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第3部23話 大量破壊兵器

 私たちはダンジョン”ピラミアックス”へと潜入。出現したアンデットをシュシュの魔法で焼却しながら先を急いだ。でも、ピラミアックス内部は石造りの通路が分岐を繰り返す迷宮。魔王の間は10階層に位置していて、辿り着くには相当な時間がかかるらしい。

 

「クエストの制限時間は残り5時間半。ピラミアックスはアンデットが大量に出現するダンジョンだ。アンデットは一度倒してもまた生き返る厄介な相手。迷宮で迷子になっていると、討伐したはずのアンデットに囲まれてしまう。さらに、ダンジョンの内部は絶えず形を変えていて、一度クリアした道筋をたどったとしても最深部へ辿り着けるわけだはない。クリアするためには、非常に消耗が激しく、かつ時間を要するダンジョンなのだよ。ボクが加勢したとしても間に合わない可能性が高い」


 シュシュはそうぼやいた。


「うーん、つまり、倒さずにその場に足止めして、最短ルートで駆け抜けるのがベストってこと?」

「まあ、そうなるな。しかし、拘束魔法で足止めしたとしても1分程度が限界だ。すぐに動き出してあとを追ってくるだろう」

「そうなの? これなら10分くらいはマヒるんだけど?」

「悪魔のポーションθ(シータ)……なんだいこれは?」


 【鑑定】すると、シュシュはわかりやすく二度見していた。


「状態異常(麻痺)、HP×0.1倍……。なんだこの悪魔のような効果は!?」

「私が作った出来損ないポーションのひとつだよ。これを相手にぶつけて、マヒってる間に先を急ぐことはできないかなーって」

「た、確かにこのポーションの効果は認めるが、アンデッドは1体や2体ではない。数百という単位で出現する。さすがに、そこまでの数は確保できないだろう」

「いくらでも作れるよー。【空きのない冷蔵庫】で」


 酒落店員はそういって、【空きのない冷蔵庫】でたちまち悪魔のポーションθ(シータ)を複製してみせた。


「三種の神器シリーズか!? まさにチート級のスキルだな……。【空きのない冷蔵庫】と【手軽にポーションづくりができるミキサー】で試行錯誤してできた強力な出来損ないポーションが薬使い(ポーションハンドラー)の力というわけか……」

「でも、わたし命中力が低くて、投げても全然当たらないんだよね。しかも、連射もできないし。この案はボツかなあ」

「ふむ……。”これ”を使ってみてはどうだろうか?」


 シュシュはそういって、アイテムボックスからロケットランチャーのような武器を取り出した。


「何その物騒なやつ……」

「ポーションランチャーXさ。本来は後方から離れたところにいる味方に対してポーションを発射して、回復支援するために使うのだが……」


アイテム名:ポーションランチャーX

レア度:  ★★☆☆☆

効果:   照準に入れた相手へポーションを届け、自動的にポーションを使用させる。

説明:   ポーションを遠くの味方に届けるためのランチャー。最大装填数100。


「お、よさそうじゃん、さんきゅー!」

「敵にも使用できるのかは未知数だ。無理を承知で試してみてくれたまえ」


 私はポーションランチャーXに弾(という名のポーション)を装填し、早速出現したアンデットに発射してみた。はずれ! 小癪(こしゃく)な……。こうなりゃ連射だ、連射。


 ドドドドッと《ポーションランチャーX》が景気よく火を噴く。そしてランチャーから発射された悪魔のポーションθ(シータ)が、次々にアンデットに当たり、マヒ状態へと陥らせる。もちろん外れる弾もあるが、数打ちゃ当たる仕様。ポーションランチャーは『ポーションを遠くの味方に届けるためのランチャー』と説明書きにあったのに、完全なる目的外利用だなあ。


「よしっ、効果てきめん!」

「敵にも使えるのだな……。ボクが提案しておいて何だが、想像以上の威力だ……」

「よしっ、パンダ、進むぞお! おじいちゃんも乗って! 変なとこ触ったら殺す!」

「了解アルヨ、店主」

「さ、触るわけないじゃろうて!」


 でも、出発しようとしたところで、シュシュに呼び止められてしまった。


「ま、待つんだ。道がわからないだろう? ここは慎重に分岐点で探索魔法を使用して――」

「いや、この方位磁石みたいなアイテムが道を教えてくれるから大丈夫!」

「《龍の羅針盤》!? そんなものまで入手したなんて、君はこの短い期間にいったい何を――いや、何でもない……」

「さあ、気を取り直していくよー! みんな脳死で後ろからついてきてねー!」

「「りょうかーい!」」


 出現したアンデットには容赦なくポーションの雨が浴びせられる。そして、マヒったアンデットたちはパンダの突進で跳ね飛ばされ、まるで除雪車に除雪された雪のように放物線を描いて脇へと吹き飛んでいく。


「いやあ、楽ちん楽ちん。さすがはシャレさん、ダンジョン攻略がはかどりますなあ」

「この調子なら、ピラミアックス攻略の最速タイムを更新できるんじゃない?」

「あの打ち出してるポーション、ワインの味するみたいですよ。早く飲んでみたいですねえ」


 と感想を述べる華麗なる聖宴のメンバー。


「ボクはこの世にとんでもない大量破壊兵器を生み出してしまったのではないか……。これはもはやダンジョン”攻略”ではない……。ただのダンジョン”行進”だ……」


 大袈裟だなあ。こちとらただポーション打ち出してるだけだっていうのにねー。


 ほどなく最下層の”魔王の間”へ到着すると、


『最下層到達タイムレコード更新! レコード更新ボーナスとして《無味無色のポーション》を獲得しました!』


 とウインドウが表示された。


アイテム名:無味無臭のポーション

レア度:  ★★★★⭐︎

効果:   すべてのバフ、デバフを解除する。

説明:   無味無臭無色透明なポーション。


 無味無臭かあ。お店で出せないし、いらねーーー。


これまでの最速レコードを3時間縮める快挙をひっそりと成し遂げたのであった。

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― 新着の感想 ―
それを捨てるだなんてもったいない このポーション性能はもちろん、お酒として嗜む時のチェイサーとしてピッタリじゃん! すっごく有用ですよシャレさん!
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