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天空都市  作者: 上総海椰
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5-1 幽閉

デウドア・セボンス。

彼女はカランティの十三番目の弟子だった。

彼女は自身が才気のある人間だと思っていた。

同じ結社内の同年代に魔法で負けたことはなかったし、それを当然としてきた。

彼女はその実力を見込まれ彼女は結社から選出され、

晴れて聖堂回境師カランティの弟子となる。

誰もが羨む道を自分は進んでいるのだと確信していた。


だが世界は違った。


聖堂回境師カランティの弟子となればその実力もずば抜けていた。

各結社から送られてくる魔法使いの中でもエリート中のエリート。

いやがおうにも、自身の能力をもつものなど世界にいくらでもいるという現実を

彼女は直視させられることになった。

彼女は弟子の中でも彼女は一番下だった。

次々に下から入ってくる人間に抜かれていく。

弟子の中でも魔力が少ない彼女は老いるのも一番早かった。

彼女のプライドはずたずただった。

そしてデウドラの矛先は自身よりも弱い立場の者へと向かった。

彼女の楽しみは実験動物をいたぶること。

それは次第に残酷な楽しみとなり、徐々に彼女は残虐性を開花させていく。

最近では醜い容姿と残虐性から仲間内からも遠ざけらるようになってきた。

それでもカランティが彼女を使っているのは情などではない。

皆が敬遠する拷問という行為ができるためだ。

フィアという女性の監禁されている場所は塔の最上階にある場所だ。

王族など立場のある人間が罪を犯した時にその場所を使われた

カランティ様に刃向うのもゆるせなかったし、

それ以上にその若さで大魔女ラフェミナから認められ、

聖堂回境師となったことが許せなかった。

その上、とんでもなく美しいという。

自身は老い、何も残せずに朽ちていくだけだというのにこの差はなんなのか。

どうしてこれほどまでに違うのか。

その存在に彼女は激しい憤りを覚えていた。


「ほら、食事だよ」

その少女の監禁されている場所にデウドラは食事を差し出した。

「食事なんていりません。ヴァロはどこ」

フィアは声を荒げる。

凛々しく毅然とした姿はデウドラに激しい劣情を抱かせ、

同時にめちゃくちゃに破壊してしまいたいという衝動に駆られる。

「ヴァロ?あの男なら今頃研究所送りだろうよ」

「あの人は関係ない。私は何でもするから、あの人を解放して。お願い」

フィアの懇願はデウドラをいい気にさせるだけだった。

「ヒヒヒ…それを決めるのはあの方だ。

もっとも研究所送りになった人間で生きて出てきたものはいない。

魔法抵抗力があるみたいだから、実験用に生きたまま切り刻まれ内臓を取り出されるだろうねえ」

その少女はその言葉にみるみる顔から血の気が失せていく。

自身よりもはるかに高みにいる者をいたぶることに、デウドラは快感を覚えた。

「ヒヒヒ…指ぐらいは持ってきてやるさ。

うまくいけば廃棄された肉体から内臓で料理ぐらい作ってきてやるよ。

まあ残っていたらの話だがね…ヒヒヒ」

そういってデウドラはその塔を後にした。


フィアは直面した途方もなく悪い現実を目の当たりにする。

彼はいつもフィアのそばにいたし、

ミイドリイクでは命を懸けて私を護ろうとしてくれた。

頭によぎるのはフゲンガルデンでの日常。

あの暖かく大きな背中が好きだった。

あの大きな手で頭を撫でられるのが好きだった。

思い出されるのはそんなことばかり。

彼は私にすべてを与えてくれたのだ。

私を何よりも大切にしてくれた人。

そして、暗い闇の中から私を助け出してくれた人。

今そのひとの命が薄暗い実験施設で終わろうとしている。

そんなことは自身の命に代えても許せない。

だが、頭をどれほど使ってもこの状況から抜け出せる方法がフィアは見いだせない。

塔に拘束され、魔法を奪われ、彼女のよるべきものは何もない。

彼女は必死になって頭を回すが、わかったのは手段が無いことだけだ。


そして彼女は絶望する。


「あああああああ」

誰も居なくなった塔の上でフィアは絶叫した。

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