掌ですくいあげた物語15 ~ひとり劇場~
今日は朝からラーメンの口になっていた
昼を待ってそそくさと 気に入っているラーメン屋さんへ急いだ
ところがどうだ
店の入り口には 《臨時休業》の貼り紙
「どういうことだよ!」 こころの中で叫ぶ
「なにかやろうとすると いつもこうなんだ!」
貼り紙を破り捨てたい衝動に駆られた
積み重ねてきた自分の不運を一気に掻き集めた怒りと嘆き
見えないアッパーカットやボディブローを自分に向けてくり出し
もういちど貼り紙を確認すると ため息が出た
別にここのラーメンじゃなくてもイイや と ひとり大物ぶりを演じて 立ち去った
コンビニでカップラーメンとおにぎりを買って食べる
臨時休業になっている ただそれだけの現実
これはぼくの ひとり激情
* * *
翌日 いつものコンビニへ朝の缶コーヒーを買いに寄ったら
レジにいっぱいの人が並んでいたので 店内には入らず
先に銀行へ行って 家賃を振り込むことにした
2台あるATMには 誰もいなかった
家賃を振り込み ATMを離れて うしろをふり返ったら
5人も並んで待っていた
ふたたびコンビニへ行く
レジには もう誰もいなくなっていた
缶コーヒーを持ってレジの前へ
すぐに精算は終わり 店を出た
今日は何かいいことありそうだ
ああ空が青い
なぜかこころが軽かった
ふと歩く足が止まって・・・笑いが込み上げてきた
こんなにどうでもいいことが ラッキーだとよろこべるほど
思いどおりにいかない現実を こんなにも深く
選び取っていたんだってことに 気がついた