第2部33話 クラン連合反省会
〜同時刻、遊戯都市和樂〜
「ニャンダが来ていませんが、時間もないのでクラン連合の反省会をはじめたいと思います。皆さん、まずは階層主戦ご苦労様でした。今回の敗北はすべて、クラン連合のリーダーである私、椛の責任です。申し訳ありませんでした。しかし、負けたとはいえ、第20階層までほぼ無傷で到達、階層主と対敵できたことは大きな収穫となりました。この敗北を糧にして、次回の階層主戦では必ず勝利を掴みましょう!」
「くそおおおおおおお! ぐぬううううううう! きいいいいいいいい!」
「獣のような怒声を吐くのではない、不貞腐れバウム。キミらしくもない」
「シュシュ……貴様は当事者でなかったから冷静でいられるのだ……。こんな屈辱的な敗北は、バレンタイン・オンラインのサービス開始以来初めてだ……」
「……階層主の第3形態の姿まで拝むことができたのだろう? であれば、ファーストコンタクトとしては御の字だ」
「冗談は寝てから言え……! クラン連合のトッププレイヤーたちで構成したパーティーだぞ!? しかも疲弊はなく準備は完璧の状態。これは偵察ではなく、本気で攻略に行った上での完全敗北だ。ふらっとダンジョンに行って全滅したのとは訳が違うのだぞ!?」
「ふむ……。椛、今回の攻略のボトルネックは何なのだ?」
「階層主の第3形態出現後、私はすぐにキルされてしまったので、その能力は未知数。現状クラン連合が持っている情報だけで対策を講ずるのは難しいでしょう。そして、最も問題になってくるのがーーこれを見てください」
「このスクショはーープレイヤーなのか?」
「はい、プレイヤーが階層主の後方支援をしていたのです」
「ふむ……。おかしなやつがいたものだな。しかし、ひとりじゃないか。ひとりで何ができるというのだ?」
「それがーー何でもできるんです……」
「は?」
「回復、ステータスの上昇、各種耐性付与、それらをゾンビウォーリアーおよそ100体に提供していました」
「は? いったいそれはどういうーー」
「ハンゾウ、回収したポーションを見せてください」
「はいはいっと、お待ちどうさまです」
「ただの出来損ないポーションではないか? それがなんだとーー『ポーションの効果が10倍になる。』……何の冗談だ? どこで手に入れた?」
「この女が所有していましたが、出所は不明です。しかし、ステータス上昇や耐性についても、すべて出来損ないポーションで付与しているようでした。さらに、具体的な能力は不明ですが、【白物家電シリーズ】三種の神器ホルダーでした。この出来損ないポーションも、この女が保有する【白物家電シリーズ】に関係することは確実かと」
「三種の神器ーーパワーバランスの崩しかねないチート級後方支援スキルがもたらした結果がこれか……。この女は何者なのだ?」
「レベルは10程度。一見したところ戦闘は不得意で、バレンタイン・オンラインの操作にも慣れていないように見受けられました。名前はーー“シャレ“と名乗っていましたが、階層主からは“姐さん“と呼ばれていました」
「“シャレ“? む、この人殺しのような目つき。はて、どこかでーー……!?」
「……どうしましたか? 心臓発作でも起きたかのように固まってますが?」
「い、いいいいいいや、なななななんでもももももも、ない」
「冷静沈着な“教授“シュシュが、ここまであからさまな反応を見せるということは、この女について何か知っているのでしょうか?」
「い、いいいいいいや、リアルで訪問者が来たようだ。い、一旦失礼する」
「ーーあんなに動揺するなんて、いったい誰が来たのでしょうね? まさか、恋人でしょうか?ーーチッ」
「あれ? 今、椛さんの方から舌打ちのような音が聞こえたんですが、気のせいですかね?」
「はい、気のせいですね」
「うがああああああああ! 我が負けただと……? ありえん! 次会ったら殺す! 抹殺撲殺殴殺惨殺殺殺殺殺殺殺殺殺……」
「不貞腐れバウムは少し黙っていただけますか? 私も今、急に体調がすぐれなくなりまして、惨殺したい気分ですの♪」
「ニャンダさんは不在だし、壊れ気味のバウムに椛の様子もちょっとおかしい……。このクラン連合、ホントに大丈夫っすかねー」
最近、感想欄にコメントいただくことが増えてきて、とてもありがたいです!
主に猫への批判、応援、意見となっていますが、猫も皆様のコメントを一読して身の振り方を考えて欲しいものです!




