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FALL INTO un日常  作者: eFRM
星と死体の降る夜
10/17

朝花の違和感

「だ、誰だ?!」

西部さんがそう言うとともに建物の方へと走っていった。

その声に我を取り戻した私も慌ててついていく。

ちょっと!って言う京ちゃんのお母さんの声にかまうことなく、私は建物に入って階段を駆けあがる。

「ちっ、どこ行きやがった」

2階に上がると山吉さんが倒れてた。彼を西部さんが起こしあげる。

「大丈夫ですか?」

「はい、なんとか」

真っ赤で綺麗な廊下のじゅうたんとは対照的に、乱れた服装を見る限りかなり派手にやりあったのだろう。私たちが来る前の間はほんの一瞬なはずだからまだすぐ近くにいるはずだ。

「どこに逃げたんですか?!」

「あっちの非常階段の方だ!」

そう言うと山吉さんは立ち上がって慌てて階段を駆け下りてく。ケガはないみたいだ。

「あっちだ!」

暗くて前がよく見えないが、私と西部さんは、待て!と叫びながら走る山吉さんのについていく。

走る度泥が跳ねてくる。山道を駆け下りるざざっという音。私はこれらにかまうことなく走っていった。ただいくら私が足の早い方とはいえ、所詮小学生女子と成人男性。私と2人の距離はみるみるうちに離れていく。

「あっ」

気付いた時には遅かった。ぬかるんだ山道に足を滑らせてしまったみたいだ。こんな時に...。

「痛っ...」

立ち上がろうとすると右足に激痛が走った。足をくじいちゃったみたいだ。

「畜生、見失ってしまった...。君、大丈夫かい?」

顔を上げると、2人が戻ってきていた。彼らも服のあちこちに泥がついている。

「まぁなんとか..」

私はなんとか立ち上がると、右足をひきづるようにして2人と一緒に建物へと戻っていった。

「大丈夫?!

急に走り出すから心配したじゃない」

玄関口で私をみるなり慌てて駆け寄ってくる京ちゃんのお母さん。

「ちょっと足くじいちゃったんですけど大丈夫です」

「それで、あの謎の大きな男は?」

カップルのうち男性の方が尋ねてくる。

女性の方はあまりにもショックだったのか、男性にぎゅっと抱きついている。

「すみません。取り逃がしてしまいました」

そういって頭を下げる山吉さん。

「とにかく本部に私から連絡しておきます。皆さんは身の安全のため今日は部屋の中にこもっていてください。それから、なるべく一人にならないこと」

そう言うと山吉さんは無線機で話し始めた。

「ここって確か携帯電話は圏外でしたっけ?」

「はい、そうなんです…。こちらに固定電話はございますが」

男性の問いかけに西部さんは受付の方を手で示す。

「あ、あの…」

京人が恐る恐る受付の方へと近寄ってく。

「これ、線切れてませんか?」

そう言うと京人は受話器を持ち上げた。

そういや京人、目よかったんだっけ。

確かに受話器からでてる線は本体につながってない。途中で切れている。

「さっきのやつの仕業か…」

カップルの男性が声をもらす。

「でも、いつの間に??」

女性が不安そうに震える声を上げる。そのとき私は大事なことを思い出した。

「そういえば隆司たちと、もう1人の男の人。今部屋にいるはずだけど大丈夫かな?」

無線で話し終えたのだろうか、山吉さんが私の言葉に振り向く。

「確かに。とりあえず安否を確認しましょう。一応私が犯人を取り押さえようとしたとき『危ないので鍵をかけて部屋にこもるように!』とは叫びましたが」

そういって階段を上がる山吉さんに私たち全員が団子になってついていく。

皆まとまってた方がいいと思ってるのだ。

「すみません。Y県警の山吉です。ご無事でしょうか?」

山吉さんが隆司たちの部屋をノックをして尋ねる。

しばらくすると隆司のお父さんが出てきた。

「えぇ、大丈夫ですが。

やはり何か事件がおきたのでしょうか?」

「詳しくは後ほどお話しますが、何者かが女性を崖下に放り投げたのです」

「そんなことが…」

流石に隆司のお父さんも言葉を失う。

部屋の奥を覗くと、隆司はベットの上で座りながら本を読んでる。こっちの様子を気にする素振りは少しもない。どうやらすっかり元気になったみたいだ。

次に小男さん(仮)がいる206号室に向かった私達。隆司のときと同じようなやり取りを経て、無事が確認できた。

彼も事件のことを聞いてだいぶショックを受けたようだった。部屋の中に閉じこもってて状況をまったくつかめてなかったらしい。

「それで、被害者と思われるのが…」

そういって203号室のドアを開ける山吉さん。

「この部屋に泊まってた女性ですね」

案の定部屋の中には大きいリュックやその他旅行にありがちな荷物が散乱してるだけで、人の気配はない。

「ヒイラギって自分で言ってましたよ」

「確かに、宿泊時の名前もヒイラギサラでした」

私の言葉に西部さんが補足をする。

「なるほど。ひとまず現場保存の為、皆さんは入らないようにしてくださいね」

そう言うと山吉さんは203号室のドアを閉めた。

「それでは皆さん。

改めて、今晩はなるべく部屋から出ないようにお気をつけ下さい。私は基本的に空き部屋の205号室にいるか建物内を見回りしています。

とにかくこの建物内に犯人がいないことは確かなのでそこはどうかご安心を」

「すでに玄関口と非常階段の鍵はかけておきました」

「ありがとうございます。

あなたには後で詳しくお話を伺うつもりなので、受付の奥の部屋にいて下さい。

私は廊下から物音がするのに気付いて、ドアを開けたら、丁度男が女性を放り投げてたところで、外から見た様子などは正直まだ全く把握できていないので」

「わかりました」

そう言うと西部さんは1階へと降りて行った。

みんなもそれぞれの部屋へと戻っていく。

私も京ちゃんのお母さんについて行って202号室へと戻っていった。

「さっきはびっくりしたよ。だって急に走り出すんだもん朝ちゃん」

「ごめんね」

私は笑ってごまかす。いざ、というときにはためらっちゃダメなんだ。そのことを知ったのは随分と前だったんだけどな。

「それにしても本当に事件が起こるなんてね」

京ちゃんのお母さんが言葉を漏らす。重い空気が室内に漂う。それにしても、いまいちピンとこないというか気持ち悪いんだよな…。

「どうしたの?やっぱり不安?」

京ちゃんのお母さんが私の顔を覗き込んでくる。

「いえ、ちょっと気になることがあって。そういえば私が走って行ったあとみんなはどうしてたんですか?」

「えっとね、私たちはとりあえず全員固まって玄関口の外ところにいたけど。特に誰も見かけなかったかな」

「何?朝ちゃん、なんだか隆司みたいだよ」

「いや別に…」

そういいつつも私は違和感の正体を探ろうとする。

んー…。


あ!

しばらく考えてみると違和感の正体の一部に気付けた。

ヒイラギさんを崖下に放り投げたあの大柄な男の人。

あの人に関する痕跡が一切ないんだ。いや、正確には、ベランダにいた瞬間は皆が見てたしその後もその人の後を追っかけていったけど、それ以前に全くそんな気配がないんだ。

それと、山吉さんが小男さん(仮)を訪ねるのに迷わなかったこと。もちろんはじめに西部さんからどこに誰が泊まってて、男性の一人客はあの人だけだからわかったのかもしれないけど。あの場で西部さんに確認する素振りすら見せなかったのはちょっと変なきがする。

でも私がわかったことはここまで。

私はふかふかの椅子から立ち上がると部屋の入り口へと向かう。

「どうしたの?」

「いやちょっと隣に用が」

そう言うと私は201号室の方を指差す。

「すぐそこだし大丈夫だと思うけど気をつけてね」

「はーい」

私はそう言うと部屋を出て、隣のドアをノックする。

「隆司。いや名探偵神島隆司君。君の考えを聞きたいんだけど」

ドアがカチャリと音を立てて開く。

中から出て来た隆司。

「やぁ朝花ちゃん。君のその賢明な判断に拍手を送ろう」

彼はそう言うと私を部屋に招き入れた。

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