第3部13話 出来損ないポーション研究レポート その5
「ごめんアル〜、ムシャムシャ。もうしないアルヨ〜、ムシャムシャ。だからこの縄をほどくアル〜、ムシャムシャ」
「そんなこと言ってまた逃げるつもりでしょ?」
案の定、マヒったパンダをお縄にしてやった。縛り上げられているにもかかわらず、口だけ動かして野草を食べ続けてる。コノヤロー。
「店主、無一文のパンダさんを捕まえてどうする気アルか?」
「いや、開き直るなよ。さっさと毒草売っぱらってお金作ってきなさいよ」
「じゃあ聞くアルが、誰がこんな毒草を買ってくれるアルか?」
「……いないな。こんなの誰も食べないでしょ」
「そういうことアル。ワイの毒草が欲しいやつなんて自殺志願者しかいないアルヨ」
「さっきまで毒草食ってたあんたの口からそんな言葉が出てくるとは思わなかったよ……」
私はため息をついた。
「薬の材料とかにでも使えるんじゃないの?」
「何の薬アルカ?」
「いや知らんけどーーあっ、私のポーションの材料にしてみるかあ」
今まで《ツタヤカタグラの豆》とか、状態異常を引き起こすデバフ材料を使ったことはあったけど、HPが減る材料は使ったことないなあ。
「おいしいポーションができれば、許してやらないこともない」
「ホントアルか!?」
「うん。とりま、いろんな種類の毒草を出してくれるかしら?」
「まかせるアルッ!」
パンダが【毒草バイキング】を発動。すると、毒草がまるで手品のように次々と現れる。さっき見た《ユーカリの葉》《トリカブトの葉》《マンチニールの葉》に加えて、まだまだ出てくる。
アイテム名:ベラドンナの葉
レア度: ★★★☆☆
効果: 状態異常(混乱)、HP×0.8倍。
説明: 毒を含むベラドンナの葉(ポテチのりしお味)
アイテム名:水仙の葉
レア度: ★★★☆☆
効果: 状態異常(石化)、HP×0.6倍。
説明: 毒を含む水仙の葉(ポテチブラックペッパー味)
アイテム名:ダチュラの葉
レア度: ★★★☆☆
効果: 状態異常(呪い)、HP×0.8倍。
説明: 毒を含むダチュラの葉(ポテチコンソメ味)
全部ポテチやん。味はおいしいのに、総じて毒性があるあたり、運営の悪意を感じるよね。まあ、食べるときは暗黒卿に綺麗にしてもらうからいいけどさ。
よしっ、試しに《マンチニールの葉》を使ってポーションづくりを試してみよーっと。素材の味を活かすため、あえて【手軽にポーションづくりができるミキサー】で作ってみる。さらに、わかりづらいので、暗黒卿にアイテム名を変更してもらう作業も平行で進めよう。
アイテム名:悪魔のポーションω
レア度: ★★☆☆☆
効果: 状態異常(麻痺)、HP×0.1倍。
さあ、できたぞ。普通はHPを回復させるのが仕事のはずのポーションが、HPを下げてしまうという、悪魔のポーションの出来上がり……! おまけに状態異常まで付いてるぜ……!
でも、ここからが本番。出来損ないポーションの味は、液体とする材料の効果に依存することがわかっているので、HPを下げる悪魔のポーションを材料にするとどうなるのか――
《マンチニールの葉》×《悪魔のポーションω》→《出来損ないポーションθ》
アイテム名:悪魔のポーションθ
レア度: ★★☆☆☆
効果: 状態異常(麻痺)、HP×0.1倍。
「やったっ! 新しい種類のポーションができたっ!」
「悪魔みたいな効果のポーションなんて意味あるアルか?」
「おいしさが正義なのだよ、きみ」
「なんかワイ、店主に親近感わいたアルヨ」
ほう……! 血みたいな色をして、ビジュアルも悪魔チック。さて、お味の方はどうかなーっと――
芳醇なフルーツの香り。そして、ぶどうの甘酸っぱさ。この味、まさしく赤ワインじゃんっ! うまうまっ!
「でかしたぞ、サラサラサ。酒のお代はチャラでいいよ」
「やったアルッ! さあ、縄をほどいてマヒを治すアルッ!」
「……」
私は再び無言で悪魔のポーションを煽る。
「どうしたアル? 早く縄をほどくアルヨ」
「……それが、暗黒卿で効果消すの忘れて、HPがすずめの涙なのにくわえて、状態異常(麻痺)も患って、動けないんだよね……」
「はあ!? アホアルか!?」
ちくしょー、アホにアホ呼ばわりされたー。でも、今回ばかりは否定できないなあ。




