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ー夜叉ー 造られる獣達  作者: 三日月
2/6

episode1 男の正体…

連続投稿です。

エピソード1は拾った犬についてとなります。志乃が拾った犬に秘密があります。

煙りに包まれた夜叉は…?

雨で濡れた仔犬を見つけた。しかし近寄っても全然逃げようとしなければ、志乃を見ようともしない。首輪跡はあるが辺りを見ても首輪自体は何処にも見当たらない。


志乃はコートのボタンを全部とめると

仔犬を抱き上げ連れて帰る事をアピールしていた。






『家に着いたらすぐお風呂に入れるからね?』




灰色の仔犬は志乃の事を見ようとせず

ただ顔を抱かれる腕に埋めていた。

何処か他の犬と違う…。まるで人の言葉が判るような素振りを帰り道であった。


自宅へ着くとヒーターを点けバスタオルを敷きく。その上に仔犬を寝かせた。

志乃はスーツを脱ぎ、部屋着へ着替え

風呂場へ向かった。


残念ながら犬用のシャンプーがない。

当たり前だ。今日までペットを飼って居なかったのだから。今日はとりあえず自分が使っているシャンプーでしのぐことに決まる。





十五分経つと”お風呂がわきました”と知らされる。大きい(たらい)がある事を思い出し、それを物置から引っ張り出した。

大震災があった時、何故か母が持ってきた物だ。





『はい、それじゃ洗うねぇ?』





浴槽からお湯を汲むと志乃はその作業を

何度か繰り返す。汚れはあったが汲むことによって汚れた湯は流される。




『全然逃げないんだね…やりやすいわ』





シャンプーを手につけると両手で伸ばし仔犬の背中から洗う。仔犬は気持ちよさそうに目を瞑っているだけ。




暫くすると全身洗い終える。

志乃は仔犬の体を拭きながらヒーターの前へ座らせる。本当ならこの作業も嫌がるはずだ…。




灰色の仔犬を飼い始め、初めての日曜日。

志乃はまだベッドの中に居た。

目は起きているが体は寝ている。



『ねぇ、あなた名前何にしようか?』





仔犬は志乃を灰色の目で見つめるだけ。

まるで、”頷いたらそれにする”だから”名前を並べて謂ってくれ”と催促しているよにも

見えなくもない。




『チビ』



プイッ



『ジロー』



プイッ



『モモ』



プイッ




『きなこ!』




プイッ




『あんこ!』




プイッ




『えー…ドラ!』




プイッ




『…あっ!夜叉っ!夜叉なんてどう?!』

『ワンッ!』

『やっと合格貰えたぁ!それじゃ名前は夜叉ね?よしっ!そうと決まれば散歩行こうか?』

『ワンッ!』

『……そういえば初めて鳴いた?』

『ワンッ!』






志乃は支度しながらテレビを観る。

点けられたテレビには緊急速報の文字が

出ていた。それを志乃が読み上げる。




『都心部で大きな爆発が発生…生存者は今の所判っていない…』





チャンネルを変えると都心部での爆発発生のニュースがやっていた。





〈この現場から白衣を着た怪しい人物が目撃されています。性別は男性、手には犬や猫に使う首輪の様な物を持っていただけと、目撃者は話しています〉


〈咄嗟にスマートフォンで撮影した画像があるというので、此方をどうぞ〉






テレビ画面には白衣を着た男が映し出された。顔はぶれていてよく見えないが

男性と謂うことは判る。そして黒いブレスレットにも見える首輪が手に持たれていた。




そのニュースを見ていた夜叉が急に唸りだした。志乃は夜叉を抱き上げ、首輪が付いている部分を指で触ってやった。





『一昨日も爆発があったばかりなのに…これは関係ないのかな?』

『ワンッ!ワンッ!』


『あ、ごめんね。すぐに支度するから』





志乃はそういって着替えと化粧を済ませた。ただ、志乃は夜叉はどんな種類の犬なのか判らないで居た。ただの雑種にしては色が普通の犬と違う。ドーベルでもない、やはり雑種なのか…?





『さて、行きますか!』





志乃が腰を浮かすとインターホンが鳴る。また夜叉の様子が可笑しい。

玄関へ行くことを拒否している様子だ…。


困った志乃は夜叉を抱き上げようとした次の瞬間、夜叉は灰色の煙りに包まれた。

インターホンは執拗以上に鳴り続く…志乃は恐怖を感じた。





『や、夜叉…?』




音が鳴り続く中灰色の煙りの様な物が無くなりつつあった。

見えてきたのは黒いズボンを履いた足…視線を上へずらしてゆくと白いVネックの服着た灰色の髪をした男が一人。





『訳は後で話す。今は俺の謂うことを利け…』



志乃は頷く。

男はそう謂うと志乃を抱きかかえ

ベランダから外へ飛び出した。

直後、玄関で発砲音が聞こえてきた…。




男は街灯や電信柱の上を使い

何処かへ移動をする…。

志乃は男にしがみつきながら頭は混乱していた。


すでに此処が埼玉なのかも判らない所までやってきていた。

目に入ったのは大きなガマカエルの看板。男はその看板を右を行く。真っ直ぐ進と赤い鳥居があった。


男が降りた所は梅が沢山咲き誇る場所だった。志乃は此処へくる途中梅祭りと書かれた物があったことを思い出した。

兎に角、頭の中を一度真っ白にしこの謎の男から話を訊きたい。






『…とりあえずだが…此処なら安心だな…』

『えと…貴男は誰なの?あたしの部屋に居なかったのに、どうやって?!』





男は溜め息まじりで志乃を落ち着かせる。

志乃はその時男の目を初めて見た。




『灰色の目…』

『俺はお前に拾われた犬だ。こっちが本当の姿だ』


『え?』

『お前、同僚に訊いたんだろう?動物を実験材料に使っている事?』

『うん…まさか…』


『お察しの通り。実験材料に使われたのは犬でもねぇよ。人間だ…あの研究所では人間と動物を使い化け物を生み出してる場所なんだ。…


化け物にならなかった人間はまた次の実験に使われる。ならずに人間と犬の境になり人になったり犬になったりした奴は大体処分される。


それが俺だ。能力はお前に拾われるまで試してみたさ。まず、人間に戻る…そして高く飛びながらの移動、爪は鋼のように硬く鋭い。そして指先から…』





夜叉は人差し指を立てると小さな炎が出現した。そしてその炎は次第に大きくなる。

それを見せた夜叉はマジックを見せ終わったかのように炎を消す。




『とりあえず、そこに座ろうぜ?』





志乃が夜叉が親指で指す方へ目をやると

休憩所らしき場所があった。

二人は裸足で歩き、椅子へ座る。






『話が少し戻るが、一応訊いてくれ。実験材料になった奴等はホームレスや親が居ない子供が使われているんだ。俺はガキの頃からあの研究所に居てな…ま、怪しまれない様学校は全て行った。


薬を何度も注射され、化け物になるための訓練も受けてきた…大人になっても変わらない俺は…犬の姿のまま棒で叩かれ蹴られ捨てられた


弱っていたからあの雨の中で死ぬだろうと研究員達は謂っていたな。けど俺はあんな所で死にたくなかった…』





彼は自分の掌を見ながら話してくれた。

視線を志乃へ戻すと、夜叉はとんでも無い事を言い出した。





『俺とかかわってしまったお前は恐らく狙われるだろう…あの部屋までこぎ着けたって事は”俺”に何かある。もしくはお前が実験材料に使われる…か…』


『そんなっ!あたしは…あたしは此からどうすればいいのよ…』


『あの会社も危険だ…爆発のニュースがあったろう?』


『うん』


『あれは…俺をこんな風にした奴等の仕業だ…』


『……』


『東京から潰してくるかも知れないな…』


『う…嘘…』


『可能性の話だ。本気にするな』




立ち上がる夜叉を目で追う。

彼は何処にも行こうとせず志乃の側から

離れなかった。

志乃へ背を向け満開に咲く梅を観る。




『しかし…久し振りの外は気持ちいいなぁ!』

『…良かった』

『あ?』

『今、良い声訊けたから。あ!それとあたし”志乃”っ!お前じゃないからね?』


『仕方ねぇだろ?名前訊いてなかったんだからよ?しかしチビとかモモとか無いだろう?』


『うっ…』


『あんなネーミング小さい犬や猫にしか似合わねぇよ』


『べ、別にいいじゃない!夜叉で決まったんだから!』


『それが一番まともだったんだよ』







如何でしたでしょうか?

更新不定期になるかと思いますが

宜しければお付き合い下さい(*^-^*)

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