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田舎貴族のご令嬢

作者: takanari
掲載日:2026/02/07

全てのなろう作家様に感謝しながら書きました。

テンプレ万歳!


2/8 気になるところを少しだけ加筆訂正しました。

内容などは変わっておりません。

2/10 まだあったので加筆。


 あたしの名はスーザン・イルミナティー。

 ゴールデンドーン王国の田舎貴族の娘だ。

 イルミナティー家は、フリーメイソン辺境伯領に隣接した小さな領地で、農業や酪農など辺境伯領の食料庫として機能している、いたって平和な弱小貴族家のひとつ。

 辺境伯家の次女であるエリス様とは、同い年という事もあり仲良くさせて頂いている。

 珍獣を可愛がっているだけだという噂もあるが…噂流した奴出てこい。


 優しい両親にほとんど放任主義的に育てられ、どこに出しても恥ずかしくないお転婆娘になりました、うん、自覚してるよ。

 ついでだけど、5才上のアニキいや兄様は領地経営を学ぶため辺境伯の元で修行中。

 つまりあたしはいずれ何処かに嫁ぐ訳なんだけど、今はまだ想像もつかない。

 あたしなんかもらってくれる様な奇特な人なんて居るのか?


 あたしには前世の記憶があるんだけど、今の生活に満足しているし、中途半端な知識で大したことが出来るとも思えないので割とどうでも良い。

 両親に話しても、よくあることだと穏やかに微笑むばかり…よくあるの?転生が?

 家の使用人や村の人たちに聞き回ってもそんな人いないけど?

 前世の話をすると、みんな生暖かい目で見てたけど、普段はちゃんと話を聞いてくれるし、良い人達ばかりなので嘘ではないはず。

 みんな(使用人たちも)スーちゃんと呼んでくれるし、よく農場のお手伝いもするから家族の様に感じてもいる。

 そう、あたしは貴族令嬢とは名ばかりの田舎の女の子として育ったし、両親もなにも言わなかったので、貴族のしきたりもなにも知らないままのびのびと14才になった。

 なってしまった。

 王都の貴族学園の事なんて忘れたまま。


 そして14才の春を迎え、入学までひと月前のある夜、(一応貴族なのでしないといけない)食後の紅茶の時間、父様がのほほんとした顔に似合わない真面目な様子で話し始めた。


 「まずはこの国の話をしようか。我がゴールデンドーン王国は大きな国とは言えないが、周辺諸国からは信頼と尊敬を集めている。それは何故だと思う?」


 「え?改めて聞かれると…なんで?…確か25年前の大戦争危機の時に国王陛下が…なんだっけ?」


 「そう、陛下ご自身が暴発寸前の危険な国々を回り調停を成立させたんだよ。素晴らしい御方だよね。陛下の我が身を顧みない行動のおかげで我が国の国際的な発言力は大きなものになったんだ」


「凄い!」


 「そして王太子殿下だ。この御方も凄いぞ。陛下が病床に伏された時にはまだ…スーよりひとつ年上だから…8才になられた頃だね、皇后陛下や宰相の力添えがあったとはいえ、混乱した国内情勢を半年足らずで収めてしまわれたんだ。しかもついでに貴族からも文句が出せない税制などの改革を行って庶民の暮らしもとても豊かになった。どうだい?こんな素晴らしい方々が統べる国にスーは生まれたんだよ」


 へーそんな偉い方々だったんだ、ま、雲の上の方々の話だしあたしには直接の関係はないけどね。


 「さて、ここからが大事な話だ。」


ん?何だ?真剣みが増したぞ?


 「スー、よくお聞き、私達は貴族といっても子爵、実質一番低い位なんだ。」


 「あの、父様?男爵の方が低いんじゃ?」


 「建前はそうだけどね。今の男爵家のほとんどは大きな功績で叙爵された騎士や庶民、大商人などでね、権力財力どれをとっても我々以上なんだ」


 「ふうん、そうなんだ」


 「子爵というのは400年ほど前の建国時の功臣達の部下の部下だった者達に与えられた位でね、その時代に今の子爵家のさらに部下だった男爵家はもうほとんど残ってないんだ」


 「うん解った、けどそれがなんなの?」


 「貴族学園では色々と言われる事もあるだろう、馬鹿にされる事だってある。でもね、悪い事をしたなって時以外は謝っちゃいけないよ。子爵といえども貴族なんだ、矜持は持っておきなさい」


 「それでね、あなたに明日から貴族令嬢としてのマナーを勉強してもらう事にしたのよ。頑張ってね」


 ずっと黙って微笑んでた母様が突然とんでもない事を言い出しましたよ?

 いまさら?無理ですよ?あたしですよ?


 「大丈夫、完璧じゃなくて良いんだ。むしろその方か良い」


 は?え?どういう意味?



 思った通り付け焼き刃のマナーしか覚えられないまま貴族学園に入学して、ちょっとしたトラブルがあったりしたけど概ね平穏に1ヶ月が過ぎた。

 やっぱりマナーや言葉遣いを馬鹿にされる事はあったけど、毅然とした態度をとっていたら、友人とよべる人達も出来たし一目置かれる様にもなった、というか王都の貴族達には田舎娘は面白い存在らしい。

 もしかしてここはいわゆる乙女ゲームの世界なのか?と考えてしまう様な事もあるにはあったけど多分違うね、物語としての面白みが足りないもん。


 そしてさらに1ヶ月後、生徒の親睦を深めるという名目の(お見合い)パーティーが開かれた。

 そんな事どうでも良いあたしは、テーブルの上に並べられた見たこともない料理を前にして大いに悩んでいた。

 こういうものはあまりがっついて食べてはいけないらしい、マナー的に。

 つかむしろ最近の流行りでは食べない方がカッコいいらしい、貴族的に。

 でもね、あたしは食べるよ。

 もったいないしめちゃ美味しそうなんだもん、さて肉と魚どっちが正解だ?


 「皆様ご覧になって!王太子殿下のご入場ですわ!」


 「殿下にエスコートされているご令嬢はどなたかしら」


 「…学園とは雰囲気が違いますけれど、辺境伯家のエリス様ですわね、やはりあの方を殿下はお選びになったのね」


 「今夜は綺麗にお化粧して堂々としてらっしゃるけれど、いつもの儚げな姿は演技だったのですわね、殿下はお優しいから騙されてしまわれた…」


 「武力だけの田舎貴族が王太子妃を狙うのは分不相応だと何度も忠告してさしあけましたのに」


 「わたくし達が殿下の為を思ってしていた事は全て無駄になってしまったのかしら」


 伯爵家の令嬢方がなんか言ってるな。

 違う、エリス様は本来美しい方だし、生まれつき体が弱いだけだと幼い頃から会っていたあたしは知っている、学園でも護衛代わりみたいな事をした事も何度かある。

今夜は殿下に恥をかかせない様に頑張っているんだろう。

 それに辺境伯には国境を守る大事な役目があるし、あんたらより位は上だぞ、いつか後悔しても遅いぞ。

 まあ、あのエリス様がざまぁなんて望むとは思わないけどね。


 ご令嬢方に心の中で反論しながら魚に標的を定めたあたしがパクつこうとした瞬間。

 エリス様をエスコートしたまま会場の中心に歩いて来られた王太子殿下が、良く通る声で叫ぶ様に話し始めたんだけど。ど。ど。


 「イルミナティー子爵家令嬢スーザン殿、こちらへ!」


 ふぇ?ななな何?

 あたし?

 殿下に呼ばれる様な事した覚えないぞ?

 あ、エリス様の事かな、あたし結構頑張ったもんね、いろいろ。

 多分今からエリス様との婚約を発表するんだろうな。

 功労者としてお褒めに預かったりなんかしたり、とか?いやー困ったなー。

 とはいえ子爵令嬢ごときが王太子に直接言葉をかけて頂くなんて緊張するなあ。


 おどおどしながら殿下の正面に立つ。

 駄目だ!あたし!貴族の矜持だ。

 背中にぐっと力をいれて、微笑を貼り付けた顔を殿下に向けるが…おおう麗しきご尊顔が眩しいぞ。

 おっとカーテシーを忘れるところでしたわおほほほほ、えっとここを摘んで足はこう、よし、これでどうだ。

 うん殿下の表情は変わらない、と。

 

 というか、エリス様どうしたんだろう?殿下の後ろから顔だけ出して、チラッチラッとあたしを見てる?

 可愛いが?

 

 えと、話しかけられるまで黙ってないと駄目なのよね、…ってなにじっと睨んでるんですか!話しかけて下さいよう、背中と表情筋が限界ですって!


 「イルミナティー子爵家令嬢スーザン殿!私と!このスコット・ゴールデンドーンと!婚約していただきたい!」


 会場全体が静寂に包まれ、その場にいた全員の視線だけが殿下に集まる。


 「…あ、あの殿下?もう一度おっしゃって…下さい、ませ?」


 「私と婚約していただきたい!」


 何を言われたのか理解できない、いや意味そのものは解るよ、解るけど。


 「で、殿下?あたし、いやわたくしはそのしがない田舎子爵の娘でしてございますんでその様な訳わからんいや高尚なお話はその」


 「ああ、普段の通りに話してくれ、言葉遣いは気にしなくても良い、私が許す」


 「は、はい殿下…あーそのー、何故あたしなんですか?こんな礼儀知らずの田舎娘なんかを?」


 おい、エリス様の目の前で下手な冗談言わないで下さいよ、嫌われますよ、デリカシー疑いますよ?


 「スーザン嬢、貴女は虐められていたエリス嬢を何度も助けたそうじゃないか。悪評を流されればまず慰めてから噂を否定して回り、ノートを隠されたら新しいノートに自分のものを書き写し、あまつさえ階段から突き落とされたエリス嬢を、空中で優しく抱きとめたというではないか!これは聖女の行いだ!」


 エリス様何こっち見てニコニコしてるんですかっ!殿下に何吹き込んでんですかあ!

 

 「いや殿下、あたしとエリス様は幼馴染みみたいなものでして、助けるのは当然ですし。あと、かなり盛ってますよねエリス様?階段降りたところで躓いたのを支えただけですよね?」


 エリス様の微笑みに少しドヤが混じったぞ

、いやエリス様そんな表情できたの?

 可愛いが?

 でもね!エリス様と殿下が上手く行く様に動いてたんですよ?

 エリス様には何も言われなかったけど、そんな雰囲気だったでしょうが!殿下を見つめる潤んだ瞳とか、あたしに縋るような表情とか!


 「そういう謙虚なところか聖女だと言ってるんだ。あと言葉遣いとマナーがなってないのが可愛い!」


 ななな何を大声で叫んでんですか殿下!おかしいだろ!


 「それはあたしが辺境の子…そうだ!殿下!あたしは子爵の娘なんですよ、身分が低すぎます!」


 「ああ、うんそれについては問題ない」


 いや大ありですよ?子爵ですよ?財力も権力も無い辺境の子爵家ですよ?


 「イルミナティー子爵家は、本来侯爵であってもおかしくない家なんだ。建国戦争の時に大変な功績というか戦功?をあげた初代子爵が、『偉くなったら遊べないから子爵が良い、領地も辺境にして欲しい』と言い張ったので子爵に叙爵されたそうだが、王家としては単なる子爵だとは考えていない、それに現子爵であるパーカー卿も…多分聞かされてないか…国家の重要人物だよ」


 「そそそそんなの聞いてません、え?ウチの初代爺様何やらかしたんですか!?」


 「やらかし…いや、そうとも言えるか。初代子爵ジョイ卿が建国戦争に参加した…させられたと本人は言っておられたそうだが、彼は当時帝国の属州だった我が国への隣国からの侵略に対する防衛軍の1人として国境へ向かった訳だが、『人と殺しあうのは嫌だー!』と叫びながら単身で隣国へ逃亡したんだ」


 それはあかん、英雄どころか逃亡兵やん、銃殺やん、マジやらかしやん。


 「そして隣国の山脈地帯に逃げ込んだんだが、そこでドラゴンと出合ってしまったんだ。しかしその当時帝国最強の魔道士と謳われたジョイ卿がその場で大魔法を放ちドラゴンを討ち取り」


 「ちょ、待ってください!ドラゴン?魔道士?なんですかそれ!」


 魔法だと?そんなんあったのこの世界?というかウチの超ひい爺様何者なの?


 「…なるほど、パーカー卿の貴女へ対する教育方針はそういう…まあそれは後で話そう、実はそのドラゴンのせいで隣国は我が国を侵略する事になったんだ、つまり戦争する必要が無くなり隣国と和解、さらにそれがきっかけで帝国から独立出来た、ね?大英雄だろう貴女の家の初代子爵は」


 「えー、はい理解は追いつきませんが凄い事だとは、…あ、父が魔道士っていうのは?」


 「貴女には何も伝えていない様だけど、貴女の父上のパーカー卿は20年ほど前に魔道士軍団長を引退して今は顧問をされている大魔道士だよ。」


 は?なんで教えてくれなかったの?…あんなのほほんとした顔の大魔道士?…ないわー。


 「ま、つまりはそういう訳でね、爵位なんて問題ない。これは上級貴族の当主あたりなら誰でも知ってる事なので反対はされないよ。それにほら、この場にいる皆も聞いてるしね。…もし反対勢力が多ければ侯爵になっていただかないといけないかもしれないけれど」


 「やめてくださいお願いします子爵が良いです田舎が好きです!うさぎさんとか大好きです!」


 って忘れてたーここパーティー会場だったー!皆様忘れろー!あたしは偉い人になんかなりたくないよー!


 「あれ?何を言ってるんだい?君には王太子妃になってもらわないと。」


 美しいお顔でそんな事ゆーなよー!あたしの心臓がえらいことになっとるやろがい!優しくて優秀で美しい王太子のつ、妻とか?そんな夢見てまうやろがい!


 「だからあたしには無理ですってー!というかだんだん言葉が崩れてきてますよ殿下!おやめになってくださいませー!あたしなんか麗しの殿下には似合いませんよおー。…そうだ!あたしが王太子妃になったら贅沢しまくりますよ!半年ごとに新しいドレス買って誕生日には宝石とかも買ってもらうし毎日デザートお替りしますよ!国傾けてやりますよ!良いんですか!」


 「あははそう来たか、でも今の君に贅沢なんて出来そうもないけど?そうだ、僕が贅沢のなんたるかを教えてあげるのもいいな。…それにしても『麗しの殿下』か、君にそんなことを言ってもらえるとはね?嬉しいよ愛しのスー」


 「だから勘違いしちゃいますんでやめてくださいって!…なんであたしの愛称知ってんですか?!なんでこのタイミングで言うんですか!もうダメ無理です帰ります!」


 「そうかい?でも帰る前にあの石を触ってもらえるかな?」


 殿下の侍従らしき人があたしの目の前にワゴンを押して来たので、乗せてあったサッカーボールぐらいの白くて丸い石を言われた通りに触ってみたら。ら。ら。


 「やはり思った通りだ!大魔道士の血を受け継いだ少女、そしてその優しさと利他的な行動力!スー!君こそが!」


 その石はあたしが触った途端に赤く光りだしたと思ったら、橙色、黄色、緑、青、藍色、紫と色を変え、最後に眩しいほどの白色光を放ち、ゆっくりと光るのをやめた。

 そして呆然とするあたしを含めたパーティ参加者達全員に大きな声で殿下は宣言した。


 「諸君!諸令嬢方!今ここに聖女が降臨なされた!…こちらのスーザン・イルミナティー様こそが我が国に100年毎に現れる大聖女だ!」


 静かだったパーティ会場にぱらぱらと拍手が起き始め、やがて大喝采に包まれる。


 「スー、良い事を教えてあげるね。100年毎に現れる大聖女はその時の王太子と結婚しないといけないんだ。意味は解るね?」


 「なんですかその法律?掟?誰が決めたんですかそんなの!」


 「うふふ、あのね…ジョイ卿だよ初代子爵の。建国戦争が始まった時に現れた初代大聖女と初代国王…その頃はまだ国王じゃなく州監と呼ばれてたんだけど、その嫡男である後の王太子と大聖女が恋に落ちたんだ。だけど大聖女とはいえただの庶民だ、身分が違う。そして戦争終結後にも相思相愛だった2人を、見るに見かねたジョイ卿が州監と側近達に直訴したんだ。『大聖女のお力は神の御業だ!もはや庶民ではない!人間である王などより余程尊い!』とね」


 なんてことしやがる超爺様!いや良い事してんだけど?いやいやそうじゃなくてあたしなんかが王妃になんてなれる訳ないだろ!


 「でもでもですね殿下!あたしに王太子妃なんか、ましてや王妃が務まるはずがないでしょう!」


 「ふふふ、それも問題ないよ。理由はいくつかあってね、まず大聖女は王妃の務めよりも大事な使命があるからね、王族の仕事はしなくていいんだ」


 「もっと大変じゃないですか!何すりゃ良いんですか大聖女!誰が代わってくださいよ!」


 しかし、会場からの反応は無く、微笑ましいものを見る様な、それこそ大聖女の眼差しであたしを見守っている。

 …あるひとりの少女を除いて。


 「エリス様!なんですかその『やってやりましたよ』なお顔は!貴女が主役のはずだったでしょ!」


 「あら?わたくしはそんな事一言も言った覚えはありませんよ、スー?」


 「でもほら、そう思うじゃないですか!あんな態度してたら!」


 「スー、耳を貸して下さる?」


 やっと殿下の背中から出てきたエリス様があたしの耳元でささやく。


 『スーはわたくしの為に動いていたつもりだったんでしょうけど、わたくし()も貴女の為に動いていたんですの』


 は?え?

 

 『貴女には判るはずよ、わたくし達は知ってるの、このゲーム』


 え、ゲーム?わたくし達?


 『わたくしとパーカー叔父様は貴女を破滅から救う為に動いていたんですの、わたくし達()転生者ですの』


 『ちょっと待って下さい、あたしこんなゲーム知りませんよ、というかあたしを助けるってどう言う事なんですか』


 『わたくし達はこのゲームの()()スーザン・イルミナティーが推しだったの、そしてなによりスー、貴女自身がとても可愛い子だったから。』


 あたしが…可愛いいから。


 『だから叔父様は貴女を王太子好みに育て、わたくしは貴女が受ける筈だったヘイトを受けつつ殿下に貴女の話をしたの』


 『…なんでそこまであたしの為に』


 『推しの為ならこの程度、なんて事ありませんわよ、課金出来ない代わりに何だってしますわ。…それにスー?貴女って殿下が好みのタイプでしょう?…ほら耳まで赤くなってますわよ』


 『でもそんなのあたしに…推しに伝えて良いの?』


 『うふふ、それはね……私って推しに認知して欲しいタイプのオタクなの!』


 唖然とするあたしを置き去りにしたまま定位置の殿下の背中に戻ったエリス様が王太子殿下にささやく。


 「殿下、場を中座させて申し訳ございません、続きをお願い致します、ああその前に…殿下?」


 『スーはもう落ちてますわよ』


 『そ、そうか。ありがとう』


 「よし!では続きを話そう!」


 なんか殿下、さらに自信を増した顔してるぞ…あ、そういえば聖女の仕事って何なんだ?


 「…大聖女の務めの話だったな。簡単な事だよ、大聖女は楽しく健やかに生き続ける事、それだけが仕事だよ」


 「なんですかそれ?遊んで暮らせって事ですか!?」


 「君が望むならそれでも良い、王城でも領地の村でもどこでも望む場所で暮らして良いんだよ」


 「言ってる事が理解出来ません」


 「昔いろいろあったらしくてね、大聖女にストレスを与えると大変な事になるんだそうだ、いやまあそんな事はいいんだ。」


 「大聖女の存在意義が分かりません」


 「君はドラゴンを知らないと言ってたよね」


 「見たことも聞いた事もありません」


 「聞いた事がないというのはパーカー卿の差し金だろうね、でも魔獣を見た事が無いのは当然だよ、大聖女のおわす国に魔獣は入って来れない、それこそが大聖女の存在意義なんだ」


 「それって大聖女が国外に出たらどうなるんですか?魔獣がうじゃうじゃとか?」


「大聖女がその国の国民であれば良いんだよ、さらに王妃であればまず確実だね。…で、どうする?城に住む?それとも実家の領地?」


 「え?領地に住んで良いんですか?……その…新こ…け、結婚、するんです、よ、ね?」


 「それこそ問題無い、僕が毎日転移魔法で君の所へ帰るから。休日には2人で過ごそう、君の行きたい所へ行こう、どこにだって連れて行ってあげるよ」


 はい、もう参りましたよ降伏します。

 貴方が好きです認めます。


 「君に出会えて幸せだ、愛してるよ、スー」


 「はい、殿下、あたしも貴方が大好きです!」


 会場が拍手と歓声に包まれて思い出した、みんなに見られてた!…でもそれすらも……。


 嬉しい。

 




 

 「おじさーん、こんな感じで良い?」


 「おおありがとうスーちゃん妃殿下。いい感じに出来てるよ…よし、これで今日は上がりだ、スーちゃん妃殿下も早く帰んな?明日は殿下が休みの日なんだろ?」


 「うん!楽しみにしてたんだよね、3日も休めるんだって!大変だったって言ってたよ、あはは」


 「大聖女ちゃん、気をつけてお帰りね、はいこれお土産にどうぞ」


 「わあ!ありがとう!おばさんのアップルパイ大好きなんだ!、じゃあまたね!」


 あたしは走る、いつもの待ち合わせ場所へ。


 


 「…はあ、はあ、ふう、お待たせ、スー」


 「なんて顔してるんですか、でん…スコット、急ぎすぎよ、まったく…とりあえず家で休みましょ」


 「いや3日分の仕事を今夜までにしておかないといけなかったからね、ちょっとだけ疲れたよ」


 「そんなに無理してたの!?ごめんなさい」


 「問題ないよ、君の喜ぶ顔を思い浮かべたら何とかなったしね」


 「あーもう、何言ってんのよ、それより家に帰りましょ」



 

 「お帰りスー、あと殿下…なんて顔してるんですか、とりあえず座って休んで下さい」


 「あたしお茶淹れて来るね」


 「そろそろお茶はメイドに任せない?」


 「なによ、あたしのお茶が飲めないって言うの!…あははこれ毎日やってるね、じゃ、待っててね」


 

 「いやあ殿下、いつもスーのお相手ご苦労様ですなあ」


 「いや、あんなに素直で可愛くて口が悪くてお転婆な、あ、いや素晴らしい女の子に出会えた事を苦労などとは思いませんよ。・・・義父殿、スーを素敵な女性に育ててくださってありがとうございます」


 「あーまあその推しが幸せでいてくれるのがオタ・・・あ、いや」


 「推し?」


 「いやいやなんでもございません。スーが幸せなら、それが私の幸せって事ですよ」

 



 

 「ねえ、スー?明日は何処に行きたい?君が綺麗だって言ってた海にまた行こうか?それとも…」


 「スコット…もう決めてるの、行きたい所、ううん、今一番見てみたい場所」

 

 「それは楽しみだ、教えて、君の一番見たい場所」


 「あのね、あたしの行きたい所にはもう全部連れて行ってもらえたから」

 



  

 「貴方が一番好きな風景を見せて」



おわり

最後まで読んで頂きありがとうございます。

感想、誤字脱字などはお気軽に。

裏設定もありますのでご質問などあれば、できるだけお答えします。

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