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手紙


 ―城之内道流様へ―


 この度は召喚魔法陣のシステムエラーのため、城ノ内道流様に多大なご迷惑をお掛けしまして誠に申し訳ございません。この理不尽な此度の件にさぞ混乱と怒りがあることでしょう。伏してお詫び申し上げます。

 早速で恐縮ですが今回の一件をご説明させていただきます。

 本来、召喚魔法陣は5人の勇者一行の周りに人がいない時に発動いたします。しかし、こたびは城ノ内道流様が5人の勇者一行の近くにいた所、召喚魔法陣が外的要因により発動してしまい異世界召喚されてしまいました。

 発動中に介入、中止することは城ノ内道流様と勇者一行も危険にさらされてしまいます。失敗いたしますと別世界に魂と身体が適応できず自壊するのです。

 城ノ内道流様は召喚魔法陣に中途半端で召喚されたため、本来あるはずのない城ノ内道流様はとても不安定な状態でした。ですから(わたくし)が道流様に干渉し、そこで召喚されたあとに魂と身体を安定させることにいたしました。

 その際この世界に適応できるよう、魂を変換したため元いた世界には帰れなくなりました。

 一般人が別世界から来てこれではあまりにも生きるのに無情すぎると、このままでは心苦しく、創造神たるこの私がささやかながら祝福をいたしました。少しでも道流様が生きることができるよう、ほんの少し道流様の1番際立っているスキルを強化しました。

 道流様が今まで培ってこられた"気配"を"氣"というユニークスキルに。基本から応用まで幅広い使い方のできるスキルです。上手くご活用してください。

 現在は至るところで魔物や魔族の1部が活発になっています。そして、しばらくして魔族の中から"魔王"現れることは事実です。用心してください。

 最後になりますが、道流様にして欲しいことや強制するものはありません。自由に生きてください。戦うもよし、街に()もるもよしです。


 

 PS:本当にごめんなさい。召喚の隙をつけ込まれてしまってね。巻き込まれる前に回避できれば良かったんだけど、同族相手じゃ(わたし)にも出来ないことがあるの。

 でもでも、創造神たるこのラオが道流ちゃんに祝福、スキルをユニークスキルにまで引き上げたわ。もっとも道流ちゃんのスキルは元々ユニークスキルにできるものだったから手間はそれほどかかっていないし、これまでの道流ちゃんの努力の賜物だから胸張っていいのよ。

 それとスキルにはあまり知られてないようだけれど、“熟練値“ってものがあるわ。スキルの使用度、知識力と言えば良いかしら。もし同じスキルを持つ者が同時に使った時どちらに軍配が上がるか、それは熟練値が高い方が勝つの。でも使い方次第で上位スキルにも勝ってしまえるから過信しないで。ユニークスキルは道流ちゃんしかないものだから、修練次第で化けるわよ。瞑想が良いかもしれないわね。基本瞑想よ。

 

 これから大変だと思うわ 頑張ってね


             創造神  ラオより





「創造神ラオ様か…」


 創造神の名前をつぶやくと手紙はキラキラして消えていく。


 手紙を読むと消える仕組みだったらしい。


 

 めちゃくちゃ丁寧で対応がしっかりしていた。PS欄を見るに本来はほんわかしている神様なんだろうなと神様の姿を夢想する。微笑み手を振っているラオ様が目に浮かぶ。

 善神なのだろう。

 詫びを含むこの異世界で異物である自分が生きやすいように、もともと優れている能力の強化をしてくれて感謝する。

 目に熱いものがこみ上げてくる。

 理不尽に今まで人生に費やしたほとんどの時間がなくなったようで激しい憤りを感じるが全てがなくなったわけではない。

 幸い身体は健康だ。召喚の時もし身体に影響が出ていたらと思うとぞっとする。



 これからのことを考えなければ。


 「・・・・・・」


 前屈みになり膝に腕を置く。


 今から異世界の常識にすり合わせる事は無理だろう。常識とは生きてきて意識しないものだと思っている。知っていて当たり前なのだから。だから、どうしようもない。

 でも、適応できるモノもある。


 適応できるのは、生きること、働くことだ。


 

 

 「これから何をしたい?」


 自分自身に問いかける。ぐるぐる巡る思考を一旦脇に置いて、視界に映るもの、何処にも目を合わせず考え込む。


 とりあえず、生きること、当面の仕事を探すことにする。

 衣食住は大事だ。


 後は、あと…は…あれはーー!?



 

 急激に意識を視界に戻す。


 ぼんやりしていた視界にチラッと見えた人とは違う人種。


 ーー()()()()()()()()()()()()()()()()

   それ以外はあまり変わらない姿はーー




 「獣人…」



 もう見えなくなっていたが間違いなく獣人。異世界ならではの人種。異世界ものを嗜んでいる人のほとんどは一度はお目にかかりたいと思う人種。男なら女性の獣人を。逆もしかり。



 「・・・見たい・・・」


 自分自身に『何を』と問いかけるのは愚問だろうか。

 

 だがしかし、あえて問おう。


 

 ―何を?――――




    「『ファンタジーを!!』」


 城ノ内道流の心の声と口から出た声がものの見事に一致した。思っていることが口にまで出た、ある意味魂の叫び。



 城ノ内道流は今生最大で()えに燃えていた。


 

 幸い、この時周囲に人はいなかった。いたらきっと奇異の目をされたことだろう。




 「ふー…」


 爆発するほどの高ぶる感情を落ち着かせ、今一度これからのことを考える。


 だが既に決まっている。


 生きること、働く事は大事だ。それに、"異世界を謳歌する(ファンタジー)"目的を加えることにした。


 

 「決まりだ」


 前向きに生きていこうと決めた。

 

 したいこともできた。


 

 そうだ、これから第二の人生が始まるんだ。

 区切りとして、名を作ろう。


 新たにこの異世界で生きると決意したのだから自分だけがこの名前 城ノ内道流(じょうのうちみちる) を知っていれば良い。



 何が良いかと思案しているとステータス表示のジョブ欄に放浪者と記してあったのを思い出す。


 「放浪者…」


 この言葉をなんとなく気にいった。

 幸い歴史に興味あった時期に知った、とある言語に訳して。


 放浪者の意味を持つ「ナノス」、そしてシンプルに城を「ジョー」とありきたりな名前をつける。



 「ナノス・ジョー」



 「ナノス・ジョー…うん、良いんじゃないかな」


 と道流はこの名前と呼べるこの言葉が心にストンと入ってくるのを感じた。


 城ノ内道流を捨てるわけではないけれど、なんとなく他人には知られたくないから。

 愚にもつかない勘かもしれない。


 何よりナノス・ジョーって言葉を気に入ってしまった。


 これからは"ナノス・ジョー"と名を換えて生きていくことにしよう。




 「城ノ内道流は心の内にしまって道流はしばらくお休みだ。これからよろしくナノス・ジョー」


 とつぶやいた。


 そうして、押し寄せる感情をこらえるように晴れ渡る遠い空を見ていた。




 ――そういえば、ジョブの "放浪者(ほうろうしゃ)" ってなんなんだろうな


 今まで気づかなかった疑問に誰もその解を答える者はいない

 


 

 

 


 



 


 






 



ここまでよんでくださり、まことにありがとうございます。


ごめんなさい。

ここでしばらく打ち止めです。書き溜めがないので書いてきます。作者たるかうが遅筆なのもありまして、

楽しみにしてた方がいたら申し訳ないです。ブクマして更新をお待ちください。


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