第2話10話 新メニュー開発
さあ、やってまいりましたポーション作りのお時間です。まずは何を【手軽にポーション作りができるミキサー】にぶち込んでみようかしら。先ほど仕入れた素材はというと……。
・ピレイナインパラの毛皮×3
・ピレイナインパラのツノ×2
・ピレイナインパラの糞×6
・バルディイーグルの羽×4
・バルディイーグルの爪×2
・ライカンベアの毛皮×2
・春虫花草×3
・ハイキキョウ×2
・苦労ユリ×1
毛皮とかツノは多分武具の素材だよね? それなら高山植物を片っ端からぶち込んでみるか……。
試作第1号:《アイソレートドラゴンの尿(あく抜き完了)》×《春虫花草》→出来損ないポーションθ
うげええええ、まずううううう。青汁にアルコールを混ぜたようなそんな味だ。青汁自体マズいのにアルコールで揮発した青汁の生臭さが鼻孔をくすぐり、卒倒しそう。これは飲めたもんじゃない……。
試作第2号:《アイソレートドラゴンの尿(あく抜き完了)》×《ハイキキョウ》→出来損ないポーションγ
ぐへええええ、きっつうううう。メンソール感が強すぎて湿布を水に溶いて飲んでるような感覚。あー目がショボショボしてきたよー。次だ、次。
試作第3号:《アイソレートドラゴンの尿(あく抜き完了)》×《苦労ユリ》→出来損ないポーションα
あれ、ソルティ・オーシャンができちゃった。海水と黒黒藻草以外の組み合わせでもできるんだ。新しい発見。
ということで高山植物は特に収穫なく使い切ってしまったな……。あと残っているものといったらーー糞。糞しかないんだけど。でも、さすがに糞×尿の組み合わせは躊躇しちゃうな……。
ーーまあいいか! もうこうなったらヤケ糞だ! 糞だけにね! うははは……はあ。ため息が出るわ。
私は【手軽にポーション作りができるミキサー】に《アイソレートドラゴンの尿》と《ピレイナインパラの糞》を投入してみた。
ミキサーがパワフルに糞尿をまぜまぜしてる様子を呆然と眺める。ごめん、ミキサーちゃん。ミキサーちゃんの仇は取るからね。
出来上がった液体は意外にも無色透明だった。とろみや粘り気もなし。
「あれ、水になっちゃった?」
私は試しにその液体を口に含んだ。すると、
「っぶふえ!?」
すぐに盛大に吹いた。
「げほっ、何だこれ!?」
「どうしたんじゃ姐さん!?」
「水だと思って飲んだら、めちゃくちゃアルコールが強くってさ……。でもこれはーー」
気を取り直して、もう一度試してみる。この酒、口に含んだ瞬間、口の中で好き勝手に暴れまわるのだ。思わず吐き出しそうになるのをなんとか堪えながら、溜飲。
すると、まるで導火線に火をつけたかのように食道を下っていくのがわかる。そして、胃にたどり着いた途端、爆発。胃が火事でも起こしたかのように急激に熱くなる。その余波は全身に行き渡り、体温が急上昇した。
これはとんでもない酒だ。でも、うまい。間違いなくクセになるやつだ。味はアルコール度数が60度近くある中国の白酒に似てるかな。でも爆発力は白酒以上だ。ヤケクソ爆弾酒とでも名付けようかな。
さて、【鑑定】してみよう。
アイテム名:出来損ないポーションβ
レア度: ★★☆☆☆
効果: HP回復「低」。一定時間、腕力×1.3、体力×0.7。
説明: 材料不足でポーション生成に失敗した出来損ないの液体。
おおう、体力低下するのな。それじゃあ、お客さんに振る舞う時は暗黒卿にキレイにしてもらわなきゃなあ。
そんなことを考えていると、ジンさんとドラゴン氏がジト目を向けていた。
「できた、できたんじゃな!?」
「至急! 至急、我に寄こすのだ!」
「ちょっと待ってよ。なかなか危険な代物だから、暗黒卿にキレイにしてもらってからって、あ……」
カウンターに置いておいたビンを勝手に飲まれてしまった。すると、
「「ぬおおおおおおおおあお!?!?」」
ふたりの雄叫びが山脈にこだました。
「腹の中で花火が上がったぞい!?」
ジンさんが顔を赤くしながら言った。その言葉にドラゴン氏も鼻息荒く頷いた。
「うむ、至孤の我が魂を震わす、天晴れな花火だった……!」
とりあえず2人とも好きそうでよかった。これならうちのメニューに加えても良さそう。
「姐さんとやら、この酒は何で出来ているのだ?」
「え……企業秘密、かな」
まさか糞尿、しかもドラゴン氏のおしっこだよ、なんて言えるはずもない。言ったらブレスで溶かされそう。
「ぬう、この酒はお主の酒場でしか飲めぬということか。しかし、この酒を飲むことは我の新たな楽しみとなるだろう……。して、おかわりはないのか?」
「もー、ふたりが勝手に飲んだから、おかわり仕込む前になくなっちゃったじゃない! 勝手に飲まないでよね!」
「ぬぐっ、すまなんだ……」
「ああ、もうやらぬ……」
「よしっ! それじゃあ、ヤケクソ爆弾酒、準備するから、今度は行儀良く待っててね!」
「「はいっ、姐さんっ!」」
なんか私を姐さん呼ばわりする輩が1名増えちゃったなあ。




