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天空都市  作者: 上総海椰
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3-3 封

その場所にたどり着くとフィアはすぐに手を壁に手を当て、壁を調べ始めた。

ヴァロとココルはただその様子を眺めながらフィアの

「間違いない、魔法による封がなされている。この様子だと解かれてもいない」

「なら解いて先に進もうぜ」

「…うーん」

フィアは壁を前にして何か考え込んでいる。

「フィアには何か気にかかることでもあるのか?」

「なんだか妙な感じがする。順調に行きすぎているのよ」

「考え過ぎじゃないのか?

地下通路で魔法によるトラップとかもなかった。

出会った後もつけられている雰囲気はなかったし…」

「だからよ。私が想像していたカランティという人物像からはかけ離れてる。

私の想像したのはもっと警戒心の塊のような人間だった」

ヴァロはココルの方を振り向いた。

「ココルはここでずっとあのカランティのやり方を見てきたんだろう?」

ココルはこのトラードに長くいる。ヴァロたちよりもずっと詳しいはずだ。

フィアもヴァロもココルに注目する。

「そうですね。カランティは怖ろしく警戒心がおそろしいほど深い人物です。

偽装を見破るのに苦労しますし、その動きもすごく巧妙です」

「…私はもう少しこの封を調べてみる」

ココルの言葉を受けフィアは調査を再開した。

「封っていうのは?」

することが無くなりヴァロはフィアに疑問を投げかけた。

「封というのは魔法による印のこと。

一度解除すればその封は外れ、同じようには作れないようになっている。

ヴァロたちが書類を運ぶときに封蝋をつかうでしょう。あれと同じようなもの」

封蝋というのは重要な手紙や封筒をを運ぶときに用いるものだ。

機密文書などその重要性の高いモノはそれ

騎士団の書類でヴァロも幾度か使ったことがある。

「ただし正しく解除するには解除呪文が必要とされるけれどね」

フィアは視線を壁に向けたままヴァロに語りかけた。

「…フィアはどうしてその解除呪文を知っているんだ?」

「それはユドゥンさんから聞いたから」

壁に張り付くような恰好でフィアは壁を丹念に調べている。

「ちょっとまて、ユドゥンさんが何で他の結界の解除呪文を知ってるんだ」

「それはこっちが知りたいわよ。もう、邪魔だからヴァロたちはそっち行ってて。

開くときになったら呼ぶから」

フィアの声には苛立ちが含まれていた。

「わかったよ」

すっかり邪魔者にされたヴァロはココルと一緒にその場から離れる。

ユドゥンから託されたモノはここに至るまでの地図だけではなかったようだ。

ただし、いくらなんでも他の結界の解除呪文を知っているとか

そもそも知り過ぎのような気もする。

追い出されたヴァロとココルは二人でフィアの準備が整うまで

フィアから離れた場所で待つことにした。


「ユドゥンというとルーランの聖堂回境師ですか?」

二人で立っているとココルが唐突にその言葉を口にする。

「ああ、そうだ」

「面識があるように聞こえましたが?」

ココルの食いつきにヴァロは戸惑う。

「まあ、ルーランに行った時に…な」

「どんな方なんですか?」

「どうしてそんなにユドゥンに興味を示すんだ?」

疑問に感じヴァロはココルに問う。

面識もなければ接触もないココルには関係のない聖堂回境師のはずだ。

「暗殺者から抜けてから知ったことですが、

『絶対不可侵』…我々同業者の間では彼女のことをそう呼んでいるらしいです。

幾千という暗殺者を差し向けられなお、ルーランの絶対者として君臨している彼女は

生ける伝説と聞いています」

ヴァロはカランティの弟子をネズミに変え、拷問を加えていた場面を思い出し身震いする。暗殺者たちにはどんなひどい目を受けたのだろうか。

「そうだな…綺麗だけどおっかないヒトだったよ。ただ出来ればもう二度と会いたくはないな」

ヴァロの正直な感想である。

最も、この件が無事済んだのならばもう一度ルーランを訪れなくてはならないのだが。

「ヴァロ」

奥にいるフィアから声がかかる。

「確認は済んだのか?」

ヴァロはココルとともにフィアのいる場所に向かう。

「大丈夫、封は切れてなかった。この魔法式は劣化具合から逆算すると、およそ四百年前に造られたモノ。そしてそれがまだ張られているということは、カランティはまだこの場所をみつけていないと考えられる」

「なら大丈夫ってことだな」

「…多分」

ヴァロの言葉にフィアは煮え切らない返事をする。

彼女の頭にはまだ何か引っかかるものがあるのだろう。

「…それじゃ封を解くわよ」

「ああ」

フィアは息を吸い込むと意を決したようにその言葉を唱える。

フィアが言葉を口にすると壁が砂となり道が開けた。

「私は念のためにここで人が来ないか見張っていることにしましょう」

ココルはそう言ってその場に残る。

「条件はそろってる。おそらくこの先に『抑止の宝石』が…」

通路を進むと視界が急に開ける。

小さな祭壇がそこにはあった。

フィアは祭壇に駆け寄る。


頭上には巨大な穴のようなものが開いている。

フィアは周囲を見回すもののそれらしきものは見当たらない。

「…そんな…ない」

台座の上にあるはずの石を探すフィアの顔には、焦りの色が見え始めている。

ヴァロは絡め取られていくようなそんな感覚を覚えた。

背後からココルが走ってくる。

「ヴァロさん、フィアさん、こっちに誰か来ます」

出入り口付近で見張っていたココルは、そう言って二人を柱の陰に連れ込む。

息を殺しヴァロたちは入口を見守る。

いくらなんでもタイミングが良すぎる。

だとしたらどこで連中はこちらの動きを把握したのか。

複数の足音が近づいてくる。


入口から現れたのは三人の女性だった。

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