21.そっくりそのまま、思考が湧いてくるのに任せて感覚に従って信じて進もうか
薄暗い陰気が漂っている。
館の裏側にある裏庭に着いて早々周囲を見て回るが、今までよりもお嬢様が通った場所をゆったりとした足どりで案内される。
花壇に花か野菜の類が植えられている。石畳を跨いで向こうに見える草は芝生のように切り揃えられていて素足で歩けば気持ちよさそうだ。
さらに奥を見ると、木が等間隔に植えられており見えにくいが壁がある。おそらく塀だろう。
それと近しい場所にプレハブがあり、その隣に小屋がある。
全体的にほどよく手入れされてある。表の客態用とそれほど差はなく、裏には客は来ないけれども見られても良いように毎日の手入れが入っていることが伺える。
ぐるっと見渡してみる。ここにありそうな気がするが、陰気が漂っているためかわからない。
特殊なペンダントだ。
時間がかかるかも知れないがよろしくお願いしますと侍女に言付けして探索にかかる。
(きれいに植えてある…家庭菜園感があるな)
もしかしなくてもお嬢様とか一族の誰かが庭で草いじりをしているのではないかとナノスは思った。おおよそ合っているだろう。夢中になっているうちに置いたことを忘れてしまったとか普通にあり得る。
気になっていることに侍女がここ裏庭に移動するに限って足取りが遅かったような気がする。今思えばだが。おかげでこの辺りの景色を比較的ゆっくりと見れた。野菜や花、今の時期に実っていたり、花咲いているからきれい。時期に合わせて見所ある庭師のやり方ではなく、趣味や好きがこうじてしている感じが伝わる。好感持てる。
ーー…一通り探したが見当たらない
隠れているのか?
そう思うには訳があった。
ここ裏庭に来た時、陰気な場所だなとナノスは思ったと同時に、人為的?人口的に作られた陰気かと感じていた。だとしたら、信じる。今まで感じたことは最善と過程が違ったが、結果が同じだったから。
気の探り方(ガトーム集中法)を試すことにした。
見つけた時の想像
喜んでいる
感謝言った方がいいかも知れないからくわえておく
言葉にする
言霊に力あり、クリスタルペンダント見つけた。やったね。手にとった。やったね
あったと言った
ありがとうと言っておこうかな
行動はどうか
見つけるから見つけた
歩いている
少し暗くなっているペンダントを見つけた。やったね
「あった」
と言葉を発していたのと同じく、手を伸ばしていた。
野菜が植えてある手前から四段の三段目の畝の入り口に近い場所にあった。入り口からだとわからない。ちょうど草草、すくすく育って十五から二十センチくらいの丈の一年草たちによって隠されていた。
ほっと安堵した。手に取ったクリスタルペンダントは少し土汚れや黒ずみがついている。
ナノスは親切心で、自然に汚れをぬぐっていた。
(きれいになりますように)
と祈るかのように。
敷地内で見つかってよかった。見つからなかったらどうしようとはつゆにも思ってなかったが。それにしてもミスリル銀はきれいだな。クリスタルはどうだろうかとまだじっくりと見てなかったナノスはひっくり返そうとする。とその前に文字が裏に施してあるのをみとめた。
「えーと、我が宇宙。宇宙は我。最愛を我が最愛の者へと注ぐ」
とある。愛文?誓いかも。
丸とか十字架の記号で記してはあったがそれが文字として読めた。
意味がわからず不思議そうにナノスはペンダントをひっくり返し表のクリスタルを見た。すると、とたんにペンダントが光り輝く。
突如のことにナノスは驚いた。ナノスが驚いている間にもより力強く輝く。止まることなく広がり、ナノスをすっぽりと覆うくらいの大きさに治まり、光の粒子のようで光の霧のような線の光のような輝きがゆっくりとナノスの周囲を回り続ける。しばらく光の量子が回り続け早送りのように白のクリスタルに戻った。
白のクリスタルは最初見た時以上の純白のクリスタルに変わっていた。この場合は元の元に戻ったとなるのか。ナノスはとりあえず命があることに感謝した。
その光景を見ていた侍女は清らかな光だったので心配してなかった。だが最初の光光った時、遠くの方から可愛らしい叫びが聞こえていた。
ナノスは立ち上がる。侍女が近づいてきた。
「今のはお嬢様のクリスタルペンダントですか?」
と興奮している。声が弾んでいる侍女は、ナノスの手のひらに乗せてあるクリスタルペンダントを見て安堵している。
「ジョー様、お怪我はありませんか?ものすごい光でしたね」
ナノスの安否を確認してくれる。
確かにすごい光だった。優しい光に心洗われた気がする。
それはそうとナノスは謝罪の言葉を口にした。
「申し訳ありません。見つけられたのが嬉しくて、思わず手にとってしまいました」
注意されていたにもかかわらず、安易に触れてしまったのだ。忘れていたと言い訳も通らない。ただ申し訳なさと無事ペンダントを見つけ出せたことに満たされている。
ハンカチの上に乗せているペンダントを見て、侍女はこう言った。
「無事にお嬢様のペンダントが見つかって何よりでございます。触れたことについては私が判断することではございません。ただ私個人としては必要以上に気に病まれませんように」
微笑みがありがたい。ナノスは幾分かくすぶっていた気が晴れた。
侍女は執事長に報告に参りますのでテラスでお待ちいただけますかと、テラスに再び案内され、侍女は館の中へ入って行った。
ナノスはハンカチに包んだペンダントをテーブルの上にそっと乗せる。
じっと見つめた。
気を掴めたと思う。何が何やらなのだが物にも気とかエネルギーがあるんだなというのが率直な感想だった。もちろん依頼通りペンダントを見つけられて良かったが、あの光る現象には経験したことがないのでびっくりした。綺麗だったけども。良くも悪くもそれらを反芻して腑に落とす。
そうこう反芻しているうちに、主人と執事長、侍女が戻ってきた。それに気づいたナノスは席を立って迎える。
「ありがとう」
一番にこう言われた。そして、見つけてくれてありがとうと三度礼を言われる。
慌てるナノスを前に執事長や侍女が主人の姿に習ってお辞儀している。勿体のうございますとナノスは言って頭を上げるよう促す。
頭を上げた際の穏やかな表情に印象に残った。
「あなた方のお役に立ててとてもうれしいです」と、なかなか好意をもらう機会がなかったナノスには勇気がいった言葉だったがとりわけ素直に好意を受け止められた。
促されて席に着く。
そして、ナノスには申告せねばならないことがあった。
「申し訳ありません。注意されていたにもかかわらず不用意に触ってしまいました」
「聞いていますよ。確かにナノスさんの不注意ですが、ナノスさん貴方は大丈夫?」
ペンダントに触って光って何もないわけない。どこか悪くなったかというような想いと汲み取ったナノスは特に変化はないと言う。
「輝きを元に戻してくれてありがとう。孫娘に上げたばかりのペンダントは肌に離さずつけておかなければいけないって言ってても忘れてたのでしょう。まだつけ始めたばかりだから」
うんうんと頷いて続きをきく。
「でも、これでうれしそうな孫娘を見ると心洗われるの。あの子もうれしそうにペンダントを見ては目をキラキラさせて体全体からうれしいって表現してくるの。見てるこっちもうれしいたのしいのよね。裏庭にあったと聞いたわ。ナノスさんが手に取った瞬間、光り輝いて裏庭全体が浄化されたとも。近くにいたトマスはすぐに気づいて私のところに来たわ。報告を聞いていても立ってもいられなくて貴方のところに来たわ。本当に感謝しているの」
浄化
あれは浄化の光だったか。
それについても詳しく知りたかったが伝えねばならないことを意を消して言った。
「感謝をありがたく頂戴いたします。しかし、幸い私の身体も周囲も異常ありませんが、私の不注意があったのは否めません。報酬額を下げてもらってもかまいません」
「とんでもないわ。確かに安易に触れてはいけないとは言ったわ。ナノスさんの身の安全と周囲に被害を出さないために言ったの。それに、少しの間なら触れても大丈夫とも言ったわ。トマス、そうでしょ」
「ね?だから、だから報酬もしっかりと払わせていただきます」と言って婦人は微笑む。
「見つけられて良かったわ。もし、悪い気を放つペンダントになっていたら、聖職者に見てもらって浄化していただかなければならないし、その分時間がかかるでしょう?ペンダントは、向こうに嫁ぐ孫娘の元へ一刻も早く届けなきゃいけなかったからすごく助かるわ。近々結婚式する予定らしいから息子家族と出立したのよ。ん、そうだわ。トマス。報酬額は下げたらナノスさんの評価下がるでしょ。上げたらどうなるの?」
「そうですね。今回指名依頼させていただきました。評価が下がれば失敗ではありませんが当会長と折り合いつかなかったとしてナノスさんに今後このような依頼が出来なくなるでしょう。ギルドは今回の件についてなかなか渋っていたと当会長バリエル様から伺っております。ギルドは何かしら探っているのでしょう」
執事長トマスと目が合ったが心当たりはあまりない。確かに登録した時は紹介状付きだったし、今回の指名依頼はレイアの反応もそう言えばそうかもと感じた。疑えばキリがない。
考え込むを見てナノスをチラリと見て話を続ける。
「逆に評価を上げればコラーデン家、当商会とのつながりが出来ます。要は後ろ盾です。時にこの盾を前に出して良いですよ。正当性あればですがね。そして、ギルドは良と評価されたことを適当に当たるしかなくなります。そうしなければ成り立たなくなるからです。もっとも王都支部の冒険者ギルドマスターはそんなことはなさられないと思われますが。大事なのは信用信頼です。この人は誠実ですとミラディア様はもちろん太鼓判を押したいのです。我々の感謝の意を受けていただけますね」
うんうんと頷いてミラディア婦人はよく言ったと言う顔をしている。
侍女もニッコリ笑っている。
「世間は評価をしなければ見てもらえず、かといって正しくない嘘の評価をすればズレて不幸に陥ります。これはどう思うかで不幸か幸福か自分で選べるのでなんともないのですが。報われて欲しい人には評価しなければなりません。評価したいのです。この人は素晴らしい人ですと。あなたは評価されてしかるべき人です。自分自身に自信を持ってください。そして、もう少し自分に優しくしてもバチは当たりませんよ」
そうか、俺はこういう風に思われてたんだな。自分自身を騙して、人の後ろについて尻拭いをして来た。回された仕事は膨大でいつもぱんぱんだった。誰も周りにいない。認識されない人であって大多数の人が合わなかった。同じ空間に居るのに認識されない人それが俺だった。
ここ異世界に来て不幸と思ったことは最初だけ。全てが新鮮で楽しい毎日。
友達ができた。力を磨くのは楽しい。面白いことだらけだ。
「ありがとうございます」
そう言ってお辞儀をする。そうしないと目から涙が溢れそうで見られるのは恥ずかしい。馬鹿にする人たちでないのは十分に知りえている。
直ぐに上げられない頭。ただ少しこの姿勢で喜びにひたっていたい。
ただそれだけ。
最善を尽くしている、最善を尽くしているんですよ!
苦楽の真ん中に居ることはなかなか難しい。今まで忘れていたことだから。必要なことですからやりますよ。楽しんでます!この先の末代まで役目が決まるようなので、今ここでしかと役目を繋いで見せますよ。見てくれてありがとうございます!
あと明日は予約投稿してます。気になる方はぜひ続きをごらんくださいませ。




