第2部31話 帰宅困難者
視界が開けると、一番に目に入ったのはどこかで見たことのある神父の顔。
「目覚めたか……。お主は一度命を失い、ラフマントス神の加護により復活した。日頃よりラフマントス神に祈りを捧げ、感謝をしている証じゃ。これからも一層の――」
「あー、いいからそういうの。この世界に興味はないし、先を急いでるもんで」
ん? 今のセリフ、デジャヴったぞ。そっか、最初にログインした時の教会か! え、ってことは――
神父の話を無視して、教会を飛び出した。すると目に飛び込んできたのは見事なまでに青い海。私、始まりの街ウルルカまで戻ってきちゃったの!?
侵入者は撃退したけど、またいつやってくるかはわからないじゃんね。おっちゃんたちが心配だから、長期間ネクロスタシアを空けるようなことはしたくないんだよねー。とりあえず、前回と同じようにアプサラス・コーストから飛んで、海の中を進んで戻るか――
と思って、アプサラス・コーストに行って、噴水が出るのを待って、飛ばされて、ソルティ・オーシャン片手に海水浴。歩くよお!
……。
……。
なんかウルルカの海岸線に戻ってきちゃったんだけど!? ねえ、どうやってネクロスタシアに戻ればいいの!?(涙目)
もう一回だ!
……。
……。
戻れない。もう一回――
というのを1日繰り返してみたけど、結局ネクロスタシアには辿り着けなかった。どゆこと!? あの時の私、どうやってネクロスタシア行ったの!?
私はずぶ濡れになった服を脱ぎ捨て、パンツ一丁で浜辺に寝ころんだ。もうやだ! 不貞寝する! 周りにいたプレイヤーたちがなんかジロジロ見てるから、睨み返してやると蜂の子を散らすように逃げてった。今、私は機嫌が悪いんす。
あ、そうだ。【アイソレートドラゴンの爪笛】でドラゴン氏呼んだらよくね? ここまで迎えに来てもらうのは気が引けるけど、ドラゴン氏も私を探してる気がするし。
そう思って、私はアイテムボックスを開いた。……ん? 爪笛が見当たらない? あれ? なんで!? どっかに落としちゃったの!?
私は周囲の砂浜を手当たり次第に探ってみる。ない。やっぱりない。
もしかして、PKされた時にドロップしたとかそういうこと? だとしたらあのクソ猫絶対許さんからな……!
「万事休すかーー」
私は砂浜に大の字になる。ネクロスタシアまでの別ルートってどうやって行けばいいんだろ? 酒守のやつに尋ねるか? いや、あいつを頼るのは癪に障るし、うーん、どうしようかなあ。
とりま、現実逃避のために、次クソ猫に会った時に飲ませる激マズポーションの開発でも進めようかしら? そう思ってアイテムボックスから屋台を取り出したその時、
「あ、あの、す、すすすすみませんっ!」
振り返ると、巫女服姿の女の子が泣きべそをかいていた。え、私、何かやった? もしかして、私、存在するだけで人を怖がらせちゃうの? うへえ、罪な女。
「わ、わわわわ私とパーティーを組んでくれませんか!?」
「……は?」
なぜに。




