消えた不審者
あー、楽しかった。
京ちゃんの家で十分すぎるほどゲームをした私は、今帰り道。日も暮れて、街頭がポツンポツンとつき始めた住宅街を一人歩く。
隆司の言ってた通り、もうちょっと早く帰れば良かったかなと、あの女の子が言ってた河島公園の横を通り過ぎてふと不安がよぎる。
少し早足になったところで、私は背後から聞こえる音に気づいた。
コツン、コツン、コツン。
これは...。
一瞬後ろを振り返った後、私は猛ダッシュで走り出す。
振り返っちゃ駄目だ!
走ってる間にも、謎の音はついてくる。とにかく逃げないと。
その一心で私は、一本道から右に曲がった。
ハァハァ。呼吸を整えてるとき、ふとカーブミラーを見ると、誰もいない。
あれ?振り返ったとき、確か真っ黒な男の人がいたはずなんだけどな...。この一瞬でどこに?
妙に冷静になった私は、しばらく立ち止まってると、ある1つの結論が浮かんできた。
翌日の放課後。
「え?!いなかったんですか?」
「えぇ。警察の人が昨日の三宅さんの話を聞いて調べたそうだけど、それらしき人物はいなかったそうよ」
そんな...。今村先生からの報告に落胆する私。
とぼとぼ歩きながら教室を出た私に、京ちゃんが心配そうに声をかける。
「どうしたの?昨日なんかあったの?」
隣にいる隆司と京人も気になるみたいだ。
「実はね...」
そう言うと、私は昨日例の男の人に追いかけられたこと、その男の人が一本道で消えたことを話した。
「え?!嘘!大丈夫?」
「まじか...てか怖くね?急に消えるって」
「...」
リアクションをとってくれた京ちゃんと京人とは対照的に、隆司は黙り込んでしまった。どうせ、どうやって人が消えたのか気になってるんだろうけど。
「でね、私は男の人が消えたのはね―」
「住宅街だし、その一本道のところの家の1つが、実は不審者の家だ、って考えたんだろ」
...。はい、その通りです。
隆司の言葉に敬意を示して頭を下げる私。
「なるほどね。じゃあこれで一件落着ってわけだ」
京ちゃんが笑顔で話す。ただ、現実はそんなに甘くなかったのだ。
「って思うじゃん。でもさっき今村先生に聞いたら、その一本道に不審者の男らしき人は住んでいないっぽいのよ」
「どういうことだ?」
京人が首を傾げる。
「あの一本道の中に不審者の家があると思ったから家に帰ってから警察に知らせたのね。状況も詳しく言ったから警察の方でもそうだと思って、その一本道沿いの家を調べるって言ってくれたの」
「ところが、その結果、不審者らしき男が住んでる家はなかったのね」
「そういうこと」
一体どうやって消えたっていうんだ。
私達は自然と隆司に目をやる。
「君たち。こんな少ない情報量で僕に不審者を突き止めろ、とでも?」
やっぱりいくら隆司でもこれは無理よね。
「まぁ依頼もあるし、夕方、河島公園あたりにいって調べてみるか」
そう呟いて教室をでる隆司。
私達3人は顔を見合わせて笑う。
なんだかんだでちゃんとやってくれんじゃん。




