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天空都市  作者: 上総海椰
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7-3 儀礼

聖剣使いミリオス。

聖剣バフーフの契約者であり、聖カルヴィナ聖装隊を指揮する第十六代隊長である。

その功績は鬼殺し、竜殺し、魔族殺し。

聖カルヴィナ聖装隊は唯一女神の名を関することを許された隊であり、

魔王討伐を目的として作られた部隊でもある。

古くは第六魔王の討伐で功績をあげ、教皇直属の軍として

第七、第八、第十二魔王討伐に参加している。

トラードを制圧するために、二十三名の直下の部隊と複数の部隊を率いてやってきた。

皆が大陸中から集められた猛者で構成されており、厳格な規律の元、

全員が魔剣契約者で構成された人類最強の部隊。

それは百万の軍勢に匹敵するほどの力があるといわれている。


「フィア殿」

「お願いされていた結界の封は済みました。

仮にここに戻ってきたとしても結界をもう一度再起動するのは

私の知る呪文がない限り、一年以上かかるはずです。後はラフェミナ様がここへ担当官た


ちを派遣してくるはずです。その担当官たちに任せてください」

「助かる」

トラードの制圧劇からおよそ三日。

フィアは万が一カランティがもし戻ってきても結界を起動できないよう封印を施したらし


い。今日はその報告をするために、カランティのいた城の一室に設けられた本部にやって


きていた。

「ミリオスさん、ココルの件ありがとうございました」

ヴァロはここで改めてミリオスに礼を言う。


そのココルと言えばヴァロのすぐ後ろについてきていた。

若干打撲の後は目立つが、衰弱していたもののこの二日で体力も回復したようだ。

寝る時以外ヴァロたちの元を離れない。

初めはヴァロは困っていたが、徐々に慣れてきていた。

カランティは地下の牢獄にあった隠し通路を使って城の外まで逃げたらしい。

昨日その隠し通路が見つかったという話だ。


「ヴァロ殿」、

退室の際にいきなり声をかけられヴァロは身構える。

ミリオスは固い表情でヴァロを見つめていた。

ミリオスは教会の武の頂点。『狩人』とはいえ地方の士官であるヴァロに声をかけること


は絶対にありえないはずだ。

「な、なんでしょう」

「ミリオス隊長はヴァロ殿を評価しているのですよ」

脇で苦笑しながらローは言う。

「はい?」

ミリオスとはこの場で出会うのが初めてのはずだ、ローの言っている意味が理解できずヴ


ァロはさらに固まる。

ミリオスが膝をつくと、その場にいる数名は一斉に一同に膝をついて頭を下げる。

これにはココルも驚いている様子だ。

ヴァロは頭の整理が追いつかない。

「コーレスの一件、フゲンガルデンの一件、話を聞かせていただきました。

フゲンガルデンを護るために屍飢竜と戦われたこと、

そして、聖都を護るために、いかに果敢に魔王ドーラルイと戦われたこと。

私の友人たちから何度も聞かされております」

ミリオスの顔は戦いの時とは違った表情を見せる。

ココルは驚いていた。魔王殺しにコーレスを救った英雄だという。

「そしてこのたびの一件、見事でした。

おかげでこちらも一人の犠牲を出すことなくトラードを制圧することができました」

ヴァロの横ではココルが顔をあっけにとられたようにこちらを見ている。

「あ、あれは成り行きですって」

恥ずかしくなってヴァロは思わず大声でそれを遮る。

竜は倒したがあの竜を倒せたのは、自身の体質によるところが大きいし、

魔王と言ってもアレはドーラルイと言うわけではない。

加えてヴァロは戦ったがアレを倒したのはヴィヴィである。

噂には盛大に尾ひれがついているものだと思った。

「ただ、我々の属する性質上、異端審問官『狩人』との接触は極力ひかえるように教皇よ


り仰せつかっております。

何度もコーレスに来たことは存じてましたが、顔も合わせることができずに申し訳ない」

「い、いえ、お気になさらず」

ヴァロは単純に普段からほめ慣れていないために、こういう風に一方的にほめられること


が苦手である。

異端審問官『狩人』は他の機関とはその性質上、その独立性保持のために他の教会組織と


つながりは薄い。

独自の裁量を持つ代わりに、教会内部での発言力は小さいのだ。

それは一重に異端審問官は常に社会の陰に潜むものであるためだ。

表に出て評価をうけるものではない。

「つかぬ事をお聞かせ願えますか?」

改まった態度でミリオスは声を出す。

「なんでしょう」

「ヴァロ殿、魔剣と契約しておりますね」

ミリオスは真っ直ぐにヴァロを見つめる。

「はい」

魔剣の契約者同士はわかるという。

ここで隠し立ては無意味だし、ヴァロはこの男の前で一切のごまかしは無意味のような気


がした。

ヴァロはそう感じ素直にそう返答する。

「フム」

ミリオスは無言で剣を抜き放つ。

その行為にフィアは反射的に身構える。

ミリオスが剣を立てると、膝をついていた騎士たちが立ち上がり一斉に剣を立てる。

「ヴァロ殿、あなたに女神の祝福があらんことを」

それは聖カルヴィナ聖装隊に伝わる最高の儀礼。

それは称号ではなければ、勲章でもない。

それは騎士の誓いであり、何の拘束力も持たない。

だが、その姿は荘厳であり、まるでおとぎ話の一ページのような気さえした。

それを向けられた当の本人は自身に向けられたものだとは信じられなかったが。


この誓いはのちに『トラードの誓い』と呼ばれるようになり、

それがここにいるもの運命を狂わせていくことになるのだ。

時の歯車はその時に向かってゆっくりと動き出しはじめていた。

そしてそのことはこの場にいる誰も知らない。


ミリオスも一つの歯車。いずれそれは今回の件によりぐしゃりと歪みます。

そこらへんはじっくり書かせていただきましょ。

正直上げ過ぎかなと思ったけど、ミリオスたちからすればヴァロはコーレスを救ってくれた英雄なんだよなあと思ってこんな感じに。いずれ彼も登場予定。

次の部では出てこないけれどね。

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