8-3 ルーランにて
新年を祝う花火が夜空を彩る。
総督バブリスの招きにより、フィアたちはルーランの新年会に出席することになった。
ちなみにココルは宿で待機している。
ドレス服に身を包んだフィアはひたすらに輝いて見えた。
ヴァロが護衛を外すのを見計らって、人だかりができるほどである。
パーティが一息つくと二人は外のテラスでルーランの街の光を眺めていた。
「なあフィア、もう一つ教えてくれないか?
あの時言いかけていたのはなんだったんだ?」
「あの時?」
「グレコさんの報告書読みながら、気掛かりなことがあるって言っていただろう」
「…それね」
フィアは思い出したようなそぶりを見せた。
「まず一つ、カランティたちはどうやって封印された魔法のはずである失われた魂を扱う
魔法をどうやって知ったのか?」
「どういうことだよ?」
ヴァロは眉をひそめる。
「魂連結あれはドーラさんがいなければ私もわからなかったと思う。
それほどまでに大昔の術なのよ」
「…教えた人間がいるってことか?」
「推測にしか過ぎないけれど…」
トラードは目の前にある
「もう一つ、魔法の研究のために人間を狩るって変じゃない?
それはどう考えてもあのカランティと言う人物像に当てはまらない気がするの。
聖堂回境師と言う立場を持ちながら、
リスクを冒してまで表沙汰にできない研究を続けるなんて考えられない」
「肉体を代えるためっていうのは?」
「肉体を変えるのは一回すればしばらく続くし、魔剣製造や魂の根源に迫ろうっていうの
ならば、万単位の人間の命が必要になってくる。
彼女たちがやっていたことはいろいろと中途半端に思えるのよ」
魔剣は第二次魔王戦争時に劣勢だった人類の切り札として作られた。
それだけ人類の支配地域が消失し、人が余った状況だったのだ。
魔剣製造には数百、聖剣クラスともなれば万単位の人間が使われたと聞いている。
「目的はほかにあるってことか?」
「うん。そう考えればカランティの撤収が早かったのも、リスクを承知で大量の人間を狩
っていたのにも説明がつく」
「そもそもカランティは研究がばれるのを見越していた感じだったしな…」
制圧後、聖カルヴィナ聖装隊が調査するも、大量の人骨は見つかったが、
めぼしい研究資料は未だみつかっていないらしい。
「それじゃ、その上り詰めた立場を投げ出してもカランティが欲しいモノとは一体…。
フィアは研究に心当たりがあるのか?」
「わからない…でも私には嫌な予感がしてならない」
ヴァロの疑問にフィアは首を横に振る。
「ここにおいででしたかフィア殿」
バブリス総督が声をかけてくる。
「少し中の熱気に充てられてしまって」
フィアは頬に手を当ててにこやかに応じた。
こういうときの彼女は様になっていると思う。
「今日のパーティのために珍しい食事を用意させていただきましたがいかがでしたか」
「大変美味しゅういただきました」
海の幸を調理したものがテーブルに所狭しと並べてあった。
ルーラン随一の料理長が腕を振るったのだという。
ただし、あまりに堅苦しくて食べた気がしない。
ヴァロとしてはロノアの店の方が好きではあったが。
「以前手に入れたジャラニーという魔獣は大層な珍味だったのですが、
ユドゥン殿がそれを大層気にいったみたいでしてな。
ただどうもあれ以降入手が困難になってしまいましてな」
フィアの顔から笑みが消える。
「…それはいつのことですか?」
「そうですなあ。手に入れたのは夏の終わりごろだったと記憶しておりますが」
「それは残念です」
フィアの顔にはいつもの笑みが戻る。
バブリスが去った後フィアはヴァロにそっと語りかける。
「ヴァロ覚えている?はじめマールス騎士団領の東部で退治した魔獣」
「ジャラニー…ってまさか」
「はじめから…あの人の手の内だったってこと…どこからどこまでかはわからないけど」
フィアの顔には険しい表情で、丘の上にあるユドゥンの屋敷を見つめる。
そこには小さな明かりが煌々とついていた。
「今回ばかりは大事になりましたね」
ピューレアは主であるユドゥンに茶を運んできた。
「それはそうでしょう。現役の聖堂回境師が事実上失脚したのですから」
ユドゥンは心底愉快そうにその茶を受け取る。
「リブネントでトラードの聖堂回境師選定の会議ですか」
「春先にそれは開かれるでしょうね」
茶をすすりながらユドゥン。どこまでもユドゥンの手の内らしい。
「…フィア殿の後押しをしますか?」
「…そんな些事は捨てておきなさい。トラードの人事などポルコール辺りに任せておけば
よいでしょう。それよりも私はカランティの動きのほうが気になります。あの女の背後に
妙な力を感じます」
「妙な力とは?」
ピューレアはユドゥンに聞き返す。
「もし私の考えが的を射たものであるのならば、大陸はまた大きな戦火に包まれることで
しょう。…ラフェミナはコレをどうおさめるつもりなのでしょうね」
ユドゥンは空を見上げる。
空には星が燦々と煌めいていた。
ユドゥンの予感は的中していたのだ。
それは大陸全土を巻き込む嵐がすぐそこまで足音を響かせていた。
容姿説明ちょっと省きました。




