第2部17話 出来損ないポーション研究レポート その3
その後、私は順調に炭酸+アルコールの系譜で新種を見つけていった。
ρ=レモンサワー
χ=緑茶サワー
そして、その時は唐突に訪れた。
《出来損ないポーションφ》+《ピレイナインパラの糞》→《出来損ないポーションω》
何気なく口に含んだ瞬間、思わず目を見開いてしまった。そして、ポーションを一気に飲み干すと、ガッツポーズを決めた。
「よっしゃああああああ!!!!」
心地よいのど越しとほどよい苦味。炭酸とアルコールの爽快感が全身に行き渡る。
まさしくビールのそれだった。
見つけた!! ついに見つけたぞ!! 出来損ないポーション19種類目にしてビールの作り方を発見したのだ。とりあえず【鑑定】しとこっと。
アイテム名:出来損ないハイポーションω
レア度: ★☆☆☆☆
効果: 回復“小“、一定時間、ポーションの効果が1.3倍になる。
説明: 材料不足でハイポーション生成に失敗した出来損ないの液体。
ん? 《ピレイナインパラの糞》の効果って『ポーションの効果が1.2倍』だったよね? その効果が増した? あれ!? 今気づいたけど、出来損ないポーションが出来損ないハイポーションになってる!? これってどういうこと――
その時、目の前にメッセージウインドウが現れた。
『スキル【手軽にポーション作りができるミキサー】はスキル【手軽にハイポーション作りができるミキサー】にランクアップしました』
ミキサーちゃん、ハイポーション作れるようになっちゃったんだけどーーー。効果が増大したのはそのせい、だよね……。
……。
まあ、いっか。そんなことより今はビールが完成したことについて、感傷に浸ろうじゃないか。ビール片手にね。
くうううううっ、あー、マジうまいわ。最高。
早くティービーにビール飲ませてあげたいなあ。あ、ドラゴン氏にも声かけないとね。黄昏城にもおすそ分けしに行こうかな?
みんなの反応が楽しみだなあ。
※
「ってことで、駄洒落の新メニューのお披露目会をやりたいと思いまーすっ!」
「「うおおおお!! 待ってましたあああ!!」」
おっちゃんたちもだいぶ楽しみにしてくれてたみたいで、熱気?というか圧がすごい。
「はーい、新メニューの公開まで、3、2、1――あ、ちょっと待って!」
「何じゃあああ!? はよ、してくれえええ!? こちとらずっと姐さんの店が閉まってたせいで禁断症状出とるんじゃあああ!」
ジンさんが頭を抱えてのたうち回った。自由研究中はずっとお店閉めてたもんね。だからか、おっちゃんたちの目が血走ってるの。
「ごめんごめん。でも、ドラゴン氏も呼びたいんだよね」
「アイソレートドラゴン!? 酒呑みのためになんて呼び寄せたらこの街が滅ぼされてもおかしくないのじゃが!?」
私も酒呑みのために山脈の頂からはるばる呼び寄せるのは気が引けるけどさ、本人たっての希望だからなあ。
「大丈夫! 責任は私が取るっ! 没後のお墓の準備とかは私に任せてっ!」
「勝手に死んだことにすな!」
まあ、それは冗談だけど、ドラゴン氏は話は通じるし、何よりお酒に目がない。大丈夫でしょ。
私は《アイソレートドラゴンの爪笛》を思いっきり吹き鳴らした。
「ああ、呼んでしもた……。とんでもないことになるぞ……」
ジンさんは頭を抱えていた。
<新種の出来損ないポーション>
ρ=レモンサワー
χ=緑茶サワー
ω=ビール
ついにビールの作り方発見っ!!




