第3話:忘れられた古代遺跡
巨大なゴーレムを退けた僕たちは、改めて石碑の前に立った。三つの試練、その一つをクリアしたとはいえ、残りの二つがどんなものか、全く見当もつかない。
「ねえ、ユート。本当にこの先に、私たちが探してるものがあるのかな?」
リリアが不安そうに呟く。無理もない。僕たちが見ているのは、ただの石造りの扉。それが、僕たちの未来にどう繋がるのか、想像もできなかった。
「分からない。でも、僕は信じる。この先に、僕が探し求めていた魔法があるって」
僕はそう答え、扉に手をかけた。今度は、扉に刻まれた記号が光り輝き、重々しい音を立てて開いた。
扉の向こうに広がっていたのは、広大な地下空間だった。壁一面に描かれた魔法陣、宙に浮かぶ水晶、そして、中心に置かれた祭壇。そこは、まるで古代の魔法使いの工房のようだった。
「すごい……」
リリアが息を呑む。僕も、この光景に目を奪われていた。こんな場所が、まだ残っていたなんて。
祭壇に近づくと、そこには一冊の古びた書物が置かれていた。表紙には、見慣れない文字で何かが書かれている。
「もしかして、これが……」
僕が書物に手を伸ばした瞬間、背後から複数の気配が迫ってきた。振り返ると、そこには黒いローブを纏った集団が立っていた。彼らは、僕たちを追ってきた謎の組織の者たちだった。
「禁書は渡さない。これは、僕たちのものだ!」
僕はリリアを庇い、書物を抱えて走り出した。組織の者たちは、魔法を放ちながら追いかけてくる。
「ユート、こっち!」
リリアが、壁に隠された抜け道を見つけた。僕たちはそこへ飛び込み、組織の追跡をかわした。
抜け道は複雑に入り組んでおり、まるで迷路のようだった。しかし、リリアの優れた空間認識能力のおかげで、僕たちは迷うことなく進むことができた。
やがて、僕たちは広い空間に出た。そこは、地下湖に面した洞窟だった。湖の中央には、小さな島があり、そこには古代の神殿が建てられていた。
「あれが、二つ目の試練の場所かもしれない」
僕はそう言い、湖を見渡した。しかし、湖には船一つない。どうやって島に渡ればいいのだろうか。
その時、僕の手元の禁書が、再び光を放った。そして、湖面に魔法陣が浮かび上がった。
「もしかして、この魔法陣を使えば……」
僕がそう言いかけた時、湖の中から巨大な水竜が現れた。水竜は、僕たちに向かって咆哮を上げ、湖面を叩きつけた。
「試練って、もしかして……」
僕がそう言いかけた時、水竜が僕たちに向かって、牙を剥き出しにした。
「リリア、行くぞ!」
僕はリリアの手を取り、湖に向かって飛び込んだ。水竜は、僕たちを追いかけてくる。
湖の中は、真っ暗で何も見えなかった。しかし、リリアの魔法で水中に光を灯し、水竜の攻撃をかわしながら、島の方向へと進んだ。
やがて、僕たちは島に辿り着いた。水竜は、湖から出ることができないようで、僕たちを睨みつけながら、湖の中へと消えていった。
「なんとか、辿り着いたね」
リリアが安堵の息を漏らす。僕も、全身から力が抜け、その場にへたり込んでしまった。
島に建てられた神殿は、やはり古代の魔法使いの工房のようだった。祭壇には、一つの水晶が置かれていた。
「これが、二つ目の試練の鍵かもしれない」
僕はそう言い、水晶に手を伸ばした。その瞬間、神殿全体が光に包まれ、僕たちの意識は再び、暗闇の中に吸い込まれていった。
(続く)