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1 『始動』

「ふむ。遅いな。遅すぎるぞ」


 かつて魔王を倒した最強の一角――アルフォンス・ヴァン・アーノルドは読んでいた本を閉じた。古い刺激的な香りが鼻をうつ。パチンと指を鳴らすと、本はフワフワと宙に浮き一人でに元あった場所へと向かって行く。


 暗く不気味な洞窟の中に何百何千という本が並んでいる。洞窟内は湿気が多くじめじめしていて、時折水滴が落ちるが、不思議と本は湿っていない。辺りに漂うのは古書の心地よい香りだけだ。


「遅い。ペティのやつはいったい百年もの間僕を置いて何をしているんだ」


 ペーティウス・シャンゼリーゼ。ヴァンの仲間でありかつて魔王を共に倒した同士だ。彼女は約百年前にヴァンにこの洞窟で待つよう頼んで旅に出たが、未だに帰ってきていない。


 彼女は一冊の本を持って旅立った。魔王が所持していた世界最悪最低な魔導書――ペティはそれを処分するためにこの洞窟から出て行った。


「あのロリババア、時間凍結魔法が使えるからってのんびりしているんだな」


 アルフォンスは組んでいた足を組み替え、指を鳴らす。近くに掛けてあったローブが自ら動き彼の元までやって来る。外出用のローブに着替え、彼はゆっくりと息を吸った。


「ああ、久しぶりだ。これを着ると身が引き締まる。さて、ペティになんと言ったら良いだろうか。この場所を空けるのはいささか不安だが、まあ良いだろう」


 彼は洞窟内に歴然と並ぶ魔導書を眺めながら進む。洞窟の中に何千と用意された松明の火が、彼が通り過ぎた順に消えて行く。彼の後ろに光はない。

 しばらく歩いて、洞窟の出口が見えた。


 そこから見える陽の光は実に百年ぶりで、外の世界の素晴らしさを彼に伝えてくれた。


「百年でこの世界はどこまで変わったのかな、死に物狂いで魔王を倒したんだ。平和になって貰っていないと困るな」


 アルフォンス・ヴァン・アーノルド――又の名を大魔導士アルフォンス。魔王を討伐した英雄の一人で、魔法を極限まで鍛え抜いた偉人の一人。その力は世界屈指の実力を誇る。

 彼は洞窟を出て、かけていた時間凍結魔法を解除する。


 彼は消えた仲間を探すため、かつて救った世界へと足を踏み入れる。

 世界を震撼させた魔王討伐から百年の時を経て、彼らの伝説が再び始まろうとしていた。

本日の更新は夜にもう一度行う予定です。

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