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第1話:魔法学院の落ちこぼれ

魔法が科学のように体系化された世界、アストラリア。人々は生まれながらに魔法の才能を持ち、その力は生活のあらゆる場面で活用されていた。そんな魔法が息づく世界で、僕は落ちこぼれと呼ばれていた。

「ユート、また魔法の制御に失敗したのか?」

冷たい視線と共に、僕に向けられたのは、爆発で煤だらけになった実験器具の残骸。魔法学院の講師、ゼノンの声が、僕の耳に突き刺さる。

「すみません、先生。もう少しで制御できると思ったんですが……」

「言い訳はいい。君のような才能のない人間が、この学院にいる意味はない」

ゼノンは吐き捨てるように言い、背を向けて去っていく。周りの生徒たちからは、嘲笑と軽蔑の視線が向けられた。僕はただ、俯いて耐えることしかできない。

僕、ユート・ストラウスは、アストラリア王国の片田舎にある小さな村で生まれた。物心ついた時から、魔法というものが大好きだった。夜空に輝く星々、風に揺れる木々、全てが魔法の力で成り立っているように思えた。

いつか、誰も見たことのない、どんな困難も打ち破る、そんな究極の魔法を生み出したい。それが、僕の夢だった。

しかし、現実は甘くない。魔法学院に入学して三年、僕は一度も魔法を成功させたことがなかった。他の生徒たちが難なくこなす魔法の制御も、僕にとっては至難の業。才能の差を、まざまざと見せつけられる日々。

(どうして、僕は魔法が使えないんだろう……)

誰もいない学院の図書館で、僕は一人、古びた魔法書を広げていた。そこには、古代の魔法や、失われた魔法についての記述があった。

「ユート、こんなところで何をしているんだ?」

背後から声をかけてきたのは、幼馴染のリリアだった。彼女は僕とは対照的に、優秀な魔法使いとして学院でも一目置かれる存在だ。

「ちょっと、昔の魔法について調べてたんだ」

「またそんなこと言って。ユートはいつも、現実味のないことばかり考えているんだから」

リリアは呆れたように言うが、その言葉には優しさが込められていた。

「でも、僕は諦めたくないんだ。いつか、誰も見たことのない、すごい魔法を生み出して、みんなを驚かせてみせる」

「ユート……」

リリアは僕の言葉に、少しだけ心を動かされたようだった。その時、僕の手元の魔法書が、微かに光を放った。

「あれ?」

僕とリリアは、思わず顔を見合わせた。魔法書に書かれていた文字が、まるで生きているかのように、ゆっくりと形を変えていく。そして、現れたのは、見たこともない複雑な魔法陣だった。

「これは……?」

僕が魔法陣に手を触れた瞬間、眩い光が図書館全体を包み込んだ。そして、僕たちの意識は、暗闇の中に吸い込まれていった。

次に僕が目を覚ました時、そこは見慣れない場所だった。高い天井、石造りの壁、そして、ひんやりとした空気。まるで、古代の遺跡の中にいるかのようだった。

「ここは……?」

リリアも目を覚まし、辺りを見回している。僕たちは、一体どこに飛ばされてしまったのだろうか?そして、あの魔法陣は何だったのだろうか?

僕の胸の高鳴りが、止まらなかった。もしかしたら、この場所に、僕が探し求めていた「決して破られない魔法」のヒントがあるのかもしれない。

そんな予感を胸に、僕たちは遺跡の奥へと足を踏み出した。

(続く)


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