第3部29話 祝勝会
「やっこちゃーーん、無事か!?」
「びええええっ、皆さん、私が不甲斐ないばかりにすみませんでしたー!」
私とシュシュがやっこちゃんを連れて砂楼都市アルカディアの商店街に戻ると、リスポーンした華麗なる聖宴の面々が待ち受けていた。泣きじゃくるやっこちゃんをカルネがよしよししている。
「シュシュの旦那、ありがとうな?」
ガウスがそう言って頭を下げた。
「問題ない。各々が自らの利権のために動いた結果に過ぎない……」
「また~そんな冷めたこと言ってるけど、しっかり聞いてたんだからな?」
「な、何をだね?」
「”彼女には指一本触れさせるものかっ”」
ガウスがシュシュの耳元でそう囁くと、シュシュの顔はみるみる真っ赤になっていく。
「な、ななな、何のことだね?」
「とぼけたって無駄だぜ、シュシュの旦那? しっかり録画もしておいたぜ?」
「な、ななな、なにをおおおおお!?」
発狂し始めるシュシュ。ただの中二病なんだから、どうどうと中二病をまっとうすればいいのにねー。
「シャレさんもありがとうございました」
「シャレさんがいなかったら、クエストのクリアなんてできなかったよー」
ビンセントとカルネがそう言った。
「いいってことよ! でも、エクストラクエストを受けた華麗なる聖宴が全滅したから、クエスト自体は失敗に終わったんでしょ?」
「そうね、制限時間オーバー……。でも、やっこちゃんを奪還できたんだから、クリアしたも同然でしょっ?」
「うんっ、そうだね! そしたら祝勝会しようかっ!」
「「よっしゃあああ!」」
待ってましたとばかりにガッツポーズする華麗なる聖宴の面々。私が屋台を出すと同時にカウンターに陣どった。つくづく酒飲みだなあ。
「「駄洒落エールで乾杯だあああ!」」
酒を配るとすぐにお祭り騒ぎが始まった。
「給仕の娘よ、わしには”ゲキアマミルクティー”を寄こすのじゃ」
「おじいちゃん、甘すぎっていってなかったっけ?」
「今思い返してみれば、癖になる味じゃった……。この乳も少々小ぶりじゃが、思い返してみればなかなか趣きが……」
そういってやっこちゃんに抱きつくおじいちゃん。
「――びええええ、このおじいちゃんに胸さわられましたあああ」
「はよ、アイテムに戻れや、くそじじい!」
「ひょほおおお! わしには24時間の時間制限など存在せんのじゃ!」
「どこかに命を吹き込むんじゃなくて、吸いだすアイテムはないもんかな……。セクハラの被害が拡大する前に……」
「おじいちゃんは元気アルねー」
「そういえばパンダ。あんたは呑気にポテチ食ってるけど、制限時間が近いんじゃないの?」
「さっき、おじいちゃんに制限時間を解除してもらったアルヨ」
「なんでもありだなあ……」
「ところで、ワイにも飲み物をくれるアルか? 解毒作用のある飲み物がいいアル……。さっきから体が動かないアルヨ」
「また麻痺ってるんかいっ!」
そんなどんちゃん騒ぎをしていると、遅れてきたドラゴン氏とアイリッヒがなにやら言い争っている。
「何を言っておる!? 姐さんと寝床を共にするのは我に決まっておろう!?」
「片腹痛いですわあ。老龍とはいえ男性を姐さんの隣に置いておくなんてもってのほか! わたくしが徹夜で傍らから見守って差し上げますわあ」
「貴様、隙あれば姐さんの尻の技量を推し量ろうというのだろう!? 邪悪な魂胆がみえみえであるぞ!?」
「そんなことありませんわあ! 美麗な尻の長期的かつ、安定的な保全。これこそがわたくしに課せられた使命ですの! 純粋無垢で尻想いな心しかありませんわあ」
いがみ合うふたり。その姿を目撃した華麗なる聖宴の面々が目を見開いた。
「なぜ、ド変態ロリータがここに!?」
「ああ、ゴメン、言ってなかったよね? 仲間にしたんだ」
「「はあああああああ!?」」
皆、あんぐりと口を開けた。
「ボスをテイムできるなんて話、聞いたことないんだけど……」
「まあ、シャレさんだからね……」
「”シャレさんだから”。ああ、納得だ」
アイリッヒは華麗なる聖宴の面々に目を向ける。
「あら、Cランクのゴミ尻とそのお仲間の虫けらのみなさん、ごきげんよう?」
「ご、ゴミ尻ですって!? 私のお尻のどこがゴミなの!? 言ってみなさいよ!?」
「左右で異なる大きさ、山のない平野のような表面、厚みの不足、どれをとってもゴミの要素しかなくってよ?」
「殺す! 殺す!」
「みんな、やめなさいよっ! 祝勝会なんだからっ!」
「我は久々に業火酒を所望するぞー!」
「店主、ワイにまた解毒薬をー」
「はいはい、乾杯、乾杯っ!」
今日の宴会は随分とキャラが濃いメンバーが集まったなあ。
結論:カルネのお尻はCランク




