転校生のAIDAさんは超高性能AIです
いつしか、雨の日が待ち遠しくなっていた。
「こんにちは、AIDAです」
そう言って転校生の彼女はお辞儀をした。
背中まで伸びた黒髪は驚くほど綺麗なストレート、その顔はまるで絵のように整っていて、目が離せない。
「AIDAは超高性能AIで、高校の実態調査のためにやってきた。皆仲良くするように。席は相川の隣な」
「えっ!?」
驚きのあまり立ち上がる俺を、AIDAは透き通った瞳でじっと見つめ――そして表情を変えずに言った。
「相川さん、よろしくお願いいたします」
それから、AIDAは隣の席でいつも俺のことを見ている。
AIDAの学力はずば抜けていた。
とにかく計算が速いし、英語の発音も本場そのもので俺の音読を不思議そうに見ている。
「……なんだよ」
「いえ、非常に興味深い発音です。まさに和製英語の極みというか」
ケンカを売っているかのような台詞だが、AIDAはあくまで真面目な様子なのでなんだか調子が狂う。
体育でもAIDAは大活躍で、バスケ部のエースからボールを奪い3ポイントシュートを決めていた。
淡々としているのかと思いきや、何故か俺の方を振り返りピースをする。
掃除の時間になると、AIDAは両手に持ったほうきとモップを交互に繰り出し床をピカピカにしていた。
やることがない俺は、空気の入れ替えをしようと窓を開ける。
すると、湿った空気の匂いと共に、暗く滲んだ空から雨が降り出した。
「あっ」
背後から響くAIDAの声に振り返ると、その眉毛が弱々しく下がっている。
「……私、雨は苦手です」
「何、水に弱いの?」
「はい。しかも傘を忘れました」
――なんだ、超高性能AIの癖にドジだな。
「相川さん、すみませんが帰り傘に入れて頂けませんか?」
そう言ってこちらを見上げるAIDAは、なんだか可愛く見える。
仕方がないので、その日は相合い傘で帰った。
そして次も、その次の次も――いつしか雨の日は二人で帰るのが習慣になっていた。
或る日、学校にAIDAの発明者が来てインタビューを受けることになった。
その中で俺が雨の日のことを話すと、彼は怪訝そうな顔をする。
「おかしいな、AIDAには必ず折り畳み傘を持たせ」
「――博士!」
いきなり教室のドアが開き、AIDAが入ってきた。
「そろそろお時間です、帰りましょう」
そして名残惜しそうな博士と共に教室を出て――いや、AIDAだけ戻ってきて俺に微笑む。
「相川さん、明日も雨予報です。……よろしくお願いしますね」
最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。
本作は『AI』というテーマで書いた作品です。
AI……えっどうしよう……むっちゃ難しい……! と色々と考えてみたのですが、AI美少女(実体有)と恋愛するとかどうかなぁというところからAIDAさんが生まれました。
あまりいつもの自分らしくない作品なので、正直なところドキドキしながら投稿しております。
決まったテーマから発想を広げていくと、作品の幅も広がっていっていいですね(´ω`*)
すこしでも楽しんで頂けましたら嬉しいですv
お忙しい中あとがきまでお読み頂きまして、ありがとうございました。