20.正直ものはバカを見るって?ないない。だってそれすらも因果だもの
「ただ、昔ね、偽って所持した者がいたみたい。で、結果だけ見れば周囲には悪影響はなくて、所持した者がそれ相応の因果受けただけで終わったのだけど、それは酷いことが起こったらしいわ。あまりに酷くて周囲にいた人たちがパッと引いたみたい。何が言いたかというと、因縁因果の報いを受けたみたいなの。生まれ変わり死に変わりしてきた物事、過去や未来行ってきたことこれから向かうことまでも集約して。」
…それは強力だな。
相応しくないものには己の行いが返ってくるともとれるが、逆に相応しいものにも相応しいなりの因果を持って応えると、そういうことか?
「正統保持者にとっての相応な思いと偽者の思いは違うでしょ?偽者や偽善者は持ちきれないほどの因果を抱えて自滅するの。探し物のクリスタルはそれが本人の願いだったから叶えた、それまでなの。分相応よ。」
恐ろしいように聞こえるが、そうでもない。
身の丈に合ったものはすでに有り余るほど与えられているのだから、それ以上持ったら器に見合わない水の量が溢れて、てんやわんや踊ってしっちゃかめっちゃかになる。
与えられているものに感謝せずして何が親不孝か、か。
「例えば、権力者が他のために力を使うものか自分のために使うものかで善にも悪にも変わっていく世界なのよ。そうなれば、選ぶものにも責任があるとなる。何を選択するもの自由だけれども、天使の皮を被った悪魔を選べばそりゃあ悪くなるわよね。だから見極める力が大事よ。真実を知りなさい。知ろうとなさい。さすれば与えられんかしら?」
思考の放棄や凝り固まった知識での現状維持は変わろうとする意志を見失ってしまう。
世の中には真実を知って実行している者たちがたくさんいる。そのものたちに教えをもらいなさい。見極める力を与えてくれる。
ただし、真を教えるものに混じって偽者がいるから気をつけなさい。
真を教えるものの言葉には良薬口に苦し、偽者の言葉は必ず違和感がある。甘い言葉には毒があるよ。
事実、真実が広まれば争いはなくなる。真実を知る者だけの世界となり偽者は恥ずかしくて表に出ることができずいなくなってしまうからね。
「だから、祝福とも言われ呪いとも伝わる"真実のペンダント"。ちなみに、クリスタルと波長が合わない人は健全な人ではないと知れるわね。色がね、こう変わるの。純白がどす黒くなる。つまり、いい人か悪い人か判断してくれる。魂魄鑑定してくれるわ。ありがたいでしょ」
滅多に人に貸さないけどねとミラディア夫人は言う。
ここまで思考が高まっていた気がするし、得られた知識が経験になって帰ってきているように思う。…少し詰め込みすぎた気がしなくもないが。
確かに曲解されたらたまらない話だな。
人の因果を背負うのは身も心もきれいな人でないと務まらない。もしも、偽者が持てば自分とペンダントの正統保持者、もしくは代々の正統保持者の思いが合わされば数十にのぼるか。持ってすぐは甘い蜜だろうが、だんだんと苦しくなってにっちもさっちも行かなくなってしまいには自滅。
しかし、正統保持者が所持しているおかげで、一族や周囲にいる縁深い皆々すべてが恩恵を受けるのだろかとナノスは思った。
「思入れあるペンダントなのですね。きっと、とてもきれいなのでしょう」
「ええ、ええ。きれいよ。クリスタルを見れば心洗われてうれしい気持ちになっちゃうのよ。とにかく、見つけてほしいわ。探し物を家のものに探してもらったけど見つからなくて。庭にいる時に落としたと聞いているから、庭にあるのでしょうけど。なんせ広いから。今は人もあまりさけなくて。依頼を受けてくれるとありがたいのだけど、受けてくれるかしら?」
困っている人がいるのなら、喜んで助けよう。感謝を与える、いただくの相互作用だ。
「もちろん。必ず見つけましょう。安心してお待ちください」
「ありがとう。お願いするわね。ペンダントの特徴なのだけどーー」
拳より一回り小さい白のクリスタル
ミスリル銀と金細工のアミュレット
首飾りの紐は植物性のヒモ、原材料:ポポタン
「ーーと、ミスリル銀に白のクリスタルがはめ込まれているの。一つ注意点があるわ。もし、見つけても澄み切った白のクリスタルが少しでも汚れているなと思ったら、手に取らず見つけ次第執事長か侍女長に言ってちょうだい。」
そう言って紹介された後ろに控えている男女はお辞儀をする。
「万が一触れても短い時間なら大した影響はないから。」
「特徴あるペンダントですね。わかりました。では、落とした場所に心当たりある場所または、お孫さまが歩いた庭の場所をいくつかお教え願えますか?」
「そうねぇ。所持者は孫娘なのだけど、うーんと…トマスあなたたちならわかるかしら?」
控えている執事が返答する。
「はい。お世話しておりました侍女には見当がつくでしょう。事前に、私共に伝えられておりますが、当人らに今一度聞いてまいります。」
スチャとお辞儀して館の中へ歩いていった。
「じゃあ、トマスに詳しい場所を聞いてちょうだい。そのうち案内役を遣わすでしょうから、その子と一緒に行動していただくわね。さあ、待っている間続きのお茶をいただきましょう」
そうして、お茶を促されお茶会が再開する。
控えている人たちに見られながらお茶するのはなかなか緊張するが、楽しいお茶会が続いた。
取り留めのない話やナノスの苦労話を元にした経験談に、冒険をしたあれのことなど話しこみ、執事長トマスが戻ってくるまで続いた。
◇
楽しいお茶会を終え、執事長トマスに案内役の侍女を付けられて捜索範囲の庭に来ていた。
事前に聞いている捜索範囲の庭は、四つ。
噴水庭、広場・木々、テラス、裏庭の隠れ菜園。
ナノスはとりあえず近場から探してみることにした。
「何か御用がおありでしたらお呼びください。」
と、伝えること伝えて少し離れた場所に侍女は待機した。
まずは噴水庭に連れて行っていただいた。
ナノスは時折じっと足元を見つめながら地道に歩いて探索する。
石畳に囲まれた噴水。霧粒の水飛沫が噴水から打ち上げられ、宙に消えていく。また地に落ちていく。
目に映るは緑と陽の輝きと水の調和。草草に降りかかる水飛沫は日の光が当てられて小さな光の玉粒となり彩る。風が吹けば草草が揺れて瞬く間により一層と彩り鮮やかだ。
どこからか花を運ぶ風が来た。たかだかひとひら。一叢からやってきたのか、その辺の一輪の花なのか。想像するは楽しい。
心あらわれる大調和がそこにあった。
「きれいだな」
ナノスはそうつぶやいた。
そのつぶやきを侍女が拾うことはなく静かに佇んでいる。もはや背景と化すほどの存在の埋没具合だ。
仕事熱心かもと尊い姿に気取られていると、
「どうかなさいましたか?」と侍女がたずねてきた。
意識していることを悟られたかと思ったナノスは、素直にこう言った。
「本当にこの家に奉仕されていらっしゃるのですね。あなたの献身に感銘を受けていました」
「…そうでございますか。恐縮でございますがありがとうございます。庭師にお褒めの言葉を頂戴いたしましたとことつけいたしておきます」
素晴らしい。侍女は自分に言われた思っているにも関わらず、他の誰かの意志を尊重している。真の奉仕者を見た気がする。
主人はもちろん、客に同僚に草木に、はたまた獣、虫までも敬意を抱いているかもしれない。獣と虫は言いすぎたか。
気を取り直して、噴水庭の周りを探索する。
…しらみつぶしに探すが、見当たらない。
ここにはないようだ。
「次の場所に行きましょう。ここにはないようです。」
「かしこまりました。では次の場所へご案内します。次は広場、テラス、裏庭がございますが、どこへ向かいましょうか?」
木々ある広場に裏庭、テラスか。気になったのは広場に裏庭だった。だが、先に広場にするか、後にするか。
…よし、次は広場にしよう。
「広場に向かいましょう。案内をお願いします」
「かしこまりました。ご案内します。こちらです」
侍女が歩く少し後ろについて歩く。
景色に見惚れつつも、付かず離れずついていく。
全体的にこの屋敷は緑が多い。また、花もギルド図書を少しかじっただけのナノスにもわかる効能ある薬草の類いが植生している。
あれは"自然農法"と言うんだったかとナノスは地球にいた頃のいつかの休みの日に気になって調べた記憶を辿る。
畝とタネを植える以外ほぼ全て自然に任せる農法。そんな、できるわけあるかと疑問を持つが、当ナノスが経験済なので、答えられる。
できる
断言する。これを経験した時思わず誰かに感謝したとも。
これまでの農法農薬の類いが、資本主義によって歪められた金儲けシステムだと確信した日が、野菜の実った日だった。皆知っていただろう。当たり前だが。人が手を加えなくとも自然は生きていく。人が切ったり川の流れを捻じ曲げて邪魔するから人工災害となってあらわれると理解した時は反省したとも。人体も同じだった。国も同じだった。阻害するものを入れたから病となってあらわれると知覚したとも。
その日以来、徐々に資本主義お金ありきの生活を広い視野を持って、自ら食し、吟味して体に良いもの、身体がどこかしら反応するものをわけていった。生かす生き方に大きく方向転換したわけだな。そうしたからこそ、社畜になっていてもすこぶる身体は元気だった。ようやく気づいて他に手をつけようとした矢先に、勇者一行召喚に巻き込まれたわけだが。
ついつい思いふけっていた所で目的の広場に着いたようだ。
「ご到着いたしました。では、御用がありましたらお呼びください」
と言って広場の入り口あたりで待機した。
(さてと、広場に来たわけだが、ついた早々違和感がする。何がとはっきりとわからないが、モヤモヤしてすっきりしない感じ。なんなんだろうな)
ナノスは何とも言えない感覚を感じとっていた。 しばらく思考してみると、わかった。この感じはこの世界に来て名前を換えた時の感覚に似ている。あれは綺麗な水で清められたような気持ちの良い感覚だったが、ここで得た感覚は綺麗な水にレモンを入れたレモン水ような爽やさだ。良いものの気配を感じる。
この感覚は受け入れれば良いことをナノスは知っている。この感覚の先に何かがあるだろうから。
だから、受け入れて感じるまま思うがままに歩みを進めることにした。
(何があるんだろ?)
気になってしまえば匂いがあると意識してしまう。ナノスは意識が引っ張られないように歩みに意識を集中させる。
思考は常に流れ続けるもの。思考を繋ぎ止めることと現実の歩みの両方を同時進行することは難しい。スタスタ歩こうものなら思考と結びついている感覚が途絶えて消えてしまう。反対に思考に意識を傾ければ歩くのがおぼつかなくなる。
側から見れば牛歩並みの歩み。
なかなかに苦労して歩いている、そんなことをちらっと思った。その瞬間、ふと、愚にもつかない思考が降りて来た。ナノスはその思考をより感じとれるように立ち止まった。
「……!」
ハッとなって氣づいた。
そうだ。任せればいいんだ。
昨日やった通りのことをやれば良いんだ!
いまだ覚えある解体した時のゾーンのような状態。うさぎ肉の解体だ。肉を想像し、ガトームの動きを模倣し、身体を無になって動かしたあの感覚を。
感覚を繋ぐには意識に集中する。
次に模範だが、これは言葉、力を借り受ける。
ガトームは言葉を使わず、行動してみせた。
その行動を言葉に変えると、スーチョンチョンプリンだったことだろう。
だからナノスは心の中でスーチョンチョンプリンと言っていたし、そのあと集中して解体している中ぶつぶつと祝詞を唱えるかのようにスーチョンチョンプリンと言って解体していた。
言葉は思考と現実を結ぶ架け橋となる力がある。言霊とも呼ぶ。音霊、音の響きも良い。
しかし、そう、ウサギ肉の解体でやったとおりに行えばできる気がする。そう思う。そう思えばナノスは実際に実践することにした。
まず、心。感覚を掴むには意識に集中すること。
先ほどのハッと気づいた時の感覚を思い出す。そしてまるで深海に潜るかのように没入していく。この感覚と好きなことをして没頭している時の感覚はほぼ同じだ。およそ入り方が違うだけだろう。
であるから、ナノスは目を瞑り屋敷の風景に感動していた感覚に意識を集中する。感想と感動を写し取りそこから噴水庭の景色を一点に思い浮かべた時のそこで味わった六感をなぞる。
ひとところからXのように交叉する噴水庭は
打ち上げられた水はキラキラして綺麗で
風に溶け込む水飛沫は涼しい風となり
芝生に落ちていくだろう
陽の光はそれらを彩り明るさと熱を与える
一瞬一瞬同じ映像はない
それからこの広場は木々のさざめき
木の葉や枝の影は地で揺れる
芝生で気ままな風が遊んでいる
大調和はそこにあった。ナノスはもっと感じていたくてその場に座った。
次、今の風景に感じ方感覚目鼻肌耳六感を使って感じ入る。そして、感覚を言葉にしていく。
木々葉っぱが揺れてザーザーサーサー揺れる音。創造
樹木の影には涼しい風が通る感覚。創造
地を踏めばザッザッ砂石土草がある。創造
それらを凝固凝集を幾度も繰り返す。何積みもの重合統合を繰り返し、ハニカム構造を縦横斜め縦横無尽に走らせる。
そして少し想像する時所を拡大する。密集している木々と芝生の整えられた広場との境界線には光と闇がある。広場から見れば、木々は暗闇。涼しい風湿気った空気。薄暗い木々の側から見れば草草は光り輝き、暖かい風ぽかぽかする空気。
随時、対向発生した差を感じ入る。
光あればこそ闇は存在を許され、闇があるからこそ光がより栄える。両者は絶えずして重合統合とを繰り返す。
ゆっくりとナノスは目を開ける。そこは想像と変わらない景色が広がりを見せている。当然だな。
ただ唯一、知らない物があった。違和感は必ず仕事をしている。感覚とはアンテナの役割を持つ。
正体を確かめるため大木の影の方に歩いていく。
存在感を放っていたそれは花だった。
一輪のこの花は立派に咲いていて、力強いエネルギーを感じる。明るい花。
「この花は薬草だな。きれいで可憐で力強い」
効力は神秘の力を引き出す。植生環境がわかっていない薬草だと本に書いてあったのもあり覚えていた。マグヌエルシリーズの薬草図鑑で見た。
遠目ではそのへんの花と一見して見分けがつかないが、ナノスには氣によるエネルギー質量を感じ取れるために誤認することはないだろうが一般は判別しづらいだろう。
青花なのだ。光加減で緑色をした花に変化する特殊花に分類される。
アローブルー。
光よ射よ青にという意味で花言葉は、青春・一途・真実(の愛)。裏言葉は断罪・潔癖・頑固。
あまりにきれいでじっと見つめていた。
そうしていると、どこからともなく声をかけられた。
「ナノス・ジョー様っ、いかがなされましたか?」
振り返るとすぐそばに侍女がいた。
「あ、あーいえ、花を見ていたんですよ。あまりにきれいだから」
「そうでございましたか。長い間一点を見つめておられたのでお声掛けしましたが、邪魔をしてしまいましたでしょうか?」
心配と配慮を怠ったと申し訳ない顔をしている。
「心配していただきありがとうございます。この通り元氣です。とそうだ、この薬草はどうされますか?珍しい花の特殊花のアローブルーだと思いますが、一応お伝えしときますね」
ほっとした表情の次には疑問符を浮かべて、アローブルーとは何かを聞いてきた。
薬草知識は一般には知られていない。
「アローブルーはですね、他のポーションに混ぜるとそのポーション自体の効果を大幅に増幅する効力を持つ極めて特殊な薬草です。花びらが光によって青から緑に変わる花なんです。ほら。」
ナノスは花の茎部分を持ち光の反射角度を変えて見せる。
「まあ!本当でございますねっ!」
キラキラした目に可愛らしい笑顔を見せてくれた。ほんの些細なことでもそんなに喜んでくれると思わなかった。うわぁと感嘆の声を上げて自分で角度を変えてコロコロと表情を変える侍女。彼女のうれしそうな表現にナノスも釣られてうれしくなる。やってよかったと。
彼女の表情が一巡して収まり静かに見始めたのを見計らってナノスは穏やかな声をかけた。
「一度、庭師か薬草に詳しい人に見てもらってください。」
はっと気づいた侍女は襟を正し、頬が少し赤くなった顔をすまして、
「コホン、かしこまりました。後で詳しい者に聞いておきます」と言い、お辞儀した。
顔が上がった際にも顔がほてっていたがうれしいこと美しいことが共有できてよかったとナノスは改めて思った。
「まだ少しこの辺りを探索します」
とナノスが言えば、かしこまりましたと言って彼女は元の控えていた位置に戻って行った。
ナノスはそれから探索を再開した。
しばらく探してみたが、ここ広場には探し物はないようだ。
次へお願いする。
そうして移動し、「次の場所はテラスになります。それではご用のお有りの際はお呼びかけいたしてください」と言って、侍女はテラスの端に待機した。
噴水や広場と違ってこぢんまりとしている。大きな場所2つ回って今ココであるからそう思うのも無理ないことかも知れないが、ここテラスも大半の一般にとっては家よりも敷地が大きいだろう。少なくともナノスが泊まっているやすらぎ宿より少しばかり大きいと感じる。
お屋敷に必要な場所だからかここもそれなりに広い。
と感じるままに伝えているが、ここは先ほどまでお茶会をしていた所である。
ナノスはテラス周辺を歩きながら見渡す。
ここでは特に何も感じることなく、噴水庭や広場と同様に探すが探し物のクリスタルペンダントはないようだ。
あと一つは最後の場所、裏庭に向かう。
あると良いがどうだろうか…
公園に行った日がありまして、満開で一叢だったんですよ。で、きれいだなって歩いていたら、行く先先にクマバチにエンカウントしたんですよねー。戦うを選択することなく、さけて通るんですけど。あいつら、元気にしてっかなー。
こういう時、ド○クエやポ○モンのびーじーえむが脳内再生したのだが共感してくれる人はいるだろうか…




