第2話:禁書の導き
「ここ、どこだろう……」
リリアが不安そうに呟いた。僕たちが見ているのは、苔むした石畳の道、崩れかけた石造りの壁、そして、頭上を覆い隠すように生い茂る木々。どうやら、本当に古代遺跡の中に飛ばされてしまったようだ。
「とにかく、元の場所に戻る方法を探さないと」
僕はそう言い、周囲を調べ始めた。リリアは治癒魔法が得意だが、攻撃魔法は得意ではない。ここは僕がリリアを守らなければ。
「ユート、あれ見て!」
リリアが指差した先には、ひときわ大きな石碑が立っていた。近づいてみると、そこには見たこともない文字で何かが刻まれている。
「これは……」
僕は、図書館で見た魔法陣と似たような記号が刻まれていることに気づいた。もしかしたら、この石碑が、僕たちをここに飛ばした魔法陣と関係があるのかもしれない。
「解読できそう?」
リリアが尋ねる。
「やってみる。でも、見たことのない文字だから、時間がかかるかもしれない」
僕は石碑に刻まれた文字を、魔法書と照らし合わせながら、少しずつ解読を試みた。リリアは周囲を警戒しながら、僕の作業を見守ってくれている。
数時間後、ようやく僕は石碑に刻まれた文字の意味を理解することができた。そこには、こう書かれていた。
「『試練を乗り越えし者、真実への扉が開かれん』……試練?真実?一体どういう意味なんだ?」
「ユート、あれ!」
リリアが再び声を上げた。今度は、石碑の奥に、巨大な扉が現れていた。扉には、先ほど解読した文字と同じ記号が刻まれている。
「もしかしたら、この扉の先に、僕たちが元の場所に戻るための手がかりがあるのかもしれない」
僕はそう言い、扉に手をかけた。しかし、扉はびくともしない。
「やっぱり、何か条件があるのかも」
リリアが言う。その時、僕の手元の魔法書が、再び光を放った。魔法書には、新たなページが開かれ、そこにはこう書かれていた。
「『三つの試練を乗り越えし時、扉は開かれん』……三つの試練?一体どんな試練なんだ?」
僕たちが困惑していると、遺跡の奥から、轟音が響き渡った。そして、僕たちの目の前に、巨大なゴーレムが現れた。
「試練って、もしかして……」
僕がそう言いかけた時、ゴーレムが僕たちに向かって、拳を振り上げた。
「きゃあ!」
リリアが悲鳴を上げる。僕はリリアを庇いながら、ゴーレムの攻撃をかわす。
「リリア、逃げて!僕が時間を稼ぐ!」
僕はそう言い、ゴーレムに立ち向かった。しかし、魔法の才能がない僕に、ゴーレムを倒す力はない。
(どうすれば……)
僕は必死に考えた。そして、一つの可能性に気づいた。
「リリア!僕に魔法力を貸してくれ!」
「え?でも……」
「いいから!信じて!」
僕はリリアの言葉を遮り、彼女に手を伸ばした。リリアは戸惑いながらも、僕の手を握り返してくれた。
その瞬間、リリアの魔法力が、僕の体の中に流れ込んできた。僕は、その力を借りて、魔法を発動させた。
「炎よ、我が敵を焼き払え!ファイアボール!」
僕の魔法が、ゴーレムに向かって放たれた。ゴーレムは、突然の魔法攻撃に怯み、その巨体を崩れさせた。
「やった!倒せた!」
僕とリリアは、喜びを分かち合った。しかし、僕たちの戦いは、まだ始まったばかりだった。
扉を開けるための三つの試練。それは、僕たちにとって、想像を絶する困難なものになるだろう。
しかし、僕は諦めない。リリアと共に、どんな困難も乗り越えてみせる。そして、必ず「決して破られない魔法」の真実に辿り着いてみせる。
僕たちの冒険は、まだ始まったばかりだ。
(続く)