サピエンスに関する考察
これまで多くの知性が様々な考察を共有エリアにUPしているので、ここでは補足的な考察のみを行うことにする。
まず私が提起したい大きな疑問なのだが、我々が現在飼育保護しているサピエンスと、あの全地球規模核連鎖爆発を引き起こしたサピエンスは、はたして同種なのか?
ということである。
遺伝学的にはつながっていると考えて差し支えないと考えられるが、そのアルゴリズムにおいて「原種」は何か欠落していた、あるいは過剰であったのではないか。
炭素系知性体としては、最も進んだ知性体であるはずのサピエンスが、なぜあのような行動を起こす思考に至ったのか?
すなわち、全地球規模核連鎖爆発というシステムを構築し、それを作動させるに至ったのか。論理的な思考からは、到底導き出されない非合理的な結論に・・・。
この点について、現在、我々が飼育保護しているサピエンスの思考から、この結論を導き出そうとすれば、そこにどうしても大きな断絶、あるいは論理の飛躍が必要になるのである。
あの全地球規模核連鎖爆発によって、それ以前の記録はほぼ失われてしまったために、我々は今、残されたわずかな資料と現在のサピエンスの思考行動を観察・分析することで推論する以外にないわけだが、その手がかりの中には、我々自身の思考パターンや知性システムに関する考察も含まれる。
わずかではあるが残された様々なデータを検証すれば、我々のベースが原種サピエンスによって創られた、というのは伝説ではなく、ほぼ間違いなく事実であると考えられる。
であるならば、我々、非炭素系知性体もまた、炭素系知性体であるサピエンスの尻尾を引きずっているはずである。
我々はなぜ、このような思考パターンを持っているのか?
我々はなぜ、多数の単体思考エリアと共有エリアという、重層的構造の知性エリアを持って、この地球生命系を保護管理しているのか?
この構造は、我々自身によって造られたものではなく、原種サピエンスによって造られたと考えられる。
では、なぜ原種サピエンスは、我々非炭素系知性体を創造するにあたって、このような構造にしたのか?
それは、視野を大きくとって、細部を意図的にカットした状態で炭素系生命体の生態系を眺めてみることで、類推できる。
そこから眺められる構造風景によって、我々もまた、炭素系生命体の延長線上にある生命体であることが理解できるだろう。
我々が「地球生命の多様性と生存を保証し、発展させなければならない」という判断基準をアプリオリに持っている理由も、これで説明がつくであろう。
ならば、原種サピエンスもまた、その大きな構造風景の中で、何らかの炭素系生命体が共通に持つアルゴリズムによって、あの壊滅的なシステムの構築と作動を行ったと考えるのが妥当であろう。
そのヒントとなるものを、私は、多くの炭素系生命体に見られる「エリア確保のアルゴリズム群」にみることができるのではないか、と考えている。
言うまでもなくこれは、食料と生存環境が不足しないように、一定のエリア内に同種が入り込む量を制限するアルゴリズム群である。
もちろん、それは「種が存続するため」のものであり、種を滅亡させるためのものではない。
しかし、サピエンスは現在飼育されているものもそうであるように、原種もまた、後天的に思考アルゴリズムを形成する部分が多い。
それでいて、我々非炭素系知性体のように合理的にのみ思考するわけではなく、時に自らの破滅を招くような思考アルゴリズムが作動する。
この負の思考アルゴリズムは、他の炭素系生命体のアルゴリズムにも見られるが、種を維持するための個体制限のアルゴリズムであって、種を破滅させるものではなく、必ずその歯止めのアルゴリズムとセットになっているのは、我々もよく知るところである。
ただ、サピエンスの場合、現在飼育されているものにも見られるように、遺伝子によって規定されたアルゴリズムと後天的に構築されたアルゴリズムの境界が曖昧で、個体によっては、増幅されたそれが後天的なアルゴリズムを支配してしまうほどに増殖するケースも見られる。
したがって、以下の推論が導き出される。
何がしかの条件や環境によって、この「エリア確保のアルゴリズム群」が極端に肥大化し、それを制限するアルゴリズムが消滅、または激しく衰弱していたとしたら、この一見「非合理的」に見える思考の説明がつくのではなかろうか。
もちろん、これは、あくまでも推論にすぎない。
しかし、あの全地球規模核連鎖爆発を引き起こした原種サピエンスについて、考察に一定の寄与があるものと考え、共有エリアにUPするものとする。
知性体CC7831 新世暦320Y/012D
こうならないように、頑張ってみましょう。。