがフゲンガルデンの聖堂回境師…。

わしの名前はデウドラ。カランティ様の弟子のひとり」

老女は振り返るとそのまま城の中を進んでいく。

「…案内しましょう。ついてきなさいな」

ヴァロたちはそのデウドラと言う老女についていくことにした。

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