第一話 タイプがバラバラな兄弟ですが?
暗い暗い夢の中。皆は今頃、夜を迎えているのだろうか。空に浮かぶ星々は、さぞかしきれいなのだろうか。
これは夜を知らないひとつの家族のお話。血の繋がりのない、家族のお話。
目を刺すような日光、ああ、一日が始まってしまったんだと脳が理解する。とりあえず目を覚まして起きることにした。
でも、私カーテンなんか開けたっけ?
「痛つっ…」
起き上がってみると首が痛む。どうやら、寝違えたらしい。頼むから勘弁してくれと思いながら、とりあえず、ボサボサの髪の毛で階段を下り皆のところへ向かうことにした。
申し遅れた。私は椎名貴音。年は16。
どこにでもいる普通の女子高生だ。
私は今、8人で暮らしている。でも、血が繋がっているのは、兄しかいない。なぜかって?皆、親を若くして亡くし、行くところがなくなってここに来たから。今のこの家は親のいない子の、寄せ集めのようなものだ。無論、私たちにも親はいない。母と父りょうほうともなくしている。だから、私は今日も生きていることを噛み締めながら…
ぎゅむ。
「きゃあぁぁ!」
「へっへん今日も一番しりいっただき!」
…お尻を触られた。もう一度いう。お尻を触られた。
こいつはいつでもさわってくる!
特に朝!
セクハラだ!いったいあいつはどういう性癖をしてるんだ!てか、冒頭からなにさらしとんねん!
とはいっても彼は私よりも年下だったりする。
彼は、天守悠太。性別は男子。年は15。
8人の中で一番若い。説明すると、筋金入りの変態。とにかく変態。救いようがない変態だ。説明している自分でも思うが、分かりやすいな。
朝から体力半分使った気がする。うん。
とりあえずリビングに行こう。つかれた。キィィ。古いからだろうか。扉が軋んだ。
皆がこちらをむく。そして、テーブル左側一番手前の女の子がしゃべる。
「おはよーしーちゃんー今日もだるそうだねー」
あんたのしゃべり方もだるそうだけどね!
と心の中で思う。
「おはよー、あんたはいつも早起きだね。マイペース感半端ないのに。」
「えへへーそんなことーないよーそれよりーご飯食べたいなー」
「あんたの頭は飯だけかい!」
軽くツッコミを入れながら、それとなくながす。
彼女は、翠風音。年は18。
私よりも年上なのだが、彼女の雰囲気で、ついタメ語になってしまう。
おっとりしているが、最も食いしん坊で、
よく食べるものの、全く太らない。運動など全くしないのだから驚きである。食べた分だけ太る私からしたらほしい能力である。
私の横をするっと通り抜けて、
「俺っちもうお腹空いたよ…」と悠くん。
「そんなとこたってないで座ったら?早く朝御飯食べたいんだ…」彼女の隣にいた男子がそう呟く。彼は、菊地海斗。年は16私と同い年。勉強、スポーツも万能にこなせ、器用というすべてが揃った男子である。しかし。ひどいことを言うが、頭がおかしい。(アニメをこよなく愛している)更に性格が壊滅的に悪い。だから私は彼とよくケンカをしていることが多い。
「そんなになるなら先に食べてればいいじゃんよ?」
「よくないの!みんなで食べるから美味しいんだろ!」
「いちいちめんどくさいね。そんなんじゃいつまでもモテないよ?」
「別にお前には関係無いだろ」
「第一、いままで家に女子つれてきた形跡もなければ、一緒に帰ってることとかもないもんね笑なんかあれだよね、宝の持ち腐れって奴?顔もそこそこいいのにね笑」
「なんだと!言わせておけばふざけやがって!てか、一度も一緒に帰ってることがないのは、お前が『一緒に帰ろ?』って誘ってくるからだろ!あと、そこそこは余計な!」
「わたしともーいっしょにかえるよー」
「「今はどうでもいいわ!」」
「ごめん〜しゅん…」
「良いでしょ!他に帰る相手いないんだから。」
「俺は、お前がかわいそうだから、一緒に帰ってやってんの!てか、そういうお前は彼氏いんのかよ?」
彼氏いない歴=年だとは言いたくない。
「彼氏ぐらいできたことあるわよ!バッバカジャナイノ!?」
「ぷっ笑なにムキになってんの笑彼氏彼女の話でムキになるとかどんだけ幼稚なんだよ笑」
「キィィィ!自分だって切れてたくせに!それに、振っといてそれはなによ!あんたはなんでそんなにデリカシーないのよ!アホなの?!」
「デリカシーなんてなくて結構。というかお前からデリカシーという言葉が出てくるとか、ありえないわー。」「そのボサボサの髪」うっ…「だるそうな目」ぐはっ…、「その目の隈」げふっ…「女子力の欠片もないお前にデリカシーないとか言われたくないわー」
言い返せない。悔しいけど言い返せない!
「あんただってどうせ、二次元が俺の嫁だ〜とか言ってる口でしょう?」
「それのなにが悪いって言うんだよ?お前には、アニメキャラのよさがわからねえのか!あぁん?!」
「わかるわけないでしょうが!何がアニメキャラよ!アホじゃないの??私知ってるよ。よく携帯とかパソコンとかいじって、ふへっ…みたいなキモい声出してるの」
「てめえいつそんなことを!」
「へ?トイレにいこうとしてたらドアが、中見えるぐらいで開いてたからみてたら、キモかった。次からはしっかりしめな。笑」
「ちきしょー!」
そこで止めが入った。
「ちょっとちょっとストップ!」
「ヒートアップし過ぎだ!そもそもご飯食べたいんだろう?みんなお腹空いてるんだからまたあとでやれ!あと、ちゃんと音にもあやまれよ。」
彼は私の兄。名前は椎名貴月。
何でもできる天才肌で、どんなことでも、そつなくこなせる。性格もいい。いってしまえば私の自慢の兄だ。まあ、問題があるにはあるのだが。とりあえず、そんなことは置いておこう。
「「スミマセン…」」
素直に謝って席についた。
「あれ?」
「紫影にぃは?」
「…ここにいるよ…」
「ひぃぃ?!って、料理作ってたんだ。ビックリした!」
「…まあ、影薄いからね…でもみんなして、忘れすぎだと思うんだよね。毎日ご飯作ってるの僕なのに。」
彼は明条紫影。
影が濃そうな名前をしているが、めちゃ薄い。何でもできるのに影が薄いために全く目立たないためなんにもできない。
スポーツは案外得意らしい。ただ、ボールをつかったスポーツはパスをもらえない。宝の持ち腐れだ。
「で、きょうのメニューは?」
「スクランブルエッグ、五穀で作ったパン、チョレギサラダ、リンゴのすり下ろし、鶏肉のマリネだな。」
「ねぇ?音ちゃん?」
「俺の話聞けや。」
「なにぃ?しぃちゃん?」
「だから、聞けや。」
「今日って、なんかあったっけ?」
「もういいや。」
「特にはないよぉ?」
「そうなんだ。で、今日のメニューは?」
「…もういったわ!話聞けや!」
「そだっけ?まあいいか。食べればわかるよね。」
「…じゃあなぜメニューを聞いてきたんだ…」
「あ、あ、私は白米がいいなぁ〜」
「…心配すんな。お前は白米だ…」
「やったぁ〜」
「音ちゃんは、ご飯でご飯食べれるぐらいの白米狂だもんね。」
「えへへぇ〜」
「別に誉めてないからね。てか、今のに照れる要素はひとつもないよね。」
「それにしても、私も料理作れるんだよね!ドヤッ」
なぜかみんなが、目をそらした。
「なぁ、こいつって自分が料理下手ってことに気づいてないのか?紫影の兄貴?」
「…らしいな。あいつの料理は殺人レベルで下手くそなのにな…」
「あれを食べた時はマジで死んだかと思ったぜ。」
「…あれは物体Xだな。いわゆる、某アニメのガキ大将みたいな料理だもんな…」
「もしかして、貴月の兄貴も料理できないんじゃ…」
「いや。兄さんは料理得意だったはずだ。」
「じゃあ、なぜあいつは駄目なんだ?」
「…わからねぇ…」
「海斗!なに一人でこそこそ話してるの?」
「一人でじゃないだろ。って、あ、紫影の兄貴が見えてないのか?」
「はっ!全く気が付かなかった!」
「…まぁいいや…」
あと、隣のねぼすけ起こしてやれよ。」
「あ、うん。」
ということでとなりでうつらうつらしている、お人形さんみたいにかわいい女の子を起こす。
彼女の名前は叢雲霊架。15。
とってもかわいい妹で、おっちょこちょい。ねぼすけだけどそこがまたかわいい。私からするとかわいいかわいい妹である。ただ、ひとつだけ大変なところがある…
「霊架、起きてー」 体をゆする。
「んんっ…貴音お姉さま…ひゃっ!どこさわってるんですか…でもお姉さんならどこでも…むにゃむにゃ…」
…ご察しのとおり。寝ている間は脳内が
下ネタ化している。それによって見ている夢が酷いことになっている。普段よく悠くんとつるむことが多いからなのか…
「この子はいったいどんな夢を見てるんだ…私は身の危険しか感じないよ。」
とりあえず起こすために空手チョップを頭に入れる。
「ぴぎゃ!」
「ほらご飯だよ。起きなさい!」
「え!ご飯なの!やったー!食べる食べる!えへへぇ…うれしいなぁ…」
切り替えがはやいことで。
「それじゃみんな揃ったな。」
ちょっとまて、まだ、紫影の兄貴が座ってない。」
「ああ、忘れてた。」
「…空席がある時点で気づこうや…」
「じゃ、今日も!」
「「「「「「いただきます!」」」」」」