謎の音
「え、えっと...」
突然の発言にあてふためく今村先生。
それと対照的に隆司は冷静だ。
「そうだな..じつはその男の人なんじゃないかな、って思う人はいるかな?」
「いないです...」
「そっかぁ。じゃあ―」
隆司が再び質問しようとするのを今村先生が遮って何かを隆司に話す。
まぁ、何考えてんの?!的なことだろうけど。
「いいや心配ないですよ、先生」
先生の制止を軽く振り切る隆司。
そして質問を続ける。
「あ、ごめんね。じゃあさ、そのことをお巡りさんには言ったかな」
「うん。ママに言ったらね、お家にお巡りさんが来たからお話したんだ」
「そっかぁ。
じゃあ、その時のこと、怖かったと思うけど詳しく教えてくれるかな?」
女の子がコクリと頷く。
少しずつ緊張がほぐれたのか、顔が上がってきた。
今村先生は完全に隆司を止めるのを諦めたみたいだ。
「この間ね、河島公園でミサキちゃんたちと遊んでたの。でね、5時の音楽が流れたからバイバイしたのね。でね、お家まで歩いてたらねコンコンって聞こえてきたんだぁ」
コンコン?
隆司と先生も疑問に思ったのか首を傾げる。
「なにかの音に似てたりするかな?」
「うーんなんだろう。カッカッ、て感じの音かもしれないの。それでね、びっくりして後ろを振り向いたらね、真っ黒の男の人がいたの」
なるほど。不審者の足音ってことかな?でも、足音にしては変な音だな。
「なるほどね。その後は頑張ってお家に帰ったの?」
「うん。私びっくりしてね、逃げなきゃって思って走ったの。で、角を曲がってそのままお家に入って、ママに黒い人に追っかけられた!って言ったんだ」
「追いかけられたってことは、カッカッって感じの音もついてきたの?」
「そうなの」
ここまでの話を聞いて隆司は一度顎に手を添える。
「どう?分かった?」
メガネの男の子が食い気味で尋ねる。
「流石にこれだけじゃあ、僕でもわからないなぁ」
苦笑いする隆司。
「まぁ警察の人たちが知ってるなら、少ししたら捕まると思うけど、僕も調べてみるよ」
「本当?!」
ぱっと顔が晴れる男の子。
「じゃあ、今日は明るいうちに帰るんだよ」
今村先生の言葉に頷く2人。
そのまま教室を出ようとしたので、慌てて私達は扉から離れた。
「ちょっと神島くん!」
2人がいなくなるやいなや、今村先生が声色を変える。
「なんであんなこと言ったの?!」
「大丈夫です。ちゃんと理由がありますから。学校に注意を促すほど警察が動いてるならもうじき捕まると思ったので。ただ、そんな無責任なことをいっても心配させるだけだから、一応僕も調べるって言っただけです」
確かに隆司の言ってることは間違ってない。
「そういうことね。ただ、神島君も男の子だから大丈夫、とは限らないんだから、暗くなったら家に帰るんだよ」
「それはどういう意味ですか?」
「言わなくても分かるでしょ。わざわざ自分で、暗くなってから調査しようとなんてしないこと!」
「それはもちろん。僕肉体労働派じゃないですから。それじゃあさようなら」
そう言うと隆司は、ランドセルを背負い帽子を被って教室から出てきた。
いつも思うけど、見た目と言動のギャップが凄まじい。
「早帰りだから浮かれてるみたいだけど、君たちも暗くなる前に帰るんだよ」
私達にそれだけいうと隆司は階段を降りていった。
「もう!一体何様のつもりなのよ隆司は!」
「私達と同じ小学生のくせに...」
まぁ、後々隆司の言うことちゃんときけばよかったって後悔するんだけどね。




