あーかい部! 4話 ハチ
ここは県内でも有名な部活動強豪校、私立池図女学院。
そんな学院の会議室、現場……いや、部室棟の片隅で日々事件は起こる。
3度の飯より官能小説!池図女学院1年、赤井ひいろ!
趣味はケータイ小説、特筆事項特になし!
同じく1年、青野あさぎ!
面白そうだからなんとなく加入!同じく1年、黄山きはだ!
独り身万歳!自由を謳歌!養護教諭2年生(?)、白久澄河!
そんなうら若き乙女の干物4人は、今日も活動実績を作るべく、部室に集い小説投稿サイトという名の電子の海へ日常を垂れ流すのであった……。
池図女学院部室棟、あーかい部部室。
『ブウ"ゥ"ン……』
この日、1番に入室した者は、人ならざるものであった……。
「お〜1番乗りぃ。」
きはだ、入室。
「さぁて、今日はどんなトクダネを語り明かそうか……。」
ちょっとカッコつけたもののすぐに飽きて、パソコン席に腰を下ろしてボーッとする。しばらくして部室のドアが開けられた。
「きはだか。早いな♪」
ひいろ、入室。
「ちゃおっ……、
ドアを開けたひいろに挨拶をしようと入り口を向いたそのとき、きはだは本当の1番乗りの存在に気づいた。
……気づいてしまった。
ドアと天井の間の壁に留まり羽を休める、ハデハデな黄色と黒の警戒色が目に優しくない『ヤツ』の存在に……。
「どうしたきはだ?壊れたおもちゃみたいに固まって。」
ひいろはまだヤツの存在に気づいていない。外から入ってくる者には絶対死角になる位置だ。気づけるはずがない。
「……。」
きはだは頭を違法改造したモーターの如く回転させた。自分ではヤツを撃退できない。ひいろもおそらく無理。となると最も合理的な行動は、ひいろにドアを開放したまま退室させ、援軍を呼ばせること。
「きはだ?」
「ストップ!動かないでひいろちゃん……!」
「あ、ああ……。」
しかし、援軍が来る前にヤツが再び飛翔すれば、ヤツは蝶のように舞い、ヤツのように自分を刺すだろう。
だってヤツなんだから……!
「いつまこうしていればいいんだ……?」
最悪を想定するならば、最悪の状況で自分の生存率を僅かにでも上げるなら……、
「そのまま、ドアを開けたままゆっくりこっちに来るんだ……!」
最も合理的な選択は、リスク分散……
「わかった。」
つまり、ひいろを売ることであった。
「来たぞ。一体何なんだ?」
まんまと運命を共にしたひいろに、ヤツの居場所を指差して見せた。
「ん?…………おまっ!?」
ひいろもヤツの存在に気づいた。
「貴様なんてことをしてくれるんだ!?これじゃあもう出られないじゃないか!?」
「ぶいっ。」
きはだは余裕のVサインでひいろを煽った。
「貴様ぁ……!」
「おっといいのかい?…………飛ぶぞ?ヤツが。」
「くぅ……ッ!」
行き場の無い怒りを堪え、観念したひいろはきはだの隣に陣取った。
「魚籠に入った魚の気持ちって、こんな感じなんだろうな……。」
「ビクビクしてるのは違いない。」
冗談まじりに強がって見せるが、状況は好転しない。
「1匹くらいならなんとか……何か良い手は……、
「ひいろちゃんが持ってる『ブツ』をヤツにぶち当てる。」
「おい。ブツって、ワタシのスマホをぶん投げるつもりか。」
「ん。ヤツのスタイルはボンキュッボンだ。ひいろのブツでキュッの部分をボーンすれば、ボンとボンがポポポポーンって寸法よ。」
「なるほど、ブツをきはだのにすれば完璧な作戦だな。」
「いやだい。」
「じゃあ人にやらせるな!」
「「……。」」
2人でヤツをチラ見するが、ヤツは一向に動かない。動く気配すらない。
ヤツを注視していると、自分たちよりはゆったりとしているが若々しい足音が近づき、足音の主が出入り口に現れた。
「やっほー2人とも…………もっと広く部屋使ったら?」
「「白ちゃん!」」
「え、何で2人とも泣きそうなの……?」
ひいろときはだは必死にヤツの居場所を指差すが、2人の健闘に気づくそぶりもなく白ちゃん先生は部室のドアを
「怖い夢でも
勢いよく閉めた。
「見た
ドアの振動は壁に伝わり、壁で羽を休めていたヤツは、白ちゃんの脳天に叩き落とされた。
「……ん?何か
ひいろときはだは声にならない悲鳴をあげながらあっち行けだか投げ捨てろだかのジェスチャーを送るが、白ちゃん先生は気づくそぶりもなく、ヤツを鷲掴みにして正体を確認するべく顔の前へと手を運んだ。
「くぁwせdrftgyふじこlp!!??」
2人の悲鳴が茶番に思える程の声にならない悲鳴をあげ、白ちゃんはヤツを前方にぶん投げた。
「「は……?」」
そう、前方……すなわち2人のいる部室の奥に。
「「……!!!」」
ひいろときはだは悲鳴をあげるよりも早く、各々が手に持っていたブツをヤツにぶん投げた。
「え……ちょっ!?」
2人のブツはヤツのボンとボンを見事に捉え、勢い止まらずヤツごと白ちゃん先生の顔面へ一直線。
「無理ッ!?」
白ちゃんは迫り来るブツとブツとヤツをのけ反って回避。顔面スレスレを通過したブツとブツとヤツはそのまま部室を飛び出し、
「もうみんな揃ってるかな?」
たまたま部室を目指していたあさぎの額に
「……え
ポポポポーン。
「ぐは……ッ!?」
そのままあさぎは後ろにぶっ倒れた。
「「「あ……。」」」
数秒ほどあさぎは空を仰ぐと、額を片手で押さえながら痛そうに起き上がってきた。
「ったぁあ〜、何……これ。」
あさぎが周りに散らばったブツとブツと、バラバラになったヤツのボンとボンの存在に気づいた。
「あ〜……。」
「大丈夫あさぎちゃん!?」
白ちゃん先生が駆け寄って来た。
「はい。」
「「あさぎ(ちゃん)!?」」
ほんのちょっと遅れて2人も到着。
「あたま大丈夫か!?」
「顔は……良かったちゃんとある!」
「喧嘩のバーゲンセールか?」
軽口を叩き合っている間、白ちゃん先生は白衣からガーゼやら消毒液やら絆創膏やらを取り出して慣れた手つきでおでこの手当てをしてくれた。さすが養護教諭……。
「とりあえずこれで応急処置はオーケー……ごめんなさい。」
「いやいや!大丈夫ですから。まさかここまでとは……。」
「ん?」
「そういえばヤツは……!?」
「ヤツ?」
「あ、バラバラになってる……っていうかこれ、よく見たら作りものだな。」
「「はあ!?」」
「いや〜、まさか木っ端微塵にされるとは。」
「される……ってことは、これあさぎちゃんのってこと?」
「うん。今日のネタになるかな〜って……なんかみんな目が冷たくない?」
「「「……。」」」
「ど、ドッキリ大成功〜、的な……あはは。」
「「「……。」」」
「すみませんでした。」
その後、あさぎは罰としてみんなにジュース一本奢り、日が傾くまで一杯やったそうな。
『ブウ"ゥ"ン……』
日が沈みかけ、誰もいなくなった部室から退室した本当のビリッケツの存在を知るものはいない……。
あーかい部!(4)
あさぎ:投稿完了♪
ひいろ:おいまて何だ最初と最後の
きはだ:本物いたってマジ?
あさぎ:さあ?
ひいろ:明日あさぎが1番に部室入れ
あさぎ:やだ
きはだ:訳:ひいろ怖くて1人じゃ部室入れな〜い☆
ひいろ:誤訳も甚だしいな
あさぎ:これは言質とったか
きはだ:やたー♪
ひいろ:いや、そこは間を取って白ちゃんにしよう
あさぎ:意義なし
きはだ:意義なし
白ちゃん:なんでよ!?
きはだ:召喚するとすぐ来てくれる白ちゃんちゅきちゅき
白ちゃん:にしてもリアルだったわねあのハチ
ひいろ:白ちゃんすぐぶん投げてたからあんま見てなくない?
白ちゃん:落ちて来た時の質量、握ったときの感触は紛れもなく本物だったわ……
きはだ:ハチマイスター白ちゃん
あさぎ:今度のネタは目利きでもしようか
ひいろ:断る
きはだ:やだ
白ちゃん:やめなさい
あさぎ:くっ
きはだ:そもそも本物どう用意するの
あさぎ:あ
白ちゃん:部室にいるの取って来たら?
ひいろ:流石白ちゃん、顧問の鏡
きはだ:これは尊敬
あさぎ:お願いします
白ちゃん:い、や、よ!
あさぎ:そもそもいるの確定じゃないですし
きはだ:しゅれなんだっけ?
ひいろ:シュレディンガーな
きはだ:惜しい
白ちゃん:ちょっと響き似てるわね
あさぎ:というわけでお願いしますシュレディンガー先生
ひいろ:頼むシュレちゃん!
白ちゃん:誰がシュレちゃんよ!?
あさぎ:ちょっと響き似てるわね
きはだ:言質取りの匠
白ちゃん:はあ……でも本物のハチがいたら放って置けないし、私が見ておくわ。一応先生だし
あさぎ:やったー
ひいろ:感謝
きはだ:ありがたやありがたや
白ちゃん:そういえば、小説ではハチって言葉使ってなかったわね
きはだ:ブツとかヤツとかわかりにくいぞー
あさぎ:一度IQ低いの書いてみたくて
ひいろ:パニック映画とかだいたいIQ低いもんな
きはだ:わたしあんなにIQ低くないぞー
あさぎ:……
ひいろ:……
白ちゃん:IQだけが人の価値じゃないわよ……?
きはだ:グサッ
ひいろ:刺さるな刺さるな
あさぎ:白ちゃんハチ説
ひいろ:ハチの針って生殖器が変化したものらしいな
あさぎ:スズメバチの仲間って腰を振って何度も刺すんだよね
ひいろ:なんていうかその……エッチだな///
白ちゃん:やめろやめろ
きはだ:いや〜ん白ちゃんに犯される〜
白ちゃん:人生終わるわ!