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第1話-2

注射針は、優記の右手の甲に突き刺さった。ケニーからタメ息が漏れる。

「やってしまいました。あなたがあんまりも うるさく喚く動くものだから、変な場所に刺してしまいました。でもまぁ、腕でも手の甲でも何処でも一緒でしょうかねぇ。」

そう言うと、ゆっくり中身を優記の体に注ぎ込む。

「あっ・・・あっ・・・あっ・・・」

痛い。叫びたくなるほどの苦痛が優紀を襲う。

痛みや恐怖なら、イジメで嫌というほど味わった。耐え切れないほど我慢した。なのに、優記の瞳からは悲しみの涙が零れ落ちた。

(あつい。くるしい。息が出来ない。どぎれどぎれ息をするのが、精一杯だ。)

【カラン コロン】

注射器が床に落ちた。肉片は全て、優記の体の中に入っていた。

「さて、どんな反応が起きるんでしょうかねぇ。」

ケニーが満面の笑みで実験台(モルモット)観察する。

優紀は体が熱くなり、思わず目を閉じた。

(はっ・・・はっ・・・。苦しいよ。・・・何?・・・・・・体が熱い、体が痛い・・・やばい・・・頭痛が・・・目まいが・・・吐き気が・・・・・・)

【ドカーーン!!!】

次の瞬間、けたたましい爆発音とともに一瞬で部屋中が光に包まれた。


「きゃー!!」

まだ爆音の余韻が残る中、優紀は爆風で吹き飛ばされて地面に叩きつけられた。

煙が徐々に晴れて視界が戻る。

「・・・・・。」

優記がゆっくりと起き上がった。何が起きたのか分からず、ただただ右足に激痛が走った。

「痛い。」

右足の上に大きなコンクリートの塊がのっていた。急いでどかそうとして、手錠の鎖が両方とも切れていることに気づいた。周りを見回すと、テーブル、カプセル、試験管、壁・・・部屋中が所々に壊れていた。そして、目の前には瓦礫の山に埋まったケニーの姿が!!

ケニーは天井からの大きな壁の瓦礫によって、体の半分が埋まっていた。

「逃げなきゃ。」

ゆっくりと、両手両腕を軽く動かしてみる。

(動いた。まだ生きてる。でも、ここにいたら殺される。)

優記は右足にのったコンクリートの塊を取り除いた。そして急いで奥の部屋へと走った。

「くそが・・・」

優紀の去り際、ケニーの口が開いた。

「くそやろう!!!だから嫌いなんだよ、こんな世の中。」

ケニーの目には今までにない程の怒りが滲み、遠くなった優記の後姿を睨みつけた。

「絶対に逃がしませんよ、清龍。そしてあのクソ女。見つけたら八つ裂きにしてくれるわ!!!」



「はぁ。はぁ。はぁ。」

当たり前だが、息がまだ荒い。意識も朦朧とするし吐き気もする。手の甲までなんだか熱い気がする。

だるい。苦しい。辛い。最悪。優記はありとあらゆる最悪の場面での感情を心の中で繰り返した。それでも、足を引きずりながら懸命に部屋から部屋へと彷徨っていた。迷路のように広い研究所から一刻も早く家に戻る為に。

「どこに行くつもりなんですかねぇ。」

いきなり声がして後ろを振り返る。すると、数十メートル後にケニーの姿が見えた。通路の真ん中でたたずみ、優記のひきずる右足を見据えていた。

「なんて醜いんでしょうねぇ。一度は自分からその命を投げ出しておいて、なおも必死で生き永らえようとする。そんなあなたに、もう1度この世を生きる資格なんてないはずでしょう。」

そしてケニーは蔑むように言い放った。

「あなたには、あの世がお似合いなんですよ。」


優紀は首を横に振った。

「例えそうだとしても、私は帰るんだ。」

「可笑しなことを言う方ですね。

あなたの帰る場所なんて何処にもないはずだ。さぁ、早く戻っておいで。そうすれば実験台(モルモット)として、一生可愛がってあげますからねぇ。」

ケニーが両手を広げ、そして吠える。

「さぁ、さぁ、さぁー!!!」

その声を同時に、ケニーに背を向け全力疾走で走り出した。

「あんの クソ女がぁ~!!!」

ケニーの顔がみるみるうちに真っ赤に染まる姿が優紀の頭に浮かんだ。【ドス ドス ドス】という足音が優紀を背後から追いかける。

「確かに私の帰る場所なんてない。」

足を引きずりながらも走る優記の脳裏に、学校のクラスメイトや酒におぼれる父親の姿。それに 何を言っても聞く耳持たない担任教師や、ずっと親友だと思っていたのに 突然裏切られた幼馴染の姿が浮かぶ。

「でも、それでもわたしはまだ、まだ生きたいんだ!」

そう叫んだ優紀の瞳から、自然と涙が溢れる。

不思議だな――と、優記は思う。学校や家で嫌なことがあったり、思い通りにいかなかった時には「死にたい、死にたい」って心で唱えると気持ちが楽になった。でも今は違う。「生きたい、もっと生きたい」って心の中で叫ぶと、なんだかパワーが湧いてくる。そして何より、「絶対に死にたくない!!!」

―じゃあ、戦いなよ―

「っ!?」

―逃げてばかりじゃ始まらないよ―

優記は立ち止まって辺りを見回した。誰?ケニーの声じゃない。もっと若くてキレイな声が、耳からというより直接 脳に聞こえてくる。

【ガシャン】

物音に驚き振り返ると、ケニーが全力疾走で追いかけてきていた。このままだと確実に追いつかれる。やばい――、そう思ってまた走り出そうとした瞬間、

―また逃げるの?―

優記はまた辺りを見渡し、どこにいるかも分からない声の主に問いかけた。

「誰なの?」

―逃げてるだけじゃ、何の解決にもならないよ。時として人は、立ち向かわなきゃいけないんだ。立ち向かって自分の居場所を勝ち取らなくちゃ―

「戦って、勝ち取る?」

『戦う』『勝ち取る』。それは優記には無縁の言葉だった。その言葉を、優記は心の中で繰り返してみる。

(戦って、勝ち取る。)



「お前の席はここには無いんだよっ。」

1人の男子が笑いながら言った。私の机がなくなっている。あたりを見回してもない。ベランダを見ると私の机が無残に転がっていた。私はそれを1人で教室の中に入れる。「はっはっはっ!!!」男子の笑い声が聞こえる。「クスクスクス・・・」女子の潜めるような嘲笑も聞こえる。しかし、誰も目を合わせてくれない。ただ、嘲るような笑い声だけが聞こえる――。


「いじめられてる?そんなバカな!」

担任の先生が大げさに驚いて言った。「何かの間違いだろ。」「うちのクラスにはそんなやついないだろ。」「う~ん・・・でもなぁ。証拠もないのに決め付けるのは。」「1回よく話し合ってみたらどうだ。」そして、最後は結局ここにたどり着く。「もしかしたらお前にも原因があるんじゃないのか?それに、お前ちょっと暗いぞ。もっと積極的にクラスの中に――」意味のない言葉がますます私を悲しませる。


「学校へ行きたくないだぁ?・・・お前なんかどっか行っちまえ!!」

夕飯の場で父親が怒鳴る。「俺が、どんだけ苦労してお前の学費を稼いでると思ってるんだ!それなのにその苦労を無駄にしやがって!」父親の拳骨(ゲンコツ)が飛ぶ。母さんが必死に私をかばう。でも――。「お前なんかクズだ。どこでも、好きなところにいちまえ!そしたらもっと家計も楽になって、お前の弟だってこうぇらんヴぁふいえ」父親の怒鳴り声は途中から変な呪文に変わる。お酒のせいだ。そう思う。



誰かに助けを求めてばかり。そんなことわかってる。だけど、誰かが困ってたら助けるのが普通だろ!!って、みんなを恨んで軽蔑してた。けど、わたしは何かやった?私自身、ただ助けを求めただけ。子どもだから、大人に助けられるのが当たり前だと思って、守られるのが当たり前だって思って、助けられるのを待つだけだった。傷つくのが恐い・・・だから逃げる。でも、戦ったら・・・もしわたしの意志で、わたしの力で戦ってみたら、戦えたら・・・今のこの状況を打破できるのだろうか――。



「いじめなんてしやがって、この卑怯者!!男なら正々堂々、1対1でかかってこいよ!」

笑いこける男子に言い放った。

「それでも教師か!人が困ってるのにそれを助けようとしないなんて、あんたなんかに教わることは何もない!もっとちゃんと生徒を見ろよ!!」

くどくどと、訳のわからない説教ばかりする担任に言った。

「それでも親か!いつも酒を飲んで、酔いつぶれて母さんに迷惑ばかりかけて。親だったら、子どもの手本になるような努力をしろよ!!!」

ロレツの回らなくなった父親に叫んだ。そして――。



優記は目の前を真っ直ぐに前を見つめた。その瞳に逃げ道は写っていない。

ただ、全力疾走で走る怪物の姿だけが写っていた。ケニーは顔を紅潮させ、右手にはいつ持ったのか分からない1mほどの巨大な斧を持っている。一瞬優紀の足がすくんだ。体が震えた。胃が痛い。心臓が破裂しそう。だけど、だけど・・・。優紀はもう1回強くケニーを睨む。ケニーは優記の数メートル前で失速し、そして立ち止まった。

「やっと諦めたのでしょうかね。それともその顔・・・まさか、たかが人間の小娘がわたくし相手に勝てるとでも御思いなのでしょうかねぇ。武器も何にももってないのに。さては頭でも打ったんでしょうねぇ。」

息を切らしながらケニーが嘲笑った。しかし瞳の奥は烈火のように燃え、眼球は優紀を睨んで離さない。そして、長く鋭い斧を振りかざして、一直線に優記に突っ込んできた。

「わたしは――」

優記の右手の甲が光った。

「わたしは――」

クモ男が近づいてくる。

「わたしは――」

優記の顔の2倍はあるであろう刃先をつけた斧が振り上げられた。

「わたしは――」

「お死になさい。」

巨大な斧が、優記めがけて振り下ろされた。鋭く尖った先端が、優紀の頭上目掛けて進んでくる。

「わたしは、絶対に逃げない!!!」

【ズシャ!!!】

マンガの中ならば、背景にそんな文字がでかでかと貼り付けられるだろう。優記の瞳には、おびただしい量の“緑色”の血が噴射するのが映った。

「わたし――」

優記は自分の目を疑った。自分の右腕と手首が 想像で描いていた清龍の鍵詰めそっくりに変形していた。そして、鍵詰めの中央にはくっきりと光り輝く龍の紋章が刻まれていた。

「わたし、戦ったんだよね。」

そう呟くと、優記は静かに目を閉じ地面に倒れこんだ。



「本当にこれでよろしかったのでしょうか?」

摩天楼と呼ぶに相応しい高層ビルが立ち並ぶ上空で、美しく綺麗で背の高い女性が問いかけた。その女性の隣には、一人の少年が立っていた。その少年の右手の甲は夜だというのに辺り一面を十分に照らす程の光を放っている。そしてその光は、やがてロウソクの炎のように すっと消えてしまった。

「どういう意味だい?」

少年が女性に問う。少年は 頭からすっぽりとフードをかぶっており、口と鼻を布で覆い隠している。外見から判断できるのは黒く光る両目と、細く整った両手だけだった。

「私には少し、遠回りのような気がしますが?」

女性の言葉に少年は微笑した。

「そうかもしれない。やっぱりマナリアスは頭がいいね。でも、それがいいんだよ。わかるかい?」

マナリアスは首を横に振った。それをみて、少年が言葉を続ける。

「ボクは嬉しいよ。やっと、やっとこの壊れた世界が動き出すんだからね。」

そう言い少年は星空が煌く夜空を見上げた。フードの下に隠れた顔が笑っているのか嘆いているのか、それはマナリアスにも分からなかった。しかし、“この壊れた世界が動き出す”。それだけはマナリアスにも分かった――。

初めて自分以外の人に読んでもらうので、とても緊張しています。長々と書いてしまいましたが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。ストーリーは少女が異世界に迷い込み、元の世界に戻る為に旅をするという割りと横道な感じです。途中 優記と同じような朱雀、玄武、白虎使いが出てきたり、清龍を狙う敵が出てきたりします。今回は1話だけですが。

最近書き始めたばかりのド素人ですので、ぜひ皆さんの意見を参考にさせていただきたいです。感想などもいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。

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