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第3部10話 パンダさん

「ワイも一杯ほしいアルヨ」

「はいはーい、ちょっと待ってねーっと――え?」


 変てこな話し方をする声の正体はパンダだった。何を言っているのかわからないかもしれないけど、パンダなんだ。うん、やっぱりどっからどうみてもパンダにしか見えない。


 私の前にたたずんでいるのは、鋭い牙と爪を持つ、身長は2メートルはあろうかという巨大な猛獣。はっきり言ってぜんっぜん可愛くない。


 唯一、普通のパンダと違うのは、白黒の斑点じゃなくて、紫と白の斑点だというところ。


「えっとー、どなたさま?」

「ワイ、”サラサラサ”言うアル。強いお酒大好物なパンダさんアル」


 と言ってはにかむパンダさん。うん、そうか、やっぱりパンダさんか。知ってた。そんなパンダさんに唖然とする華麗なる聖宴のメンバー。


「パンダがしゃべってる……獣人アバター?」

「いや、獣人ていうか、純粋無垢なパンダに見えるぞ? それともパンダのコスプレ? 装備品なのかなあ?」

「でもこの牙なんて本物みたいだぞーー」


 ガウスがそう言いながらパンダさんの口の中に手を突っ込む。すると、


ーーガプリッ


「うおおおおあお、痛てえええええええ」


 ガウスが地面でのたうち回った。


「ワイは本物のパンダさんアルヨ〜」

「あっ、このパンダさん、NPCみたいですねっ。パンダのNPCなんて初めてみましたっ」


 やっこちゃんがそう付け加えた。まあ、パンダさんでもお客には変わりないんだけどね。


「強いお酒……。それじゃあ試しにこれ飲んでみ?」


 私はヤケクソ爆弾酒を差し出した。すると、パンダさんはうまい具合にビンを肉球でキャッチ。勢いよく煽った。


「フォオオオオオオオ! 胃の中で爆弾が爆発したみたいアル! 最高アル!」


 パンダの鳴き声って「フォオオオ」なんだ、と心の中で「へえ」ボタンを連打。


「口に合ったみたいで何よりだねっ。おかわり、いる?」

「いるアルッ!」

「おっけ〜。ちょっと待っててね」

「ついでに、おつまみもお願いしたいアル。ワイ、ポテチが食べたいアルヨ」

「笹の葉じゃなんかい。うち、あいにくおつまみは枝豆くらいしかなくってね~」

「そうアルか……。残念アル」


 あからさまに落ち込むパンダさん。


「仕方ないアル。自前で準備するアルヨ。スキル【毒草バイキング】!」


 すると次の瞬間、まるで手品のようにその手にポンッと木の枝が現れたのだ。


「ん~、今日はラッキーアルヨ!」


 パンダはそう言って木の枝から葉っぱをむしってムシャムシャと食べ始めた。時折、ヤケクソ爆弾種を煽るのも忘れない。


「その葉っぱ、おいしいの……?」

「ポテチみたいでおいしいアルヨ。ちょっとした副作用があるのが、玉に傷アルネ」

「副作用?」


 とりあえず【鑑定】。


アイテム名:ユーカリの葉

レア度:  ★★★☆☆

効果:   状態異常(毒)、HP×0.9倍。

説明:   毒を含むユーカリの葉(ポテチ醤油味)


 ユーカリの葉ってパンダじゃなくて、コアラが食べるやつやん……。ていうか、効果がエグイほどネガってる。状態異常(毒)+HP×0.9倍ってこんなアイテム使うやつがいるのか――って目の前に爆食してるやつがいたね……。


「”ちょっとした副作用”どころじゃないじゃん……。それ、食べたらダメなやつじゃない?」

「どれだけ食べても動かなければHPはゼロにならないから大丈夫アル!」


 あー、状態異常(毒)って動かないとHPは減っていかないのか。それにしてもポテチのおいしさの代償、大きすぎるだろ。一歩間違えれば死ぬぞ。


「そんなにじーっと見つめて、店主も食べてみたいアルか?」

「いや、命がけでおつまみを食らうさまを見届けてやろうと思ってね。あ、でもちょっと待って」


 私は早速、【いろいろときれいにする空気清浄機】を発動した。


「そ、その怪しげな黒い装置は、何アルカ?」

「暗黒卿っていうのよっ。葉っぱをきれいにしてもらおうと思ってね~」


『しゅごおおおおお……!』


 暗黒卿はアイテムのレア度と効果をきれいさっぱりにしてくれる働き者。そして、暗黒卿の手によって毒抜きされた葉っぱがこちら。


アイテム名:ユーカリの葉

レア度:  ☆☆☆☆☆

効果:   状態異常(毒)→なし、HP×0.9倍→1.0倍。

説明:   ユーカリの葉という名のポテチ(醤油味)


 ……もはや、ただのポテチだね。


「フォオオオオオオオ! ユーカリの葉の副作用が消えているアル!? ありがたやあああ」


 パンダさんはそういって浄化されたユーカリの葉をバクバクと口に運ぶ。


「何の手品アルか!? この毒草の毒抜きはできるアルか!? さすがに無理アルネ!?」


 そういって渡されたのが、2種類の毒草。


アイテム名:トリカブトの葉

レア度:  ★★★☆☆

効果:   状態異常(睡眠)、HP×0.5倍。

説明:   毒を含むトリカブトの葉(ポテチうす塩味)


アイテム名:マンチニールの葉

レア度:  ★★★☆☆

効果:   状態異常(麻痺)、HP×0.1倍。

説明:   毒を含むマンチニールの葉(ポテチガーリックバター味)


 うへえ、ユーカリの葉よりも危険なんだけど……。


「【毒草バイキング】は毒草10種類の中から1種類をランダムに生やすスキルアル。ワイもこの2種類はビビって手が出せないアルヨ」

「はた迷惑なバイキングだな……」

『しゅごおおお……!』

「ん? サラサラサの煽りで暗黒卿はやる気満々みたいだね……。ようしっ! 暗黒卿、やっちゃってっ!」

『しゅ、しゅ、しゅごうおおうおおお……』


 何やら暗黒卿も苦しそう。暗黒卿、頑張れっ! 死ぬなよっ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 酔えば酔うほどパンダになるってやつですね
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