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第2部23話 鐘の音(もみじ視点)

 あああああ、もう、頭が爆発しそう。無限回廊の第20層は、あまりにも()に落ちない。いや、落ちないどころか、()から逆流してゲロ吐きそう。


 階層主がいると思った扉の先にはコロシアムのような闘技場があって、いかにも階層主が現れそうな雰囲気。でも、結局そこには何も現れなかった。


 その後、私たちは階層主の捜索のため先に進んだけれど、何にもエンカウントしないまま20階層を抜けてしまった。


 そして視界の端にはネクロスタシアらしき城壁が見える。無限回廊を踏破したとみて間違いないんだろうけど、何だかなあ。19階層で待つシュシュたち後続部隊には、取り急ぎ合流するように連絡したけど、返信ないしマジなんなのーーー?


「にゃんだか肩透かしだにゃ〜。階層主が不在だなんて、このゲーム、そんなにクソゲーだったかにゃ?」

「我々が階層主を撃破せずに通常とは異なるルートで19階層に到達したことが関係しているのかもしれん。やはり、ショートカットなど使わずに正規ルートで踏破すべきだった」

「にゃはーん、マジでうざいバウムは階層主が出てこなかったのはにゃーたちのせいだと言いたいわけにゃ? おみゃーの顔の皮はバウムクーヘンのように何層も積み重なって分厚くなってるにゃ?」

「事実を言って何が悪い!?」


 またケンカ。あーこいつらマジで輪切りにしてー。胃がキリキリしてきたし。こういう時にいつも間に入ってくれるシュシュは不在だし、このままではキャラ崩壊をこじらせそう。


「階層主が不在だったことはひとまず置いておきましょう。私たちクラン連合にとっての喫緊の課題は、20階層の階層主が持っているといわれているユニークアイテム“時を巻き戻す石タイムパンドライト“を入手できなかった点です。ユニークアイテムを取り逃がすと、シナリオの攻略に支障をきたす可能性があります。和樂(わらく)へ引き返すべきかどうか決めること、それが今私たちに求められることではないでしょうか?」

「一択だ。引き返すべきだろう」


 不貞腐れバウムが即答した。でも、ニャンダはうーんと、うなってる。


「引き返すことには賛成にゃ。でも、一旦ネクロスタシア入りして情報収集をしてからでも遅くはにゃいと思うにゃ〜」

「情報収集などと言っておいてお前はネクロスタシアのユニークアイテムにツバつけておきたいだけだろう! 魂胆が透けて見えるぞ!」

「そんなわけにゃいにゃ〜。無垢な子猫のにゃーにそんなずる賢いこと思いつかないにゃ~」

「ずる賢さが猫に化けて出てきたようなやつが何を言っている!」


 ニャンダと不貞腐れバウムが再び言い争いをし始めた。うん、こいつら輪切り決定。切って、猫肉とバウムを順に串に刺してねぎま作ってやるーーー。


ーーゴーン、ゴーン


 突然、辺りに鐘の音が響いた。何の音だろう? 無限回廊の踏破を祝う鐘? 否、めでたそうな音ではないし、音はネクロスタシアの街の方から聞こえてくる。ネクロスタシアで何かを知らせるための音なのか、はたまた何かの合図なのか。ネクロスタシアに関する情報が少なすぎて、想定が追いつかない。


「何が起こるかわかりません。みなさん、万全を期してください。ハンゾウ、ネクロスタシアの様子はどうなっていますか?」


 ハンゾウは【千里眼】のスキルを持っていて、ネクロスタシア程度の距離であれば街をまるまる見渡すことができるのだ。


「えーと、はい。うーん、これは、何が起こってるんだ……?」

「あーもうっ、ひとりごちてないで、さっさと報告するにゃー!」

「は、はいっ、実はネクロスタシアから兵士たちが飛び出してきてまして……」

「……兵士ですか?」

「黄昏都市ネクロスタシアは魔王“ベルズ・コンカサント“とその配下たちによって占領されてしまった都。不死の呪いをかけられた魔王の配下が、我らを迎え撃とうとしているとみるのかよかろう」

「なるほど、私たちが無限回廊を踏破したことを契機に発生したイベントとみるのが良さそうですね……」

「それで、ひとつ気になることが」


 ハンゾウは複雑そうな表情で言った。


「ネクロスタシアの兵士が掲げる旗なんですが、20階層の入り口の扉に描かれていた紋章とそっくりなんです。つまりーー」

「「階層主はここにいる!?」」


 皆が前のめりになってそう言った。


「はい、ネクロスタシアにいる階層主を討伐すれば“時を巻き戻す石タイムパンドライト“が手に入るかもしれません」

「なるほど、それは私たちクラン連合にとって一筋の光明といって良いでしょうね……」


 先ほどは、肩透かしをくらったニャンダと不貞腐れバウムはいかにも嬉しそうだ。


「にゃ〜、手間が省けたにゃ〜。クソゲーなんて言って悪かったにゃ〜」

「くははははっ! 愉快っ! 実に愉快だっ! ネクロスタシアの兵士ども、1000年前に死ねなかったこと、後悔させてやるっ!」


 シナリオ中毒兼、厨二病の病魔、不貞腐れバウムは今すぐにでも飛び出して行きそうな勢い。一戦交えるのであれば、バフの効果が消えていない今の方が有利ではあるけどね。


 それに、引き返して正規ルートで無限回廊を踏破するにはまだまだ時間がかかっちゃう。元々階層主に挑むために構成したパーティー編成だし、パーティーの士気も高い。それなら、このまま階層主に挑んでしまった方が良い気がするなあ。


 うん、そうしよう。覚悟は決まった。


「それでは階層主を討伐して、みんなで祝杯をあげましょう!」

「「おおおおおお!!」」


 こうして階層主戦の火蓋は切られた。


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