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天空都市  作者: 上総海椰
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4-1 地下にて

物陰に潜みながらフィアたちは入口から人影が近づいてくるのを感じていた。

もしかしたら一人ヴァロたちから離れたのは仲間を呼ぶために離れたのではないのか。

そんな疑問がヴァロの頭をかすめる。

ヴァロの中でココルに対する疑念が少しずつ膨らんでいく。

ヴァロはココルに視線を向けそうになるもそれを踏みとどまった。

「ヴァロ」

フィアはヴァロを見透かしたようにその言葉をかけてくる。

「あの扉を開けた時に一瞬小さな波動を感じた。初めはそれが何なのかわからなかったけれど。今思い返すとアレは侵入者が入った時に発動する類のトラップじゃないかって」

「でもここに入るのはフィアが初めてなんだろう?」

「そこがわからないのよ。封がなされたままどうしてこの部屋に罠を仕掛けることができたのか。封の手前の部分には私が見た限りそんな魔法はかけられて無かった」

フィアはこの部屋に入る前に念入りに壁を調査していた。

彼女は聖堂回境師でもある。彼女に見抜けないはずがない。

「とにかく、その問題はひとまず置いといて、目の前の問題にどうやって対処するのかを

考えるべき」

これはヴァロもココルも頷いた。

三人の魔女の放つ光が入口付近に現れる。


どうやってこの場を切り抜けるか。


「私が相手をする。背格好から報告書にあった五番弟子五番弟子ホーノア・ウイーント、

六番弟子ピピン・ザックハード、七番弟子エムローア・フブードでしょう。

その三人をここに向かわせたってことは…」

「ああ。タイミングと言い、いくらなんでも早すぎだ」

ヴァロの言葉にフィアは確信を持つ。そうこれは明らかに罠。

すでにカランティはここに到達していると見て間違いはない。

おそらく台座にあるはずの『抑止の宝石』がないのは…。

フィアの脳裏に撤退の二文字が浮かぶ。

「トラードを出ましょう」

「フィア?」

フィアはそう言うとすっと立ち上がる。

「あらゆるものを滅することができる掃滅結界の中ではカランティは無敵。

私たちに打つ手はない。ヴァロとココルさんはもしもの時のために背後から様子をうかがっていて?」

「大丈夫なのか?」

「できるだけ戦闘行為にならないようにはするつもり。

もし戦闘行為になったとしても、報告書で相手の使う魔法や得意とする魔法もわかってる。それに『真夜中の道化』に選ばれていた人間は戦闘技能に特化した魔法使いと聞いている。対魔法使い戦ならヴァロよりも私の方がうまくやれる」

フィアは勝てると判断したのだろう。

幾度かの戦闘を経験しフィアもそれなりに力をつけている

「わかった」

「ヴァロさん」

ココルは心配そうにヴァロの顔を見る。

近づこうにも入口の周辺には姿を隠せる遮蔽物はない。

「フィアなら大丈夫だ」



いきなり出てきた人影に三人は身構える。物陰から出てきたのは一人の少女。

フィアに攻撃の意思がないとわかると三人は構えを解いた。

「…あなたは?」

「昨日挨拶をさせていただいた聖堂回境師のフィアです」

フィアはいつもとは違った表情を見せる。

彼女の持つ聖堂回境師としての顔。

「どうしてここにいるのか納得のいく説明を我々にしてもらってもよろしいですか?」

「それは答えられません。一言でいうなら独自の調査のためです」

「独自の調査。トラードを管轄するカランティ様に何もつげずに…」

「カランティさんに何の断りもしなかったことは謝ります」

フィアは頭を下げる。

「この場に入ったことは謝っても許されることではない。一緒にカランティさまの元へとついてきてもらおう」

「謝って済まされることではないと…ではあなた方はここがどんな場所なのかご存知なのですか?」

フィアは静かに三人に問う。

「…それは…」

フィアの問いに三人は言葉を詰まらせる。

おそらく三人は何も知らされずにここにやってきたのだろう。

弟子たちの歯切れは悪い。

その対応からカランティから命じられて足を運んだだけとフィアは見抜く。

「私はここにある調査をしにやってきました。やましいことはありません」

畳み掛けるようにフィアは言葉をつなげる。

やはりカランティから何があるかまでは知らされていない。

フィアの頭の中で、次第にこの場で戦闘は避けられるかもしれないという期待がよぎる。

「ですが…」

「カランティと同じ聖堂回境師である私の言葉が信じられないと?」

立場を出されて三人は言葉をつまらせる。

そもそも聖堂回境師という立場の者を相手に拘束する権限は彼女たちにはない。

立場だけならば、彼女たちの師であるカランティと同じである。

ひょっとしたら口先だけでこの場を切り抜けることができるかもしれない。

フィアの頭の中でその考えが現実味を帯び始めていた。

フィアの甘い考えを打ち砕くように、頭上から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「そこにあったのは『抑止の宝石』でしょう」

三人の弟子たちは一斉に声のした方向を見る。

「カランティ様」

フィアは顔を上げて、頭上にいる人影を捉える。

そこには白い白衣を着た人影があった。


絶望を宿した表情でその姿を見ていた。

祭壇の上に浮く一人の女性の姿を。


彼女こそが聖堂回境師カランティ。

この結界を司る管理者。

地下ばっか。

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