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第1部5話 海水浴

 入水した。わお、しょっぱい。てことは海水? どうやら海に落ちたようだ。海水浴なんて高校生以来じゃない? なんてどうでもいいことを考えながら、私はどんどん沈んでいく。VRゲームでは人間は浮かないんだね。


 それにしても、水中なのに息苦しくないというのは奇妙な感覚だ。しかし、10秒毎に目の前が真っ赤になり、HPが削り取られていく。どうやら遭難という名の海水浴は、無限には楽しめないようだ。


 海底にたどり着くと目の前に広がるのは、雄大なサンゴ礁。そして色とりどりの魚が楽しそうに戯れて――というのが海中への憧れだったのだが、どうやらここでは違うらしい。鬱蒼と生い茂る海藻。ただただそれだけが視界を埋めつくしている。今が人生で最もたくさんの海藻を見た瞬間に違いない。


「なんなの、この海藻。気味悪いんだけど……」


 そこで閃く。そういえば、【鑑定】なんてスキルがあったっけ。早速使ってみよう。


アイテム名:黒黒藻草(くろくろもぐさ)

レア度:  ★☆☆☆☆

効果:   一定時間、髪色が黒になり、毛量が増える。

説明:   ウルルカの近海に生育する海藻の一種。


 ふーん、黒黒藻草(くろくろもぐさ)ってそのまんまなネーミングだよね。ていうか何この局所的なドーピング効果!? 誰が使うんだろう……。え、てか、海水も鑑定できるんだね。


アイテム名:海水

レア度:  ☆☆☆☆☆

効果:   浄化。

説明:   塩気のある海の水。


 そのまんまやないかい。鑑定した意味がない。そういえば、バレンタイン・オンラインでは味覚も実装されてるんだよね? てことは海水は説明の通り、しょっぱく感じるのかな?


 私は海水をアイテム化して、再度取り出してみる。すると、手元に小瓶が現れた。海水の中で海水を飲むという何とも器用なことにチャレンジしてみる。すると、


「ゲロゲロ~」


 しょっぱい。まさに海水そのままの味だ。


「それじゃあ、こっちはどんな味だろう」


 今度は黒黒藻草(くろくろもぐさ)をアイテム化して食してみる。こっちはワカメとは違って、ミントのような爽快感のある味だった。見た目はワカメなのに、味はミントとは、なんだか奇妙な感じだ。


 食べ終わるとすぐに、私の毛量が見る見るうちに増え、色も真っ黒に変わっていく。あまりの即効性に目を疑ってしまった。黒黒藻草が現実にあれば、世の中のハゲがどれだけ救われたことか。いや、一定時間すぎると元に戻ってしまうから、使用する際はハゲがバレるリスクをしっかりと管理しないとな、なんてどうでもいいことを考えてしまった。


 急に、辺りが暗くなった。何事かと上を見上げると大きな影。しかも複数いる。すかさず【鑑定】した。


モンスター名:シザーテイルシャーク

レベル:   61

説明:    ウルルカ近海に生息する獰猛なサメの一種。尾びれがハサミ状になっており、獲物を切断して捕食する。


 レベル高くない? しかし、獰猛とは言うものの、襲ってくる様子はない。この黒髪のせいで、黒黒藻草(くろくろもぐさ)にうまく擬態できてるのかな? それにしてもおっきいサメだなあ。昔、沖縄の水族館に行った時に見たジンベエザメとどっちが大きいかなあ、とどうでもいいことを考えていると、HPの残りが少なくなってきた。


 そろそろ時間切れのようだ。存外に楽しい海水浴になったから、もう少し延長してもいいんだけどなあ。

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