いろいろこわい
暑い夏の夜、男たちが集まり、怖いものの話でもしようという事となった。
「おい、お前さん方。怖いものを一つずつ言ってみな」
「俺ぁ、頭下げをしてねぇ作品が怖ぇ」
「へぇ。てめぇにゃ下げる頭なんざねぇってこったな」
「何を言いやがる」
「頭が下がってるもんを見てぇなら、田んぼでも眺めて稲作してろってんだ」
「俺ぁ、『!』や『?』の後ろにスペースがねぇのが怖ぇ」
「はぁ? スペースが無ぇぐらいで怖ぇのか」
「見てると落ち着かなくてしょうがねぇ」
「奇行が極まって、あちこちのスペースから追い出されでもしたのか?」
「そんなことぁ……」
「スペース、スペースってうるせぇんだ。そんなにスペースが恋しいなら、自分を見直しやがれ」
「俺ぁ、異世界にジャガイモが出てくるのが怖ぇ」
「へっ、ジャガイモみてぇなツラしやがって、気にするのがそこかよ」
「だってよぉ、ジャガイモは新大陸原産だろ?」
「だから何でぇ。異世界なんだ。ジャガイモみてぇな食いもんがあって、それをジャガイモって呼んでるだけに決まってるだろうが」
「でもよぉ……」
「そもそも人間がいる時点でおかしいじゃねぇか。日本語をしゃべって、外国人みてぇな名前まで付いてることには目ぇつぶるくせに、ジャガイモだけ食ってかかるなんざ、カルビーの回し者かってんだ」
みんなが口々に怖いものを言い終えると、一人だけ腕を組んで笑っている男がいた。
「お前さんは、さっきから笑ってるばかりだな」
「そんなもん、何にも怖くねぇよ」
「へぇ。じゃあ、お前さんに怖いものはねぇのかい」
「あるさ」
「何でぇ」
男は急に青い顔になった。
「ブクマと☆評価だ」
「はぁ? 普通は泣いて喜ぶもんじゃねぇか」
「俺なんぞの作品が、皆々様に評価されるなんざ、恐れ多くて、とてもとても……」
男は胸を押さえてうずくまった。
「あぁ……想像しただけで具合が悪くなってきやがった。ちょいと横にならせてもらうよ」
そう言うと、そのまま奥へ引っ込んでしまった。
「おい、あの野郎」
「気に食わねぇな」
「よし、一つ懲らしめてやろう」
「どうする?」
「あいつの代表作にブクマと☆をぶち込んでやるんだ!」
男たちは協力して、ほうぼうに呼びかけた。
一人が入れ、二人が入れ、十人が入れ、百人が入れ。
「あっ、おい!」
「見ろ!」
「あいつの作品が、みるみるランキングを駆け上がっていくぞ!」
「ちくしょう!」
「騙された!」
一同は男の家へ駆け込んだ。
「おい! 起きろ!」
「てめぇ、この野郎!」
「俺達を騙しやがったな! てめえ本当は何が怖いんでえ?!」
すると男は布団からひょいと顔を出し、困ったように頭をかいた。
「いやぁ……今は、受賞と書籍化が怖い」




