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本日2話目です
ぞろぞろと兵士に囲まれた集団が謁見の間に行くための道のりを歩いている。
高校生5人と城ノ内道流は先に出て行く人たちを見てしばらく、ひげが長く光沢ある杖を持つ老人に部屋を出るのを促された。
王様であろう人と側近ぽい人が兵士を半数引き連れて部屋から先に出て行ったが、色々と話すことや迎えるための準備がいるのだろう。それなりのしきたりが必要だといえる。
城ノ内道流は廊下にお高そうな壺や壁画、絵画が飾られているのをキョロキョロとはしたないと思いつつも見ていた。
正直これらの何が良いかわからないが、王国あるいは王族の権威を来賓する者に知らしめるためだということだけはわかる。
(あちこちに調度品がある、そこまで貧困してるわけではないんだな。いったい何が原因で召喚したんだ?)
この男は、得られる状況である程度の予測、情報収集をしていた。ちゃんとやれることはやっているようだ。
完全に周囲からはおのぼりさんだと見られているが、そんなことは気にしていない。見られている事は分かっているし、少しでも情報集めたかった。
おのぼりさんのように振る舞うのも、ほかの思惑で打算があるからのようだ。
「珍しいかな?」
「え?あ、はい。どれも素晴らしいです」
微笑ましかったのか隣にいた杖を持つ老人に城ノ内道流は問いかけられる。
話しかけられたことに驚きつつも、ありふれたお世辞を返す。
さすがに問いかけられた後は周囲に視線をさまよわせるのをやめた。それでも時折チラ見している。
「よいよい、お、そうじゃ、名のっとらんかったのう。わしの名はキトロス・ヴァールアンじゃ」
ほれ、名乗りんさいと促された強そうな人も自己紹介する。
「…カルバーン王国騎士団長、バルド・ロースタスだ」
道理だな。強そうではなく実際強いの間違いだった。この騎士団長、見るからに強者オーラが出ている。
しかし、どうするか…
「はい、よろしくお願いします。私は城ノ内と申します」
悩んで考えた末、名字だけを名乗ることにした。
異世界召喚物の作品か何かで、真名を縛られて奴隷のようにこき使われるケースもある。人の空想の類いは案外馬鹿にできないものだ。
どことも知らずに飛ばされ、未だ何も信用できる要素がない。用心に用心を重ねなければ。ここでそれが無礼だと言われた場合は、苗字だけを名乗ったのは地球での挨拶だとでも言って謝罪すればいい。
「…?…」
高校生たちには名字らしきものだけで名乗ったことに不思議に感じていたようだが、それについては何も言わず、一緒に来た大人に習い自分たちは呼び慣れている名前だけにしたようだ。
「勇人です」
「紅葉です」
「宗吾だ」
「とうこです」
「マリアです」
「うむ、よろしく頼むの」
キトロス・ヴァールアンと名乗った杖を持つ老人は三度うなずいて会話ができたことに満足げな表情。
ちなみに集団の並びは、先導兵士3人の後に騎士団長ベルド・ロースタス、そして高校生5人が続き、城ノ内道流の横に魔法師のキトロス・ヴァールアン、その2人の後尾に兵士6人。
客人あるいは重要人物を守れるよう護衛している形。
王城で働く人たちは、そんなもの珍しい集団の見知らぬ人たちがこの国の強者2人に護衛されているのを見て、侍従らはすれ違うたびに魔法師の老人と騎士団長に礼をした後、不思議そうな顔や疑念の眼差しを向けていた。公には知らされていないのだろう。
蛇足だが、この時のち見ていた人は2つの主張を掲げ、王城内で働く人たちの噂で一時は飛び交っていた。
結論から言えば、勇者一行には6人いたか5人いたかという争論だ。
当時は、当然として緘口令を敷かれてはいたが、人の口に戸は立てられず、人から人へと伝い兵士や魔法使いと侍従たちの耳に入る。6人いたと言う人たちは祭壇の間から見ていた兵士や魔法使いで、廊下ですれ違った侍従たちは5人だったと言っていた。どちらも間違っていないんだと真実のように言っていたのを聞く人は不思議に思う。
しかし、すぐに結果が出て、5人となっている。なぜなら、今いる勇者一行は5人しかいないからだ。当時確かにもう1人いて6人だったのに、いつの間にか居なくなっていて、その1人は最初からいなかったかのようになっていた。
いくら力説したとしても証拠がなければどうしょうもないという話だ。年々経っていくと人とは面白いもので一部の人を除く、王城にいる人たちはこの噂を忘れていった。
一行は言葉少なく無言の足取りで謁見の間に着く。
そして、中に入ると両側に多数の貴族が並び、段差がある1つ高い所の玉座にはやはりつい先ほど見かけた国王が鎮座して隣にいた側近が王の側についていた。
中央まで促されて歩くとキトロス・ヴァールアンと名乗った老人と騎士団長ベルド・ロースタスが臣下の礼。
つられて高校生らと青年は深く頭を下げる。日常では体験できないことに、思った以上に緊張する一同。
城ノ内道流は王という者を見て初めての緊張感を体感していた。
「大義である、面を上げよ」
「我は、カルバーン王国が国王、ドジル・四世・カルバーンである」
王の口上を賜って?高校生5人と城ノ内道流は先ほどと同じように名を述べる。
脳裏に不敬の言葉がよぎるが致し方なし。
それからというもの、ドジル王のそばにいる側近こと宰相により、ここに至るまでの説明がなされた。これが長々と話が続いたので割愛するが、要はこういうことらしい。
やはり、ここは地球とは異なる世界、俗に言う異世界であった。
神様が用意した召喚魔法陣は、召喚された者が異世界に適応できるよう様々な機能が組み込まれており、今も言語理解のスキルで聞き取れている。
ここ数年モンスターが活発化して大陸中に被害が拡大してきている。それを退治しつつ、活発化の原因たる魔王を倒してほしいとのこと。
神様からの神託を宿した、代々信仰捧げる聖皇国の大神官がこの事を告げた。国は違えど、この大神官から告げられた事は信用できるそうで、なんでも信託を代々伝える者には神様からの制約により一語一句正確に伝えなければならないのだそうだ。
複数の国から了承を得て今回の勇者召喚は行われ、カルバーン王国が代行した。
大陸各地を回りその道中にて実力を積み、各地5ヵ所にある魔王倒す上で必要不可欠な勇者一行にしか手にすることのできない"神器"を取りに行く必要もある。
そして、高校生5人と城ノ内道流にとって最も重要な『帰還できるかどうかについて』は、魔王を倒し聖皇国の神託を告げた大神官に会い、神様が帰還してくれるとのこと。
(これは全部じゃないにしても大半は本当のことを言ってるかもしれない)
城ノ内道流と高校生5人の思ってることは同じだった。突然の拉致、召喚された事に思うところはもちろんある。
しかし、他に行くあてもなく、地球に帰る明確な道標があるのだからとこの話を受け入れることにした。その時、謁見の間に安堵する雰囲気が漂う。
どうやら、受けてもらえるか半信半疑だったらしい。こちらの心証も良くなろうものだ。
張り詰めた空気が緩く歓迎ムードになっている中、勇者一行のステータスを『鑑定』することになった。
(…ついにこの時が来たか)
この後、城ノ内道流にとって良くないことが起きるのを予感せざるを得なかった。
よんでくださり、まことにありがとうございます。




