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10月13日魔術師見習いから神官見習いへと修正をしました。
花が咲き誇る広い庭の中央にいつもの人がいた。きれいな赤毛のその女性はいつもこちらを振り返ると優しい笑顔で迎えてくれる。そしてこちらに手を差し伸べた瞬間ものすごい光に襲われ全てが消えてしまう。これはディーンが何度も見ている夢だ。何度見てもなれないその夢はきっと最後に見た母親の姿なのだと思っている。
あの夢を見てしまうと中々眠りに戻ることができず、窓に目を向ければうっすらと空が白んできていたからそのまま部屋をでて下りていった。
「女将さんおはよう」
「あらディーン、今日はまた早いわね。楽しみで眠れなかったのかしら」
そう笑いながら話しかけてくれるのはこの宿の女将のアマンダだ。このノーバーの村で右も左もわからなかった幼いディーンたちに住む場所と食事を与えてくれた人だ。アマンダはその美貌と経営手腕でこの村一番の宿を取り仕切るりっぱな女将の彼女に幼い頃ディーンたち兄弟たちは拾われ育ててもらい今ここにいることができている。もちろん大きくない村だからよそ者を快く思わない人もいたけれど彼女がそれをだまらせたとかなんとか。
そのうち自分にはまったくなかったけれど双子の弟のカインは魔力の素養があることがわかり今は王都の神官見習いとして教会へ勤めている。ディーンは宿の手伝いと時々荷物を近くの村まで届ける遣いの仕事を手伝っている。
世界をこの目で見てみたいと思っていてもただの庶民であるディーンに貴族のように旅行へいくような余裕などはないけれどそれでも少しでも外の世界を知ろうと荷物運びの仕事も引き受けていた。
そんな折王都までの荷物運びの依頼があり胸を躍らせていた。何でもある貴族への届け物だそうで王都に依頼でいく上に運び賃が破格なのだから断る理由はない。初めての王都までの旅をディーンは楽しみにしていた。
「店は心配要らないからしっかり王都を見ておいで。カインにもよろしくね。」
「ありがとう女将さん。まかせといて!じゃあ行ってくる」
日が昇るのと同時に店を軽い足取りで出発した。