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第3部1話 ガン泣き巫女

 声をかけてきたのは童顔な可愛らしい巫女だった。巫女……魔術士職だろうか?


 それにしても感慨深いなあ。初めてログインした頃は、このイカつい外見のせいで逃げられるし、無視されるしで、枕を涙で濡らしたものだ(嘘)。


 でもついに私をパーティーに誘う子が現れたっ。毎日朝パックした効果かな!? イエイッ!


ーーまあ、ワイガヤしながらダンジョン攻略とか、興味ないんだけどねっ!


「誘ってくれてありがたいけど、遠慮しとくよ」


 さらっと断った。そしたら次の瞬間、その巫女の目からブワッと涙があふれ出した。


「ち、ちょっと、なに!? どうしたのさ!?」

「うえええええん、やっぱり私はダメな子なんだああああああ」


 ガン泣き。周囲は徐々にざわつき始める。端から見るとカツアゲしてるようにしか見えないだろうなあ。


「マジで頼むから泣き止んでくれ〜。一杯おごるからさあ」


 私はそう言って“駄洒落号“を取り出して、お店を臨時営業開始。お酒好きかわからんから、ノンアルのソルティオーシャンとかがよいかしら?


 私はアイテムボックスから《出来損ないポーションα》の“マスター“を取り出し、【空きのない冷蔵庫】を発動。


 するとあら不思議。冷蔵庫の中身が冷えた《出来損ないポーションα》で埋め尽くされてる。


 私はこんな感じで自分のアイテムボックスに出来損ないポーションを一種類ずつ“マスター“として保管している。


 お店で出す時は、その“マスター“を【空きのない冷蔵庫】で冷却、複製して提供する。こうすれば一回一回出来損ないポーションを調合する必要がないし、効果、つまりは品質も担保されている。


「とりま、飲んでみ?」


 巫女はポーションを受け取り、恐る恐る口をつける。すると一瞬驚いたような表情を作り、勢いよく飲み始めた。


 巫女服なのに茶髪。うーん、何かに似てる……なんだろう? あっ! 納豆のせ冷やっこか。髪を結う緑のリボンが刻みネギに見えてきたぞ。ビールとよく合うんだよなあ。食いてえー。


「やっこちゃん、少しは落ち着いた?」

「は、はい、大丈夫です……うえええええんっ」


 全然ダメじゃん……。

 

「何だよ〜何があったんだよ〜。とりあえずお姉さんが聞いてあげるから話してみ?」

「ひっく。じ、実はわたし、“華麗なる聖宴“というクランのリーダーをしてるんですけど……」


 話を聞いたところ、彼女のクランが所有していたユニークアイテムが、クランの新入りによって無断で持ち逃げされたらしい。それで彼女は責任を感じて、その犯人を追跡しようとしているという。


「一緒に犯人探しをしてくれる人を探してたんですけど、なかなか見つからなくて……」


 そりゃ、この調子でガン泣きしてたら見つかるものも見つからんわな。


「クランのメンバー総動員して探したらどうなの?」

「実は、まだクランのメンバーには言えてないんです……」

「マジで?」


 自分で自分の首を絞めるやつだぞ、それ。まあ、失敗を隠したい気持ちはわかるけどね。


「ユニークアイテムを持ってるくらいのクランなんだし、正直に話せばユニークアイテムのひとつやふたつくらい許してもらえるでしょ?」

「い、いいえ、何と言ったらいいのか、うちのクランは古豪なんです。奪われたユニークアイテムは当時攻略組の一翼を担っていた先輩方が、砂楼都市アルカディアで手に入れたそうです。そんな大切なものを私は不用意に新入りに預けてしまうなんて……。うえええええんっ、やっぱり私はリーダー失格だああああああ」


 私はため息をついた。


「よし、すぐにクランのメンバーに相談しよう。ここにメンバー呼んできなよ?」

「え!? でもーー」

「隠しててもいつから言わなきゃいけないでしょう? それなら思い立ったが吉日だよっ! それに、ここでは酒の魔法が使えるしねっ!」

「酒の魔法?」


 きょとんとするやっこちゃんに私はウインクした。

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