第3部15話 ソラマメシリーズ
パンダをマヒ状態から回復させると、地面にはシンギュラリティの死に体だけが残った。しかし、往生際が悪いことにどこにも《命を吹き込む大綱ブリスフロップ》は見当たらなかった。さては、アイテムボックスにしまい込んだな……。
「さあ、《命を吹き込む大綱ブリスフロップ》を返してもらおうか?」
「誰が返すものか、卑怯者! 奪えるものなら奪ってみろ!」
「どっちが卑怯者だよ……」
男の被害者ヅラにため息を吐いた。呆れてものも言えないとはこのことだ。
「ふんっ、いつまで待っても無駄なことだ。私が《命を吹き込む大綱ブリスフロップ》をアイテムボックスから取り出すことはない。そして、我々が身につけているアイテムを引き剥がそうとしたところで、装備を解除しなければアイテムを奪うことはできない。貴様らが我々からアイテムを奪うことなど不可能だ。ふははは!」
と、男は高らかに笑った。くっそー、マジでこいつ○していい? でも○したらリスポーンして、《命を吹き込む大綱ブリスフロップ》は回収できない。なんとかしてブリスフロップだけは回収しないと。回収するにはどうすれば――と、その時ふと、妙案が閃いた。私は早速スキル【いろいろときれいにする空気清浄機V2】を発動した。
「シュコオオオ……!」
きれいにする気満々な暗黒卿がうなりをあげる。
「な、なんだ、その妙なスキルは?」
暗黒卿の出現に動揺する男の姿に私はニヤリとした。
「暗黒卿なんて出してどうするつもりアルか?」
「まあ見てなって――それじゃ、暗黒卿! 早速綺麗にしちゃって!」
私の号令と共に、暗黒卿が男に近づき、赤ランプを点灯させた。
「シュゴオオオオ!!」
暗黒卿の標的は男が装備するライトグリーン基調の軽鎧だった。なんだかふっくらしたソラマメみたいで、ソラマメの炊き込みご飯が食べたいなあ、なんてどうでもいいことを考えていたら、暗黒卿に青ランプが灯る。終わったようだ。
「ふ、ふはははっ、俺は何ともないぞ? 驚かせやがって……」
「あんたは何ともないかもしれないけど、その鎧のほうはどうかな?」
「なんだと!?」
男の顔は見る見る真っ青になっていく。
アイテム名:スカイグリーンメイル → ソラマメの豆鎧
レア度: ★★★☆☆ → ☆☆☆☆☆
効果: 物理攻撃力 0
物理防御力+55 → 0
魔法攻撃力 0
魔法防御力+25 → 0
命中力+25 → 0
回避力+10 → 0
説明: ソラマメみたいだから、名前変えておいたよ♡
「なんだこれええええ!? 俺のスカイグリーンメイルがああああ!?」
男は目を見開き、顔をこわばらせた。
「さあ、もう一度聞くけど、《命を吹き込む大綱ブリスフロップ》を返す気にはなったかしら?」
「か、返さん。断じて返さんぞ……!」
「そっか。それじゃあお次は、その腰に下がってる剣を……」
「こ、こらっ! 俺のスカイグリーンソードに近寄るんじゃない! やめろ! やめろおおおおお!」
男の絶叫も虚しく、暗黒卿がまたもや良い仕事をしてくれた。
アイテム名:スカイグリーンソード → ソラマメの鞘剣
レア度: ★★★☆☆ → ☆☆☆☆☆
効果: 物理攻撃力 +85 → 0
物理防御力 0
魔法攻撃力 +23 → 0
魔法防御力+25 → 0
命中力+42 → 0
回避力 0
説明: ソラマメの鞘みたいで食欲をそそられる♡
「ぎゃあああ!! お願いだから、やめてくれえええ!! 頼むううう!!」
その後、ソラマメシリーズは第3弾までお披露目したところで、男がギブアップし、私は《命を吹き込む大綱ブリスフロップ》を回収に成功した。
「金輪際、他人に迷惑をかけちゃだめよ? わかった?」
「ゴメンナサイ、モウシマセン」
男は魂の抜けたような呆然とした表情で、力なく言ったのだった。さすがにちょっとやりすぎだったかな?
ソラマメシリーズ第三弾がなんだったのか、謎は深まるばかり。。。




