episode4 少年
登場人物紹介
宮越進刑事 39歳
夜叉と同じく正義感が強い。
頼りになる為部下からは人気が高い。
赤井秀明刑事 29歳
何故か同僚や夜叉に亜希子に上から目線で
物謂われる。へっぽこ刑事。
此でも刑事としては優秀。
西藤亜希子 29歳
正義を誰よりも愛する女刑事。
得意技は跳び蹴りと空手。
宮越進を尊敬している一人。
この日志乃と夜叉の二人は警察署で一夜を過ごすこととなった。
夜の署内は人が少ないせいかどこか夜間病院のような静けさだ…。
先程の刑事二人と夜叉達は同じ部屋。ドアは開けたままだ…。外は月と星が街中を照らしている。
刑事二人はテーブルを挟むようにパイプイスへ座りボールペンを片手に持っている…。
志乃も宮越の隣りでパイプイスに座る。
そんな中ベットに腰掛けている夜叉は榎本が謂っていた中学生の話しを思い出していた。彼の中でNo.3こと谷部慎司が頭に浮かぶ。彼も中学生だ…。
『No.3…』
『え?』
『『???』』
髪を解いていた志乃が鏡を見ながら問い掛ける。すると彼はカーテンを少し開けると外の様子を見る。
『谷部慎司。…榎本が帰り際に謂っていたろう?人を捜しているような事…』
『うん…』
『恐らく榎本が謂う中学生は谷部慎司って奴だ…施設での呼び名はNo.3…』
夜叉が話す内容は赤井刑事がすぐにメモを取る。大切な情報は出来る限り聞き逃さない…。
『もし、本当に捜し回っているとしたら施設から無断で抜け出し俺達を捜しているか?…最悪見つかったら此処か街中で戦う事になるかも知れねぇ…な…』
『しかし夜叉君、捜索願も出ていないみたいだし…』
『お前馬鹿か?施設での内容を知られたくねぇから出したくても出せないんだ。それに…谷部慎司は五十嵐を尊敬している…抜け出したと謂うより”外出”したが正しいかもな…』
赤井は夜叉に”馬鹿”と謂われた事がショックなのか落ち込んで居る様子だ。
宮越は赤井を見て苦笑いをする。
『なぁ、夜叉?捜していた振りは考えられないか?』
『それも有りだろうな…俺達にNo.3(谷部慎司)の情報を持ってきたなら…』
『そうだ…僕、彼女が戻って行くまで様子を見ていたんだけど…夜叉君に気づいた素振りは全く無かったなぁ…』
『振り…だったら…?彼女はあたしと刑事さん達の顔を知らないし…咄嗟に夜叉を変装させたけど…』
『『うーん』』
ドオォォォォォォォンッ!
大きな音ともに署内が揺れ始まる。
いや、此処だけじゃない…街中も揺れているだろう…。夜叉は三人から目を離し再び外へ目をやる…。
少し離れた場所から煙りが上ってゆく様が見える。直後炎が見えてきた…。
『なんなの?!』
『夜叉!』
『夜叉君まさか…さっき話していた少年の仕業…?』
宮越と赤井は椅子から立ち上がり夜叉が立っている窓へ来る。
遅れて志乃も来た。
三人は燃える建物を確認すると署内放送が流れた。宮越と赤井は志乃に此処に残る様謂うと部屋を慌ただしく出て行った。
変わりに女刑事が入って来た。
二人に頼まれたのだろう。
『志乃、絶対に此処から出るな!』
『夜叉…』
彼は窓を全開にすると片足をかける。
女刑事が止めようとしたが夜叉は二階から出て行ってしまった。
『嘘でしょ?人並みはずれた人間が居るなんて…』
『大丈夫です…彼は…』
志乃は女刑事の隣りへ立つと飛び跳ねながら現場へゆく夜叉の背を見送った…。
夜叉は刑事達より現場へ着くと廃工場だったのだろう…建物が燃え盛っている。
周辺を見渡すが谷部慎司の姿は何処にも見当たらない…。工場付近は何もない…広々としていてぽつりと工場が建っているだけ。今、その建物は燃えている…。暫くするとサイレンが近づいてくる。パトカーと消防…。
『数日振りだね…高野煉先輩…』
夜叉は後ろへ振り返ると谷部慎司が腕を組んで立っていた。彼は不敵な笑みを浮かべている…。
『慎司…』
『まだ名前で呼んでくれるんだ?有り難う御座います…先輩…貴男は必ず来てくれるって信じてましたよ。何せ正義感あふれるお方だから…』
『何故こんな事をした?俺を呼び出すだけで!』
『だってこうでもしないと来てくれないでしょう?察してくださいよ?それとも判っていて訊いたんですか?
それと…僕は以前より増して強くなりました』
『…っ!お前…人間の姿じゃねぇか…』
『あ、気付きました?此が本当の完成した姿らしいですよ?煉先輩は勘違いで失敗作として捨てられたとか…研究所で噂してましたね…ふ…』
慎司は鼻で笑い片手を思い切り出すと夜叉を突風で吹き飛ばした。
辛うじて地に足が着いたので足を開いた姿勢で燃える建物の直前で止まった。
この時、消防車と刑事達が到着し宮越と赤井二人が夜叉の所まで行こうとする。
『来るなっ!』
『け、けど夜叉君!』
『大怪我してぇのかっ!今は誰も近付けるなっ!』
『…火はっ!』
『俺が使う…』
『…そうだ…彼はあの時指先から火を出していたな…』
『はいぃっ?!』
『あ〜今は”夜叉”っていう名前なんだ…?煉先輩…犬の方の名前?誰かに拾われたんですか?』
『うるせえ…お前に関係ねぇだろう…』
夜叉は後ろで燃え上がる炎を自分の手へ吸収させ始めた…見るがまま炎は建物のから夜叉の手へ流れてゆくのが肉眼ではっきりと見られる。
『全部とっちまったら何も見えなくなっちまうな少し残しといてやるよ』
『有り難う御座います…では…始めさせて頂きます!』
夜叉と慎司は同時に走り出しお互いに拳をつくりぶつかり合う
瞬間激しい音が鳴り響き地面には丸い大きな穴のような凹みが出来た。
宮越、赤井、消防の輩は何が起きているのか夢を見ている様だ…。
中には”信じられない”と謂う者も居た。
刑事二人は我に返ると野次馬が出来ている事に気付き消防団含め全員をこの場から出来るだけ遠くへ避難するよう指示を出した。
『全然衰えてないんだね…?』
『馬鹿にしてんじゃねぇよ』
二人は一度距離をとる。
夜叉は高く飛び上がると慎司へ向かって
急降下し右の拳を思い切り頬へヒットさせた。慎司はヒットした衝撃で隣接している川まで飛ばされた。彼は水しぶきと共に見えなくなる…。
また、数秒もしないうち慎司は川の中から飛び出すように出ると夜叉へ向かって行く
しかし夜叉はスレスレの所で慎司の攻撃を避ける。
また慎司は足開くと前屈みの姿勢で手を使い滑る足元を止める。口から血が流れている事に気付く。
『酷いなぁ〜口の中切れちゃったじゃない…?』
『そんなもんだろう?』
『怪我して欲しいのは煉先輩何だよね?』
『はぁ?』
『サンプルだよ』
『俺の血を化け物の薬品に役立てるつもりなんかねぇよ』
『戦いには怪我が付き物何でしょう?』
『あーうるせぇ…』
再び夜叉は慎司への攻撃を開始する。
再びがぶつかり合う度突風の様な風が起こり地には大きな穴が出来る。
バババババ…
『『…?!』』
『局のヘリだな…』
『ちぇ…もう終わりかぁ…連れて帰りたいけど無理そうだし今回は引くよ』
『次が有るって事か…』
『そうだよ。次は変化するから覚悟しといてよね?』
そういうと慎司はその場から闇に消えるよう去って行った。
戦いが終わった事を確認した刑事二人は夜叉の所へ行き車へ乗るよう伝えた。火は夜叉の手で消火されていた…。
車内ではアレだけの騒ぎを起こしマスコミや報道陣達が静かにしているわけないと、赤井が謂っていた。
発進するとヘリは現場近くまでやってきた。署に戻るとテレビを女刑事が志乃と観ていた。
『派手ねぇ…こんな大きな穴まで…』
『西藤さん…部屋じゃなかったんですか?』
赤井は女刑事に訊く。
彼女の名は西藤亜希子29歳独身。
西藤は赤井の問いを完全無視で宮越へ話しかける。
『宮越さん、此方まで音が聞こえていましたけど、報道陣達には見られませんでした?』
『マスコミや報道陣達も居ないウチに戻ったから大丈夫だよ。しっかし凄い戦いだったなぁ…』
遅れて来た夜叉を宮越が見る。
慎司の攻撃で打撲していたので救護室で湿布を張って貰っていた。腕には包帯も巻かれている。
『怪我したの?!』
『あ?あーただの打撲だ回復は普通の人間より早いから心配要らねぇよ』
『西藤さんってば!』
『…宮越さん、最後に何かが飛びながら去ってゆく人影が見えましたが…あれは?』
『夜叉が謂っていた施設の者の一人で谷部慎司という子だ歳は…』
『15だ』
『そうそう…』
『15って…中学生じゃないですか!』
『西藤さん…それは…追々…』
『詳しい事は明日話す夜叉、シャワールームなら有るがどうする?』
『そうだな…入れさせて貰うよ』
『是非、そうしてくれ』
『あのぉ…あたしも良いですか?』
『全然構わないわよ』
『有り難う御座います!』
『何で僕を無視するんですかっ!』
『赤井も早く帰るんだほら!現場には西藤が代わりをよこしてくれたんだ詳細も知っている事だ早くしろ!俺は一度現場へ戻らなければならんしなっ!』
『私は居るから何かあったら謂ってね?』
『はい!』
『シャワールームはこっちよ?二人とも着いてきて?』
如何でしたでしょうか?
次回も出来ればバトルシーンを
増やしたいと思っています。
今回は夜叉の本名が明らかになりました。
後に知る志乃の反応は?
次回更新未定。