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第2部1話 下見

 次の日も私はバレンタイン・オンラインにログインした。酒守を一発殴って終わりにするはずだったのに、どうやら私にはニートの才能があるらしい。


 酒守からは鬼電があったものの、ガン無視。放置プレイされる辛さを思い知るがいい。


 で、今日から本格的に開店の準備をしていこう思ってる。私のお店はどこに開店しようかしら? と出店場所のツバをつけに、ジンさんに街の中を案内してもらっているところだ。


 ネクロスタシアは北は山脈、南は海に挟まれた半島の先っぽのような場所に位置してるらしい。私が上陸したのは南側の海岸。ネクロスタシアの南門は海から上陸されることを想定していないらしく、誰もいないし開きっぱなしになっている。


 北門はちゃんと守備兵が守りを固めておるんじゃと、ジンさんが言い張ってたけど本当かな? どうせ豆食べてゾンビ化して、門の辺りをうろついてるだけなんじゃないかな?


 そんなネクロスタシアで、出店候補地としてジンさんに案内されたのは街の中央に位置するーー


「ーー何で街の中心に森があるのよ?」

「森ではない。庭園じゃ」

「冗談でしょ? 年輪重ねてそうな大木がたくさん生えてるじゃないの」

「1000年前までは専任の庭師がおってな。綺麗に整えられておったんじゃが、今はこの通りじゃ。空気がおいしいじゃろう?」


 そんなドヤ顔で言われても困る。それに、この街全体的にホコリっぽくて、残念ながら空気がおいしいとも思えない。ていうか出店候補地に空気のおいしさ求めてない。


「チェンジで」


 うなだれるジンさんに連れられて次に案内されたのは立派な噴水ーー


「どうじゃ!? ネクロスタシア自慢の“アルビィの噴水“じゃ!」

「うん、立派だとは思うんだけど、肝心の水がないのよね」

「この街は常に水不足でな。今は動いとらんが、1000年前まではーー」

「そのくだり、聞き飽きたから! チェンジ!」


 その後もことごとく1000年前はよかったスポットに案内されて、もううんざり。商店街(という名の廃墟)や住宅街(という名の空き家街)もあったけど、風化が進んでいて、どのお店もやってないし誰もいない。まるで、街全体が神隠しにあったみたいだ。住んでるのも、ジンさんたち自称守備兵のゾンビだけみたい。


 ていうか、何でプレイヤーが誰もいないのかな? おっちゃんゾンビがむさ苦しいし、街全体ホコリっぽいからかな? 街の雰囲気自体はミステリアスで悪くないんだけどなあ。


 どこかに運命的な立地はないものかしら……。


 そんなことを考えながら街中を歩いていると、三角屋根が目に飛び込んできた。まるで魔法使いでも住んでいそうな雰囲気ある古城。この街で唯一ツタに侵食を許していない建物だった。


「あの古城辺りなんて良さそうじゃない?」


 すると、ジンさんは渋い顔をした。


「あそこはダメじゃ。時を司る魔王ベルズ・コンカサント様が住んでおられるからな」

「え、魔法使いとか住んでそうとは思ったけど、まさかの魔王? 有名人の豪邸を紹介するノリでさらっと言わないでよ。ノックするとこだったじゃない」

「ぐははっ、そもそも、この街はベルズ様が治める街。ベルズ様の存在を知らんとは逆に驚きじゃ! わしらもベルズ様の近衛兵のような位置付けになっとる。といってもここ300年ほどお見かけしとらんから、生きてるのかどうかわからんがな」


 ジンさんはそう言ってぐははっと笑い出す。上司の安否不明、笑い飛ばしていい問題なの?

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