表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

64/77

第3部17話 エクストラクエスト

「パンダ、急げっ」

「ほんっっっっっとうにパンダ使いの荒い店主アル。」


 今日は何かと濡れる日だ。雨が急に降り出したから、私とパンダはずぶ濡れになってしまった。口の中に入る雨はほんのり甘い。なんだよ、甘さ控えめでヘルシーってか? 液体は出来損ないポーションの材料になるから一応確保だわ。


アイテム名:アルカディアの雨

レア度:  ★★★⭐︎⭐︎

効果:   精力向上

説明:   砂楼都市アルカディアで数年に1度だけ降る雨の雫。精力剤として使用される。


 うわあ、数年に一度ってすごく珍しくない? あーあ、そういう運はどうせなら宝くじとか、リアルの方で使いたかったわ。


 そんなどうでもいいことを考えていると、商店街に到着した。雨が降り出したのもあってか、辺りは閑散としている。そこには先ほどと打って変わって、物静かに鎮座している華麗なる酔っ払いどもの姿があった。


「おーい、みんな! 《命を吹き込む大綱ブリスフロップ》、とったど――ー!」

「あ、シャレさん。それはよかったです……」


 カルネが一瞥(いちべつ)し、そしてすぐにまたうつむいた。ビンセントとガウスは顔すら上げない。あれれ? 思った反応と違ってなんだか拍子抜けしちゃうなあ。


「……どうしたの? そういえば、やっこちゃんは?」

「実は――」


 私は美少女が突如として現れ、お尻を査定して合格したやっこちゃんをさらっていった話を聞いた。


「何そのツッコミどころ満載な状況……」

「うーん、俺らも最初、訳がわからなかったんだけど、これを見て少し謎が解けたんだよ」


 ガウスが指し示す先には暗がりで光るウインドウが表示されていた。


『エクストラクエスト 小人族の解放戦線〜誘惑の深淵〜 難易度:★★★★★ に参加しました。 クエスト完了までの制限時間残り11時間25分』


「エクストラクエスト!?」

「ああ、“小人族の解放戦線“は華麗なる聖宴の諸先輩方がクリアしたグランドクエストだ。もしかしたら、“小人族の解放戦線“をクリアしたクランが一定条件を満たすと発現するクエストなのかもしれん」

「急に雨が降りはじめたから、この雨もクエストの発現に関係しているアルか?」


 ガウスは深くうなずいた。


「ああ、間違いない。小人族が”雨が降ると甘い闇に連れ去られる”と言っていた。そしたら、急にあのド変態ロリータが現れたんだ」

「あと、やっこちゃんの、お、お尻もクエストの発現条件だったんじゃないかと、話していたんだよ」


 ビンセントが少し照れ気味にそうつぶやいた。


「雨と尻……。どんなクエストだよ……」

「みんな! 発現条件の特定よりも、今はさらわれたユイがどうなるか、よ!」

「ああ、カルネ。わかってるさ。おそらくだが、制限時間切れになればやっこちゃんは解放されるとは思う。ただ、それまでの間、あのど変態ロリータのおもちゃになると思うとゾッとするがな」

「何よ、助けに行かないの?」


 私は当然のごとく聞いた。


「あのなあ、難易度★5つのクエストだぞ? 俺らじゃ到底クリアできねえよ」

「制限時間が切れればやっこちゃんは解放されるんでしょ? なら、リスクゼロじゃない。それに、誰も助けに来てくれないなんて知ったら、やっこちゃん悲しむよ?」

「だがな……」

「あんたたちが行かないなら、私が助けに行くよ! パンダと一緒に!」

「ワイもあるか!?」


 素知らぬ顔で、屋台に残っていたポテチを漁っていたパンダが素っ頓狂な声をあげた。


「んああ、もうっ! わかったよ! シャレさんはクエスト受けてないんだから俺らがいないとクエストが進行すらしないぞ! カルネ、ビンセント、いいか?」

「もちろんだ! そうと決まれば、攻略部隊を編成しようじゃないか!」

「私は必要なアイテムをかき集めてみる!」

「俺は小人族のいう”甘い闇”について情報収集してみるぜ!」


 こうして、私は初のクエストに挑むことになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ