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7 占いオババ、キティー?

 「メイデーンの占いオババ?」


――メイデーン・占いオババ

 

 意識が吸い寄せられて進んだ先には一つのテントがあった。それは占い間。

 膝下辺りにある木の看板に"メイデーン・占いオババ"と若い女の子が書くような文字で可愛く描かれていて、いかにもそれっぽい雰囲気が出ている。

 

 よもやこんなところにとか、わざわざこんなところで占い場所やらなくとも良いではないかと思うのだが。しかし、RPGに出てくる奥まった場所にある名店のようだ。そう考えると奥まったところで待ち受けている人物、変人かもしれない。

 

 不思議だ。こういう場所はナノス的には余りというか滅多に行かないのだが何故か気になる様子。

 

 

 ナノスは興味本位で意を決して中に入る。


 「フェふぇフェ…ようきた。占っとくかい?」

 

 テントに入るなり、いきなり声をかけられる。まるで出待ちしていたかのように声をかけられて少々びっくりしたが、その声の人物を見つける。


 (しわがれた声からして、内心面白がってんだろうな)


 ――おちょくろうとする人の音色。


 四方隅にランプの火が不規則に揺らめく。中央には紫の布を敷いた台。その上には両手で抱えるほどの水晶玉が置かれている。

 その向こうにフードを被った人が座っていた。フードが邪魔して鼻から上は見えない。


 「わたしゃ、キティーだよ。キティと呼んでおくれ、キャ♡」


 ナノスは一時停止してしまう。思わぬダメージを受けたナノス。


 おばあさんのハートマークとか誰得だよ。


 「フェフェ」


 声と背格好からしておばあさんであろう人の息づかいがこの空間と相まって妙にマッチしている。


 気を取り直して、すでに胡散臭さが漂っているが占ってもらう。


 「ではお願いします」


 「はいよぉ。フェフェ」


 さっそく水晶玉にしわしわな手をかざす老婆。


 「むう〜、ふぬぅ〜フェ〜〜」


 声が漏れているのだが、大丈夫だろうかと心配になるナノス。


 「フェフェ…おかしいわ。ほとんど出てこない」


 「?」


 (今しがたおばあさんの声ではない声がしたような)


 つぶやき声に似た小さい声だった。聞き取れなかったが、どこかきれいな声。それこそソプラノボイス。

 いつだったか、音楽界のソプラノ歌手が魔笛を歌っているのを聴いた。相変わらず素晴らしい歌声だった。


 「フェフェ、めずらしいねぇ。あんたは」


 聞こえた声にもの思いにふけっていると、おばあさんの声に意識がそれた。


 占い終わったらしい。だが、めずらしい?


 「そうなんですか?」


 ナノスには心当たりがあった。なんせ今さっき"別の世界から(巻き込まれて)来た"のだから。


 「ああ、そうさ。まるで…今さっき生まれたかのようだねぇ、リセットとも思ったけれど違うわねぇ。何か大事な決意をして今しか見えない。生まれたのも誰かに巻き込まれてかねぇ。運命がねじれてる。でも正されて心強い誰かがあんたを守っているのははっきりと見える。それが誰かはわからないけどねぇ」


 「…」


 当たればもうけもうけと思っていたら、めちゃくちゃ当ててくるんですけど…異世界の占いってみんなこうなの?

 名を換えてナノス・ジョーとしてこの世界になじんだか?それも巻き込まれたのも勇者一行の召喚に…そして、心強い誰かが守っているのは創造神ラオ様だろうが確証はない。


 

 しかり、この男城ノ内道流でありナノス・ジョーだ。巻き込まれて異世界召喚された城ノ内道流。先ほど決意の時、創造神たるラオが祝福を行ったこと、元の世界に還すこと出来ず。代わり、城ノ内道流を世界に受け入れられる下地を作る。

 確かに城ノ内道流は名を換えてナノス・ジョーとして世界になじんだのである。


 「んん?当たってたかい、フェフェ」


 「…それで、これからどうなるか見れますか?」


 強い意志を持った目で問うナノス。かすかに不安定に揺れる瞳の奥を見てキティーオババは、


 「あ〜ん、なんだってぇ?」


 聞こえてなかったようだ。思わぬことにナノスは某コントのように力が抜けた。今度は大きな声で言う。


 「キティーおばあさん!これからどうなるか見れますか!」


 「あ〜ん、なんだってぇ?」


 「…これっかっら、どうなるかっ、見れますか!」


 「メシはまだだよ!」


 「…」


 ちがう!そうじゃない。某コントをやりたいわけじゃない。

 てか、よく知ってんな。いやいや、キティーおばあさんがこんなよくいるおばあさんというだけだ。そうに決まっている。


 そんなナノスを無視して、キティーおばあさんは続ける。


 「これからは波瀾万丈(はらんばんじょう)だろう。大事なのは"異界の心"と出ている」


 …キティーおばあさん。

 今までの様子とは明らかに違う。凄みというかオーラというか確信的な何かがキティーおばあさんから出ているのを感じる。

 豹変したキティーおばあさんに困惑する。



 「フェフェ」

 

 だが、いつの間にかキティーおばあさんの雰囲気が最初の頃に戻っていた。

 まるで狐に化かされたかのようだ。


 「本来はもっと占えるんだけどねぇ。中途半端だよぉ、だからお代はいらないよぉ。フェフェ」

 

 



 お代を払う受け取らないといった問答があったが、キティーおばあさんが聞こえない状態に押し切られ、ナノス・ジョーがテントから遠ざかってしばらく。

 

 テントの中で声が聞こえた。


 「久しぶりに人がやって来たから緊張したわね」


 きれいなソプラノボイス。

 

 「ふーん、ああいう人もいるのね世の中には。光が強すぎるものは良いけれど目に毒でもあるわよね。誰かに守られていてほとんど見れなかったわ。まぁあの子も良い子そうだし。また会いそうな予感がするわ。その時を楽しみにしてましょ…今度は本当の姿で」


 ナノスが途中聞き取れなかった小さな声の主である。


 フードから出てきたのは老婆の顔ではなく、美しい妖艶の美魔女。その人物は入り口を見ていたのだった。


 

 

よんでくださり、まことにありがとうございます。

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