22.どこも光、光が闇を照らし出す
依頼達成のサインをしてもらいコラーデン家を後にしたナノス。
その帰り道、今日あった出来事を振り返る。
「氣は上手く使えたのか」
ナノスは、右手を見ながらグーパーグーパーしてみる。
わかるようなわからないような、見えないエネルギー。あるのにない、ないのにある。感じるのにないと、気づくまで思っていたが今回あることを理解して体験できた。謎かけのようなものだったが気づけばなんてことない簡単なことだった。
ペンダントを拾った時の浄化の光。
清らかな川と太陽の温かな光を連想させる力だった。空気が澄んだのを感じたし、裏庭の薄暗さが消え明るくなった。きっと薄暗くなる前の本来の姿に戻ったのだろう。
きれいに整っていた裏庭は普段手入れしている庭師などの手で毎日行っていた。
空気が暗く感じた。自然の力じゃこうはならない。
実際集中する訓練法、ガトーム法でやってみたら、そこにペンダントを見つけたわけだが。
(あれ?ペンダントってクリスタルが黒ずんでたんだっけ?落ちてるだけで黒ずむか?仮に負のネガティブエネルギーだと仮定して数日で黒ずむものか?)
手渡した際、ミラディア婦人の話ではちょこっと汚れてるかな的な雰囲気だった。
あれはちょっとどころじゃなかったんじゃないか?
ミラディア婦人は黒ずんでいたクリスタルを見たわけではない。見たのはナノスだけ。
周囲に影響を及ぼすのはおかしい気がする。
(…まさかとは思うが、だれかが盗んだ?で、予想以上に力強くて手に負えないと悟った何者かは捨てた…ないな)
気にしても仕方ない。そういう風にすぐに水に流すのがナノスの良いところ。
それにしても浄化の光はきれいだった。ナノスは氣があることが判明してホッとしている。上手く使えるようにどうにかしたかったところ、今回の依頼のおかげで瞑想の他にガトーム氣法があるとわかったのは大収穫で、氣を明確に理解できたことも十分以上十二分に得した。
依頼受けてよかったと、心底思った。
ナノスはカツカツと鳴る足音に楽しげに聞いて歩く。
ようやく商店街に着いた。
人が行き交っている。昼と違い、行き交う人たちの顔ぶれが違うのは当然か。男が多く女が少ない。朝の商店街、昼の商店街、夜の商店街と皆顔ぶれが違う。皆自然に沿って暮らしている。いったいどれくらいの人が理解して暮らしていることか。
少しずつ街灯が付いていく。ポツポツと両端の歩道に立ち並ぶ街灯は夕暮れの街灯道をより美しくさせ、夜に移り変わる様子がまた美しい。
ナノスは少しばかり足早になる。歩幅が大きくなり、景色もよって早く過ぎ去る。しかし、どこかもったいなくて足の回転をゆるめて楽な早さにまで戻す。今だけの過ごし方に、上品に、目に映る全てに、尊い存在として感じていたい。
石畳に響く足音が楽しい。身体に反響する振動すらも心地よい。
男女の仲睦まじいやり取りがうれしい。
また、店のショーウィンドウを見ている女のような男の人につい笑ってしまう。
そう、笑う。知っている人すぎて笑った。
…ラビ。
ガラス細工が売ってあるガラス屋のショーケースの前に、棚を物色しているラビンズ・デボラことラビの姿があった。
ナノスは苦笑いしながらラビに近づいて話しかける。
「何してるの、そんな前のめりになって齧り付いて。何か目に引く物でもあった?」
「ん?んーあ、ナノスじゃない。ご機嫌よう。ちょっとこれどう思う?」
と、指差してショーケースにある一つのガラスに注意を引きつける。
「ガラスのグラスか。きれいだね。下の部分の手に持つところは切り子の技術かな?ほんときれい」
「そう、このどうやったかわからない切り口をどうにか真似できないかと思って。きれいだし普段使いにもしたい…ナノス!?この技術知ってるの?初めて見たけど」
「向こうの世界の話だよ。昔、ガラスとか陶器とか祭りで見たことがある。色をつけたり、複雑に模様を入れたりして研磨させてくいみたいだよ。芸術的観賞用に持っていた人もいるね。飲みながらきれいなグラスを見て涼んで心癒されたりするらしいよ」
ナノスは切り子グラスを所持していたことはない。当時は子供で、遊びたがりだったから茶器に目もくれず、おいしい屋台に突撃して食べていた覚えがある。
もっとも切り子グラスをじっくり見たのは大人になってからで、今見ている発展途上のグラスよりも美しかったのを覚えている。
「ああ、昔いたっていう…ふーん、そういうのもあるのねー」
話半分ようだ。目の前のグラスに夢中で。
目の前よりも良いものを見ているナノスには特に惹かれないようだ。
「これなかなか高いな。買うの?」
「うん。買うわ。いつもあるかわかんないし。こういう感覚は大事にしないとね。買ってくるから少し待ってて」
と言って、ラビは店に入り、店員を呼びつけ指差ししていた切り子グラスのことでやり取りしている。奥に行って梱包してもらっているようだ。
しばらくかかるようで、店内にいるラビと店員の様子を見ていると気づいたことがあった。
ラビはこの時間までこの辺にいたのか?
特に物を買った風でもない。別れて数時間が経っている。増えている物もない。もしかしたら、アイテムボックス的なものを持っているかも知れない。ものすごく高いらしい。
家兼工房に一旦帰宅してまた来たのか。ラビの性格からしてありそう。しかし、それでは二度手間でナノスだったら明日に回すが、それは比較的自由が効く冒険者の発想。職人も自由度は有りそうだが、明日は仕事だろうし、自営業でいくら融通が効くと言っても、仕事は多数の依頼が立て込んでいると言っていた。
やはり、気持ちとしては待ってくれていたのだと思うとうれしいがあって、感謝したい気持ちになった。
カランカランと、出入り口のガラス細工の呼び鈴が鳴り、ラビが出てきたことを知る。
「お待たせ。ナノスはこれから買い物でもするの?ギルドかしら?それとも宿に帰るの?ひだまり亭って言ってたわよね?」
「そうだな。ギルドは明日一でいいし、特に決めてなかった。ひだまり亭に帰ろうかな…それと、ラビ待っていてくれたんだろ?」
「まったく野暮ね、貴方は。ナノスと私が知っていればいいじゃないの」
乙女心がわかってないわねとそっぽを向く。
言わずにはいられなかった。
「伝えなければ伝わらない時があるだろう。確かに乙女心はわからないが、素直に感謝されるのはうれしいだろう?」
そう聞いたし。ナノスは感謝してもされてもうれしい気持ちになる。だから、行動して口に言葉として出した。
感謝されてうれしいことから、思わずありがとうと言っている時がある。
「そうね。その通りだわ。ありがとう。どう、この後近所で飲まない?宿でもいいけど」
「そうだな。いい人たちに会えたし、すこぶる気分が良い。酒は弱過ぎて飲めないが、ご飯食べよう。おいしい所があったら教えてほしい」
「決まりね。じゃああの場所に行きましょ。結構穴場なのよ。なんせマスターがーーー」
と、二人は笑いながら、夕陽に向かって歩き影を落とす。
たわいない話や今日あった出来事、面白い話を面白おかしくするだろう。
基本一人の御飯時。語らい合うご飯もいい。ナノスは今日も幸福な日であった。
脇道
???「正義の勇者で悪を断罪する!」
???「断罪するお前が悪だろうがっ!!」
母なる神「わたくしは分つことなくすべてを与えています。どちらも我が子であり、わたくしなのですから、全てが愛おしいのです」
???「仲良くしよう」
???「ああ、そうしよう(さっきまで争ってたじゃん、どの口がっ)」
母なる神「仲良ういたせ!!」
???「「はいぃぃ」」
母なる神「わたくしにも怒りはあります。おこる時はおこりますよ。堪忍袋の緒が切れると言うでしょう?」
???「「(くわばらくわばら)」」




