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第3部21話 攻略検討会

「受けます」

「え」


 男の同意の言葉を聞いた私は、肩透かしをくらった気分だった。こういう輩はプライドが高くて、私がクラン連合を負かしたときのことを根に持っているだろうと踏んでいた。だから、私が取引を提案したとしても、簡単には受けないだろうとたかをくくっていたこともある。あくまで、男を撃退するだけのパフォーマンスのつもり(実際イラついてはいたが)だったのだが。


「報酬の諸条件とやらは?」

「シャレさんに一任しよう」


 なんだこいつ。


「だが、ひとつだけ言わせてくれないかい?」

「なにさ?」

「ふたりきりになる機会をもらえないだろうか?」

「キモッ」


 あ、と思って手をふさいだがすでに男は青い顔をしていた。さすがに失礼か。いや、いきなりふたりきりになろうとするこいつが失礼だ。それにしても何用? 奴のにやけ面が生理的に無理。でもまあ、やっこちゃん救出のためだ。一肌脱ごう。こやつに悪魔のポーションしこたま飲ませてマヒらせれば、ギリギリふたりきりになれなくもない。


「――まあ、エクストラクエスト終わったらね」

「……わかった」


 こうして、プロペラー? プログラマー?が攻略部隊に加わったけど、後ろで一部始終を見ていた華麗なる聖宴+パンダは大騒ぎだった。


「ホントに”教授(プロフェッサー)”が私たちを手伝ってくれるの? きゃー!」


 黄色い悲鳴をあげたのは、乙女化したカルネだった。


「これでやっこちゃんの奪還も間違いなしだ! やっほー!!」


 駄洒落(だじゃれ)エール片手に騒ぎ始めるガウスとビンセント。おい、どこから持ってきたんだ、それ。てか、ここ酒場じゃなくてギルドハウスなんだから自重しろよな。


「よろしくアル、半裸の旦那。ワイはサラサラサ。全裸!のパンダさんアルヨ」


 そして、なぜか全裸を強調してマウントを取ろうとするパンダさん。


「あ、ああ、よろしく頼む。ボクのことはシュシュと呼んでくれたまえ」

「シュシュ……♡ きゃー!」


 カルネがそういって恥ずかしそうに両手で顔を覆った。中学生か、お前。でも、かわいいから許す。それにしてもこんな男のどこがいいんだ。半裸だぞ? しかも、私が視線を向けると、なんだかにやけた顔を向けてくる。しかもさっきから、ことあるごとにふたりきりになろうとしてくるし、はっきり言ってキモイ。もう一度言う、キモイ。


「それで、エクストラクエストの詳細について聞こうじゃないか?」

「よしっ、では簡単に!」


 そういってガウスは、これまでの経緯について語った。


「ふむ、淫魔族の残党か……」

「ああ、だからガウス様の名推理によると、”小人族の解放戦線”の舞台となったダンジョン”ピラミアックス”に未開拓エリアがあるのではって寸法よ!」

「なるほど。しかし、ピラミアックスは現役の中級ダンジョン。多くのプレイヤーが現在進行形で潜っているが未開拓エリアの報告は無い。しかも限られた時間の中で、未開拓エリアを探すとなると、勝算は薄いぞ」

「確かに……」


 名探偵ガウス様は途端に意気消沈した。


「ただし、これまでのグランドクエストの攻略を顧みると、やみくもに探せというストーリーは考えづらい。このようなケースでは、”小人族の解放戦線”クリア前後で何か変化点がないかを思い返してみるとよい」

「って言ってもなあ。俺らは実際にクエストに参加したわけでもないしなあ……あっ」


 ガウスは急に私に視線を向けた。


「シャレさんが取り返してくれた”命を吹き込む大綱ブリスフロップ”……!」

「ふむ、噂には聞いたことがあるが”小人族の解放戦線”の報酬のユニークアイテムか。このアイテムの効果はなんだい?」

「えっとー」


 私は白綱をアイテムボックスから取り出した。


アイテム名:命を吹き込む大綱ブリスフロップ

レア度:  ★★★★★

効果:   アイテムのNPC化。NPC化したアイテムは24時間で元に戻る。

説明:   1万人の小人族の髭を用いて作られた大綱。かつて淫魔族が奪った小人族の秘宝であり、命なき物体に命を吹き込むことができるといわれている。


「効果が特殊すぎて、使いどころがイマイチわからなかったんだよな」


 ガウスがそう付け加えた。


「他には類をみない効果が付与されているようだね。使用するとどうなるんだい?」

「ここにいるパンダみたいにやたら主張が強くなるんだよね」


 私はアゴでパンダを指した。


「ワイはパンダラの箱というアイテムだったパンダさんアルヨ」

「ふむ……」


 シュシュは腕を組み、なにやら考え込み始めた。


「ていうか、”NPC化したアイテムは24時間で元に戻る”ってことは、パンダ、あと少ししたら元に戻るんじゃない?」

「そうなのアルか!? 戻ったらまた命を吹き込んでほしいアル!」

「いい子にしてたらね!」

「店主、ポテチわけてあげるアル」

「ほほう、白昼堂々賄賂とはいい度胸……って毒入りじゃん、それっ!」


 シュシュが小さくせき払いをして、話の流れを元に戻した。


「今回のような場合、淫魔族がピラミアックスを支配していた当時に淫魔族が所持していたアイテムをNPC化することで、未開拓エリアに関する情報が得られる可能性はある」

「きゃー! さすが、教授(プロフェッサー)……頭脳明晰……!」

「でもそんなアイテムに心当たりはないなあ。ピラミアックスを攻略した先輩方に聞こうにも、ゲームを続けてる人はいないし……」


 ビンセントがうーんと唸った。


「あるではないか?」

「「え? どこに?」」


 皆、一斉に首をかしげる。その様子を見たシュシュは口元を釣り上げた。


シュシュは半裸だけど、腹筋われてる細マッチョだから見てくれは悪くない。

カルネは細マッチョ好きという設定をここで披露。

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