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8 冒険者ギルド

おはようございます。

遅くなりましたが、楽しく読んでいただきたい。



 ――とある目的地の道中


 「異界の心か」


 ナノスはついさっきキティーおばあさんの占いで気になることを言っていたことを思い出していた。

 この世界の勇者一行召喚儀式に巻き込まれた。さすがに別世界であった過去は読み取れなかったのだろう。だから過去が見えなかった。そして、創造神ラオ様に危うい存在になっていた俺にこの世界で生きていけるための下地を例の手紙の時に作り直してくれた。それが生まれ直したと表現したのかも。大事な決意ってのは今後の人生の行動基準と名前を換えたことと推測できる。

 誰かが俺を守ってくれているのは、おそらく創造神ラオ様だろうか。

 …異界の心、自分の心に従えってことなのか。


 

 それもこれも占いを真に受けるならばだ。

 召喚者を知っている者は数えるほどだろう。ここにまで情報が漏れているっていうのは可能性としては低い。何より俺しか知らない決断も言い当てていた。


 「…うがぁっ」


 わからなすぎて髪をかき乱す。考えれば考えるほど理屈が湧いてくる。

 そんな奇行に走る異常者を見て街道歩いている人たちは奇異の目で見てサッと目を逸らし、距離を置いたり、早足で去っていく。

 柄にもなく普段やらない行動が出てしまう道流もといナノス・ジョー。これには客観的にも良くないと思い、冷静さを取り戻す。

 そして、考えても答えの出てこない問題に切り上げることにした。


 「だがまあ」


 ーー強く生きろってアドバイスと受け止めよう。




 思考にふけっている間に、目的地の前に来ていた。


 建物2階建て、他の建物に比べても大きく、規模が外からでも大きいことがわかる。西洋建築に似ていて看板には共通語とされる文字で()()()()()()と書かれている。

 

 そう、"冒険者ギルド"


 響きだけで浮ついてしまう。


 さっそく、ウェスタン扉を押してギルドに入る。


ーーギィーガコンガコン


 ガヤガヤと喧騒が聞こえてくる。酒場で食事処、壁に設置されてある大きなクエスト掲示板に受付カウンターが奥にある。

 いかつい冒険者に2メートル超の大柄な冒険者が目立ち酒場でどんちゃん騒ぎ。イメージしていた冒険者たちの賑わいに気分が高揚する。


 ナノスは受付カウンターへと歩き出す。


――コツコツコツコツ


 めずらしい格好で入ってきたらたくさんの視線が集まるかと身構えていたナノスだが、数人ほどしか見ていないことにそんなものかと納得する。

 しかし、一定数の今ナノスを見ている人たちは強そうな人や探るような目に見える。見ただけではわからないがつよい人もこの中にはいるのだろうとこちらも見ていることをおくびにもださない。

 いつもの癖で気配を薄くしているのもあるだろう。目立つのを好まない性格もある。そして、スキルの影響でもある。強化された"氣"が影響していることをこの時点のナノスは知らない。気配が転移前よりも薄くなっている。

 

 ナノスは不思議に思いながらもずらりと横並ぶ受付の1番端の受付に声をかける。

 

 「あの、冒険者になりたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

 「こちらは冒険者ギルドになります。初めての方で、新規登録ですね」


 「はい」


 「では、身分を証明できる物をお持ちでしょうか?」


 「…⁇」


 身分を、証明できる、物??言葉の意図がわからずし沈黙する。


 「あの、どうかなさいましたか?」


 「はいっ、いえどうもしてませんが」


 しまった。失念していた。お金のほかに組織に所属するには大事な物があった。


 ――身分証明書


 そりゃそうだ。組織だ。最低限、身元がわからないと信用ないじゃん。

 

 (えっとどうするか。えーと、あっそうだ。あれならいける)

 「これで良いですかね」

 

 「?これは?」


 懐から取り出したのは一通の便箋(びんせん)


 受付嬢が手渡されたものは便箋だった。表には何も書かれていない便箋。手渡された便箋を不思議に思いながらも、封蝋がしてある方を見るため、くるりと回す。そして、驚愕の表情を浮かべた。


 「あの、これは??」

 

 再び問われるナノス。


 「これは()()()()()()()()()()様から()()いただいた便箋です。これで身分を認められますか?」


 ナノスが差し出したのは、城から追放される時のお金と一緒にいただいた貴族紋で封された便箋。もったいないと思ったがこの先の命運がかかっている。早速使うことにした。


 「はぁ、この国の魔法師長ですか?」


 「ええ、そうです」


 これで何とかおそらくできるだろうし、他に言いようもなく、これ以上は何もないぞ。うまくいってくれと願う。


 「…身分の証明を確認いたしました」

 

 そう言って、封は封蝋を切らずに手元に返ってきた。


 「え…?」


 ――封は切らない?


 それでいいのと疑問に思うナノスだが、さして詮索せずに次にいく受付嬢。


 「文字はお書きになりますか?」

 

 「あ、いえ。書けません」


 必要事項を記入する用紙を見せてもらったナノスだが書けそうになかった。いや、言語を理解できているのだから掛けはするだろう。ただ、一度も書いたことのない文字を書いたら拙い文字になりそうだ。

 しばらくは書けそうにないな。暇があれば文字を書く練習をしよう。


 今さっきの事は終わったとばかりに矢継ぎ早(やつぎばや)に聞かれて答えるナノス。

 ついていかないとわからなくなる。もう終わったこととして切り替える。



 「では、こちらで必要事項を通させてもらうので、名前・出身・年齢、犯罪があるかないかお聞きします。その都度、正直におっしゃってくださいね」


 朗らかな営業スマイルで受付嬢はそうおっしゃる。何か含むような言葉とアルカイック笑顔だ。

 

 疑問に思うナノスだがさして気にせず必要事項を答えていく。


 

 「お願いします。…名前はナノス・ジョー。…年齢は25才。…出身は…」


 

 ここで疑問に思うナノス。


 (出身地ってどこだ?日本か?地球か?名前を換えたここ、王都でいいのか?)


 「…どうかいたしましたか?」


 考えを巡らせていると、受付嬢が伺うように聞いてくる。


 わかっている。変なところで詰まっているものな。出身地がどこがいいかわからない、間違った回答すると何か言われるかもしれない。さぁ困った、待たせている。


 どうしようと焦って答えたのが、

 「Japan、出身はじゃぱんです」


 「はぁジャパン?(そんなところあったかしら?)…。失礼ですが、ジャパンとはどういった場所ですか?」


 冷や汗たらりである。


 「遠い国です。ここからは遠すぎて帰れない場所ですね」


 言い得て妙である。つつけばボロ出る真実。


 じーっと見てくる受付嬢。


 上から下に全身を見てくる受付嬢。


 見るからに何の素材でどういう技術で作られているかわからない、上質でへんてこな服だがどこか上品に感じる服を着ている。身一つで遠いところから来たと言うナノスを、いぶかしげに眉を顔の中心に寄せる受付嬢。

 (…だってこの人何も持っていないんだもの。きれいすぎるし。しかもあの魔法師長の手紙、自身の知名度を知っていらっしゃるから滅多なことではひいきしない人。()()()の明らかな強力な封魔法だもの)

 

 怪しさ満点なのだが受付嬢はすっと襟を正す。

 奇抜な格好した冒険者はそれなりにいる。ビキニアーマーだったり、短パンが一張羅だと主張する人だったり。脳裏に過ったそれらよりかははるかにマシだと思う受付嬢。


 「…まぁ、いいです。嘘はついていないようなので…出身はジャパンと、次で最後ですが」



 「ジョーさんは犯罪を犯したことはおありですか?」

 「ないです」


 記入用紙に落としていた視点をゆっくりと挙げ、今度は間髪入れずに即答したナノスを見つめる受付嬢。

 そして、カウンター下にまた目を落とす。


 ナノスは嫌な沈黙に口をつぐむ。もとより犯罪したことがないので、ここは沈黙が金なり。


 「…犯罪歴なし…と、以上で記入事項の確認をさせて頂きます」


 「お名前がナノス・ジョーさん、年齢が25才、出身がジャパーン、犯罪歴はございません」


 「以上でお間違い無いですか?」


 ジャパーン。出来るウーマンのようなかわいい女性がアホみたい伸ばした。なんか和む。

 ジャパンの発音がジャパーン⤴︎と語尾が上がっていたが、見せてもらった記入事項用紙にはジャパンと書いてある。


 「はい、間違いないです」


 「では、これでギルドカード作成に移らせていただきます。ギルド加入とギルドカード発行のため、銀貨1枚頂戴いたします。ギルドカード受け取り際にお出し下さい」

  

 「そして、ギルドカードができるまでの間、よろしければ、冒険者ギルドのルールを説明いたしますが、お聞きになりますか?」

 

 冒険者ギルド概要の説明は聞いておいたほうがいいだろうとお願いした。


 

 断りを入れて席をはずす受付嬢。奥の机で仕事をしている人たちのうちの1人に声をかけ、書類を提出している様子が見えた。ギルドカードの作成のためだろうと思われる。

 知らず知らずのうちに緊張していたナノスは一息ついて、受付嬢が戻るまで余裕が出て、ふと横を見た。

 

 隣のカウンターにはくすんだ金髪の青年が受付と話をしていた。


 「ん?」


 特におかしなところはないと思うのだが、どことなく不思議な感覚がした。

 こっちに来て感覚が鋭くなっているかなと感じて、自分自身の身体の不調を疑うナノス。

 けれども気になった程度の事なので、その後視線を切りエントランスを見渡して、受付嬢が戻ってくるまでの間を暇つぶししたのだった。



 しばらく経ち、受付嬢が戻ってきた。

 

 「お待たせいたしました。ギルドカード作成にしばらくかかりますので、その間に冒険者ギルドについてお教えいたしますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。では、冒険者ギルドの説明に入ります」


 ギルドカードができるのを待つ間、冒険者ギルドの説明を聞いていく。

 堅苦しい概要だったが、要約するとこんな感じのルールだった。



 〜冒険者ギルドのルール〜

 冒険者ギルドとは大陸の冒険者ギルド加盟国である冒険者によって創られ独立した組織。私達は"秩序の中の自由と冒険"をかかげている。

 ○ギルドランクは、全部で下から順に8段階


 G→F→E→D→C→B→A→S(S・SS・SSS)


 ○モンスターランクも上記と同じ8段階


 ○クエスト(依頼分類)

 常時依頼・討伐(または捕獲)・護衛・採取、採掘・街中クエスト・ギルド特殊依頼(指名依頼・大規模討伐)


 ○依頼の受注と報酬

 ギルドが仲介、または依頼者にギルドカードと依頼書を提出、そして依頼達成のサインをもらい、指定されたギルドで報酬をもらう

 一部の依頼書を受理する時、報酬分の一割の契約金が生じる


 ○依頼達成(成功)・失敗、昇格降格

 冒険者が受けた依頼書を受け付けたギルドまたは最寄りのギルドにて、依頼達成(成功)・失敗に関わらず報告する義務がある

 成功・失敗蓄積数やギルド評価によって昇格・降格する


 ○義務、罰則について

 各ハンターランクの義務

 Dランクハンターから上のハンターランクは、ギルドからの適切な依頼をハンターの義務として定期的に受けなければならない

 G・F・Eランクには常時クエストを定期的に受ける義務がある


 「そして、ギルドカードは、街へ出入りする際、身分証にもなります。身分証(ギルドカード)を損失した場合、再発行に銀貨5枚を頂戴いたします。冒険者同士の争いは、暴力に発展いたしますとギルドは介入することもあります」


 説明を聞いてそりゃそうだと納得するナノス。

 犯罪を犯した者や身分証明書がなくてもまともな仕事にありつけるとか、冒険者にはノルマがないとか、強い人間が自由に振る舞るとか。文字に起こすとえらい酷くわかりやすい。だれもそんな組織がある国に住もうとは思わないだろうし、そんな人に仕事を任せたくはないだろう。ましてや冒険者なんて旅する人が大半だろう。想像でしかないが国を守るということには気薄のはず。まともに生活していればそんな事はないだろうから。

 けれど、冒険者ギルドが国々に根付いているのは、共存共栄できている証拠だろう。初代冒険者はさぞかし苦労しただろうとナノスは冒険者ギルドの歴史について興味が湧いた。

 

 「一部クエストを除き、クエストが失敗と判断された場合、違約金が発生しますからご注意を。

 それから、冒険者ギルドに所属している者が活動している国の法を犯す犯罪行為をした場合、その国の法に則って罰を受け、罪の重さによりギルドカード一時停止処分、永久停止処分、ギルドカードの剥奪および指名手配犯リストにのります。または数ヶ月の奉仕活動に従事すること。

 また、依頼者とのトラブルは、まあ例をあげると特殊クエストや貴族の方の応対ですか。によってはギルドが介入しますから御安心を。ですが、基本ご自身で対応を行ってくださいね。

 そして大規模討伐では、一定のランク以上または、必要な冒険者だと判断指定された場合やむおえない理由を除き強制してことにあたること。貢献度、報酬はその分加算されます。

 ギルドランクは達成率、貢献度などによって基本決まります。飛び級する方は何人かいたらしいですよ。堅実に命大事に行きましょう。

 パーティー組むことをおすすめいたします」


 マニュアルでもあるのか新規冒険者に合わせてゆっくりでいてすらすらと(そらん)じて説明する受付嬢さん。



 「クエストは3つまで一度に受けていただいても構いません。ただし、原則メインクエスト一つと常時クエストを含む雑用・採取採掘のいづれかです。クエストを受けなくても素材を買い取ることもできますので。護衛クエストで片道のみで戻らない場合、最寄りのギルドに行き更新手続きとクエスト達成の報告を必ずお願いいたします。失敗したとしても報告をお願いします。しなければクエストは無効となりますのでご注意ください……以上でご説明は終わりですが何かわからないところはございましたでしょうか?」

 

 異世界ものの作品に近いイメージとそれほど変わらなかった。


 「いえ、特には」

 

 わからない部分はなかった。分かりやすかった。

 わからなかったら分からなかったで、またその都度調べたり、聞けばいいと思う。


 「何かお分かりにならなかったり、お聞きになりたい事がおありでしたら、手前どもに聞いていただくか、右手に図書室を設けております。そこでは、冒険者に関する書籍のほかに、街の名前、伝記、簡易地図やモンスター図鑑などもございます。受付に使うことを言付けしてご利用ください」


 受付嬢は後ろを振り返り、ギルカードが出来上がったことを確認した。


 「ギルドカードができたようなので、銀貨1枚頂戴いたします」


 そして、ギルドカードが手元に来た。いぶし銀の多少傷ついても頑丈そうな名刺サイズのプレートだった。キラキラだぜ。デザインがかっこいい。

 プレートの左半分にはでかでかと大きくギルドランク"G"の文字が描かれている。プレートの右端にはバーコードのような線が刻まれている。

 

 「表にはギルドランクと名前です。裏には今まで行ってきた業績の統計・傾向を棒グラフ・円グラフで記し、依頼率が記されます。裏面は任意で隠すこともできます。今はまだただのカードですが、本人様の血を一滴たらしていただきますと、本人様専用、この場合、ナノス・ジョー様専用のギルドカードになります」


 と良い締め、スッと針を渡してくる。


 自分専用との言葉に気を良くしたわけではないが、ナノスはすんなりと針を受け取り指にチクッと刺しギルドカードの上に血を一滴たらした。

 針とはいえ、いきなり自傷行為をするのにもっと抵抗があるかと思うものだがそこはうまく持ち上げて気後れしないように促した受付嬢の話術に賞賛する。


 

 そして、すぐにプレートに変化が現れる。ギルドカードに血が吸収されると自身の名前"ナノス・ジョー"と刻まれた。


 「おぉ!」


 これには思わず感嘆した。ロマンあふれる仕様に少年心(こどもごころ)が胸を踊る。

 ハイテクな姿を見た。ギルドカードも言うところの魔道具なのだろうか。不思議だ。機会があったら調べてみたいものだ。 


 そんなナノスに受付嬢は微笑を浮かべて図らずも疑問に答えてくれた。


 「ある一つの魔道具の一種ですよ。ギルドカードは先ほどもご説明いたしましたが、再発行に銀貨5枚ですので、くれぐれもなくさないようにしてください。これで登録手続きは以上です。長々お付き合いいただきありがとうございました。今回担当した受付はレイアです。今後ともよろしくお願いしますね」

 と営業スマイルで締めくくる。今回担当した受付嬢レイア。


 魔道具を初めて見たナノスは、しげしげとギルドカードをもの珍しく見入っていたのをやめて、

 「こちらこそありがとうございました。改めてナノス・ジョーです、よろしくお願いします」

 とナノスはペコリとお辞儀をしてこの場を後にしようとする。


 

 「おい、そこのお前、ちょっとツラかせや」


 その時、呼び止められる声がした。



読んでいただきありがとうございました。

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