表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/77

第1部2話 キビい外見

 現在の時刻は12時を回ったところ。酒守(さかもり)との待ち合わせまで、1時間くらいか。


 私はヘッドギアを被り、耳の付近にあるスイッチを押した。すると、真っ暗な視界の隅からポリゴンが埋め尽くしていき、視界を形成。


 気づくと、目の前に妙なキャラクターが宙に浮いていた。ウサ耳を生やしたオバケとでも言うのだろうかーーつぶらな瞳と目が合った。


「何このオバケ?」

「オバケとは失礼ダニ」

「うわっ、しゃべった! オバケじゃなかったら何なのさ?」

「バレンタイン・オンラインの案内人、セリーヌだダニ!」

「へ〜、よく出来てるな。ウサ耳の感触もモフモフしてて、リアル〜」

「や、やめるダニ! セクハラでアカウントを凍結するダニ!?」

「まだゲーム始めてもないんだけど?」

「じゃあ、さっさと始めてアカウントを凍結するダニ! でも、始める前に質問にいくつか答えるダニ!」」


 凍結されるとわかっているのになぜゲームを始めなければならないんだろう。とりあえず脳死で答えるしかない。


 Q:お名前は?


 ゲームで使う名前のことだよね? 苗字の洒落(しゅらく)の読み方を変えてみようかな。


 A:シャレ


 Q:性別は?

 A:女


 Q:年齢は?


 実年齢でもいいのかな……。


 A:25歳


 その後も、様々なQ&Aに答えさせられた。


 Q:好きなものは何ですか?

 A:お酒


 Q:なぜお酒が好きなのですか?

 A:苦楽を共にした相棒だから。


 Q:週にどのくらいお酒をのみますか?

 A:7回/週


「おい、ウサ耳オバケ。この千本ノック、いつまで続くん!?」

「回答の内容は生成されるアバターの外見や能力に影響するダニ。今のセリーヌへの暴言もアバター生成用の情報に付け加えておくダニ」

「ちょ、余計なことするんじゃない。どうせなら絶世の美女とかになりたいじゃないか」

「無理な相談ダニ〜。多分、顔の濡れたアンパン〇ンみたいになるダニ〜」

「お前、後でア○パンチくらわせてやるから覚悟しろよ……」

「パワハラでアカウント凍結ダニ〜」


 その後も、50問くらい答えさせられたのではないだろうか。


「これで最後ダニ!」


 そう言われて最後に問われたのは、こうだった。


 Q:何故、お店を閉めたのですか?


「……」


 随分と深く詮索してくるやつだ。お前に教えてやる筋合いなんかない。


 A:言いたくない


「アバター生成中ダニ〜。しばらく待つダニ〜」

「ようやく終わった……」


 その場に倒れこんでへばっていると、しばらくして目の前に光の粒子が集まり出す。


「アバター完成ダニ!」


 生成されたアバターが目の前に姿を現し、思わず絶句してしまった。


 顔はほぼ現実そのままの私。しかし、髪は緑だし、肌は褐色。何より顔全体に紫の入れ墨がある。


 もともと吊り目がちの私だ。眼光が鋭く、総じてかなりヤンチャしてそうな見た目に仕上がっている。これはキビい。キビいぞ。


「おい、これじゃあ完全に裏社会の人間だろう!? てか、この入れ墨、目の下に濃いクマが出来てたせい!? 誇張して反映しなくていいんだよ!」

「知らないダニ〜。セリーヌがデザインしたわけじゃないダニ〜」


 セリーヌは我関せずといった感じでホントに憎たらしい。私は舌打ちすると、セリーヌを睨んだ。


「チェンジだ」

「もう一度最初から質問をやり直すダニ?」

「それは嫌だ」

「じゃあ諦めるダニ。そのアバターも悪いところばかりじゃないダニ。商人職向けのステータスが分配されてる上に、最初からいきなり中級職”薬売り”の職業を付与されてるダニ。朗報ダニ」


名前:シャレ

種族:人族

レベル:1

職業:薬売り

ステータス:腕力25、脚力20、体力30、敏捷20、器用45、精神20

装備:

 [頭]なし

 [上半身]虫よけ外套(がいとう)(黒)

 [下半身]丈夫パンツ(黒)

 [靴]探検ブーツ(黒)

 [武器]案内人の短刀

 [アクセサリー]ひょうたんの髪飾り

スキル:【鑑定】【手軽にポーション作りができるミキサー】


「この見た目で薬売りって完全にやばい薬の売人じゃんかっ! もういい、どうなっても知らん! あの忌々しい酒守を一発殴ってこのゲームともおさらばだ! 早くゲームを始めるぞ!」

「操作説明は不要ダニ?」

「いらんっ」

「手間が省けて助かるダニ〜。それじゃあ、バレンタイン・オンラインの世界にいってらっしゃいダニ~」

「おう、世話になったな、ウサ耳オバケ。そのうざったい面を二度と見なくてすむようにと願う」

「奇遇ダニ。同じことを考えていたダニ」


 こうして、私はバレンタイン・オンラインへと足を踏み入れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ