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第3部24話 深淵の間

 ”魔王の間”にあったのは空白の王座だった。王座には淫魔を模した彫刻が施され、美しさを際立たせている。


「ここにはユニークモンスター“(いん)の魔王シュレディンガー“が王座を守ったが、既に討伐されている。今では空白の王座が存在するだけだ」


 シュシュがそう解説した。


「さてと……」


 私の腰を掴んでいたはずのおじいちゃんの手がいつの間にか胸に移動している。 


「いつまで掴んでんのよっ!」


 私はおじいちゃんをパンダから蹴落とした。


「ふげっ!?」

「さあ、おじいちゃんの出番だよ? これで何もなかったら、その白装束を血染めしてクリスマスにしか出てこれないようにしてあげるからね?」

「ひいいい、そ、それでは儀式を始めようかのう」


 おじいちゃんは、早速《命を吹き込む大綱ブリスフロップ》の能力を発動した。


「命を吹き込む対象はこの彫刻じゃっ!」


 淫魔を形どった彫刻は命を吹き込まれて動き出した。なるほど、淫魔がいないなら生み出せばいいってことね! その考えはなかった!


「おじいちゃん、また来たの? 物好きだねえ、アイリッヒさまも物好きだけど、おじいちゃんもよっぽどだね?」

「こ、こらっ、いらんことを言うでないっ! はよ、開けるのじゃっ!」

「どうしようなあ。今日は気乗りしないし、やめておこうかなあ。甘いものがあれば考えてもいいんだけどなあ」

「……給仕の娘よ、この淫魔に”げきあまみるくてぃー”とやらをくれてやるのじゃ」

「あいよ」

「ふーん、いつもくれる甘いお水とは違うのね。どれどれ……。わあっ、甘いっ、おいしっ。なにこれ、私こんなの初めて飲んだ~」


 淫魔はあっという間に一本飲み干し、物欲しそうな表情を見せる。


「気に入ったの? それじゃあ、たくさん渡しておくねっ!」

「わあ、ありがとう~! 幸せ~!」

「ほれ、さっさと、”深淵の間”への扉を開けるのじゃっ」

「はーい、“深淵の間“の入り口はこちらですよ〜」


 そう言って淫魔が指し示したのは、王座のあった真下の床だった。


「【開けゴマ】」


 淫魔がそう唱えると床に階段が現れる。


「いってらっしゃいませ〜」


 笑顔で手を振る淫魔に手を振りかえす華麗なる聖宴+パンダ。ダンジョンの未開拓エリアに向かうパーティーにはまったく見えなかった。


 階段を降りた先は、天井の高い大広間。そして、その奥には漆黒の大椅子。そこにちょこんと腰掛ける形で、例の少女が座っている。


 その足元にはやっこちゃんが縛り上げられた状態で転がっていた。少女に向かってお尻を突き出す形で屈辱的な体勢を取らされている。その双丘に少女は片足ずつ置き、やっこちゃんのお尻をまるでフットレストのように使っている。


「ああ、総合Aランクのフットレストは最高ですわあ。癒されますわあ」


 少女はそう言って足をパタパタさせた。


「この弾力がたまらないのですわあ。弾力Aランクでないと出ない反発力! 素晴らしいわあ」


 そういって少女はうっとりと足を預けた。


「びえええっ、家具ってこういうことですか!? やめてください〜」


 やっこちゃんの声がこだまする。すると、少女は、眉をひそめた。


「騒がしいフットレストですわねえ」


 少女は椅子から降りて、やっこちゃんのアゴを掴んで無理やり面を上げさせた。


「フットレストとしての(しつけ)がなってないですわ。一から叩き込んであげるから覚悟しなさい?」

「――やっこちゃん!」


 私は思わず声を上げた。


「あら、どちらさまかしら?」


 少女はそう言って、私たちをギロリと睨んだ。


「びえええっ、みんな、助けに来てくれたんですか〜。ありがとうございます〜。この通り、家具扱いされてますが無事です〜」


 とりあえずやっこちゃんが無事でよかった。よからぬことはされてるみたいだけど、セーフ!? いや、これはアウトか!?


「ブリスフロップ、あなたの仕業ね? まさか、あなたもこの子が狙いなの?」

「ふんっ、まさか! そのゴミ乳には興味ないわいっ! 給仕の娘の乳の方がよっぽどいいわい!」


 そういっておじいちゃんは私の方を指さす。うわあ、セクハラが大炎上してるんですけどー。白装束を血染めするだけじゃ、気が済まない。確実に息の根を止めよう、そうしよう。


 一方、少女は私をゴミでも見るような目を向ける。


「そんなゴミ尻のどこが――」


 そこまで言って目を見開いた。


「か、形がSランク……!? そんな尻、今までどこにもなかったのですわあ……! あなた、そのお尻、至急、触診させてちょうだいっ!」

「え、やだよ」


 私の拒絶の言葉なんてなかったかのように、興奮した少女が猛進してくる。その時、シュシュが私の前に進み出た。


「そうはいかないよ。彼女には指一本触れさせるものかっ」

「邪魔するものは皆殺しですわあっ! 待ってらっしゃい、Sランク。すぐに私のヘッドレストにして、あげますわあ」


 こうして私たちは淫魔の王女アイリッヒとの戦闘に突入した。……なんつーエンカウントの仕方だよ。


玩具ではなく家具だから全然エロくない

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